博浪沙異聞 (新潮文庫 か 31-1)

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  • 新潮社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101437118

感想・レビュー・書評

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  • フォロワーさんにお勧めされて読んだ本。
    6本の短編集になっていて、読み始めのハードルが低いのが魅力だった。
    中国の歴史に関しては門外漢で、高校時代の世界史と巨匠である横山光輝氏の漫画で触れた程度という浅さだったため、全体を俯瞰して読むのが難しく、名前にもなじみがなくて苦戦したものの、文体が自分好みでもあったため、読むのが嫌になる感覚はなかった。結果的に、ひととおりを読み終えた時点で、もう少し中国史を知りたいなと感じ、図書館で史記や孫子の入門書を探して借りてきた。これに目を通した後で、また読み返したら、また違う景色が見えるのではないかと考え、今から楽しみだ。
    そんな楽しみも考慮して、あえて評価は★は4つにしておいた。後日、レビューを書き換える可能性もある本は、これが初めてだと思う。

  • 春秋戦国時代から秦、そして漢まで、戦乱の歴史の悲しみ。多くの命が失われる中で、生き長らえた者たちも、次にどうなるか分からなかったことでしょう。表題作は、主人公・張良が劉邦と出会ったところがラストになっていますが、その後の彼の仕事の神っぷりを窺わせますね。

  • 再読。
    この直前に読んだ司馬遼太郎「項羽と劉邦」の流れでこれも再読。

    ファンタジー要素強めなので伝奇と歴史小説の中間小説。
    短編なので登場人物の名前覚えるのに大変。漢字も複雑。
    「項羽と劉邦」のおかげで「博浪沙異聞」「帝たらんと欲せしのみ」はすんなり入ってきた。
    「博浪沙異聞」の象棋の描写は戦略シミュレーションゲーム好きには実に興味深い。

    この時代の小説をもっと読んでみたい。
    三国志より複雑で魅力的な人物も多いのでしょう。
    それを巧みに描いている小説に出会いたいものです。

  • 短編六編を収録。ファンタジックな作品もありますが、しっかり歴史小説的な作品もあり、なかなか面白かったです。

  • 中国古代、春秋戦国から秦漢交代期を舞台にした歴史短編小説集。英雄の物語に幻想的要素が加味されて、物語に彩りを与えています。
    元々中国史は好きで、特に古代史が好きなのですが、中国歴史ものは久し振りに読みました。
    ここでは短編のためか、歴史的背景の説明が必要最低限に抑えられています。そのため土台となる部分がわかりにくいのではないかという気もしました。表題作にしろ、主人公の張良がこのあとどうなるかを知っているかどうかで面白みが変わるでしょう。
    僕自身、久し振りに触れた世界なので記憶の引き出しをひっくり返して歴史的背景を思い出しつつ読みましたが、ここで興味をもち調べる切っ掛けとするのも有りですね。こうして知のたて糸とよこ糸が織り上げられていくのも、読書の楽しみでしょう。
    お気に入りは「覇王の夢」。国の繁栄と滅亡の瞬間が広げられ、たたみ納められる。史書にない歴史が繰り広げられ、史書にある歴史へと繋がる。この大きな物語が短編にギュッと納められたことに、驚きと興奮がありました。

  •  古代中国史を題材とした歴史小説短編集。
     国家の歴史という大河にひととき咲き、消えていった泡沫のように、美しくも儚く、幻想と哀しみが滲む、良質な群像劇。
     暗殺者が迷い込んだ幽境の憩いと架空の戦線。
     名人ゆえに視え過ぎて失った占者の悲哀。
     天命に背き挑んだ王。
     自らが築いた法と采配に陥る宰相。
     大陸の覇者への軌跡を夢追い、故に総てを捨てた男。
     中でも、傾国の美姫を描いた「妖花秘聞」は、男性視点で収められやすい史書に切り捨てられる女性の真実を掬い上げ、まさに本書において紅一点の煌めきを放つ。

  • もうずいぶん昔に読んだ本ですが、未だに人に
    おすすめ本として紹介する事の多い作品です。

    古代中国を舞台とした短編集で、
    歴史(書)上の人物・逸話を題材にしていますが、
    独自の解釈をふんだんに盛り込んだ、良質のファンタジーです。
    有名ではなく、書店ではもう見かけませんが、
    自信をもってお勧めできる作品の一つです。

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    <お気に入りの話>

    ●表題作「博浪沙異聞」は、第15回歴史文学賞受賞作品。
    秦の始皇帝暗殺に失敗した張良と、彼を助けた赤松子。
    幽境で指す不思議な中国象棋に、張良は次第にのめりこんでいき・・。

    ●傾国の美女、晋の驪姫を題材にした「妖花秘聞」は、
    "勝者の語る歴史"の出来上がる様を描いた作品です。

    以前、「則天武后とその時代展」という展覧会に行きました。
    残虐性ばかりが強調されてきた則天武后の、政治・経済・文化面での
    業績を見直そう、というテーマを持っていました。
    その時にも感じた事ですが、
    善悪というのは、それを見る立場によって変わるもので、
    時代によって色々な解釈があるというのは、とても興味深いです。
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