斎藤家の核弾頭 (新潮文庫 し 38-2)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101484129

感想・レビュー・書評

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  • 篠田さんの本は面白い。いろいろと荒唐無稽な近未来SF。そして、家族愛をテーマにした一大喜劇である。
    すっきりしないところも確かにあるが、笑えて泣けて、十分楽しめた。

  • 前半は、斉藤家の嫁である美和子を取り巻く人間関係がゆっくりと描かれていて、ちょっと読むのが疲れちゃう事もありました。同居する夫の親や祖母、そして少しずつずれていく夫との関係や、子ども達に振り回され、しかもお腹にはもう一人授かっている美和子の状況の大変さが長々と続きます。

    転機はエリートの美和子の夫が退職させられ、先祖代々住んでいた土地をだまし討ちのような形で政府から追い出されて、新たな地に住まざるを得なくなったところから。急に面白くなってきます。
    斉藤家と言う家というものにこだわり続ける夫や舅たちの考えと、嫁の美和子の考え、美和子の息子で長男の敬の日記から垣間見える大人の世界の滑稽さ。
    そして末っ子として成長を止められて赤子のままの時間を過ごすはずだった小夜子の異変・・次から次へと異常な事態に巻き込まれていく様子がジェットコースター的に進んで行きます。

    ドロドロした話かと思えば、安楽死する祖父に最期のお別れを言う敬が、口をすべらせて「安心して死んでください」って言う場面や、夫よりも別の男(オッサン)との恋に走る美和子の姑の話などはシュールでちょっと笑えちゃう。

    政府の度重なる嫌がらせに、ついにぶち切れる美和子の夫、総一郎の変わり様も面白くて。加えて総一郎の愛人レサと美和子と総一郎の三角関係の様子もシリアスなはずなのにどこか滑稽で。笑)
     真面目で特A級市民として理知的だった彼が最後に至った決意、が、それよりも強かだった女性たちの生き方って言うのは篠田さんが得意な描き方ですね。
    ほんとに女性の強かさ、生命力の強さを感じずにはいられません。笑)
    その前では男はほんとに小さな存在で・・・。苦笑)

    ラストは・・ へぇ・・そうなるのかぁと思いますが、SFなのでこれはこれで良いのかなと。

    読ませるのが上手い作家だなと思います。次々ページをめくりたくなる、そんな文章力がありますね。

    なかなか奇想天外でした。私としては満足かな・・。

  • 篠田節子は本当に頭いいんだなーと思う

  • 題名こそ過激ですが、中身はとある家族の生活が中心。
    現実社会と良く似たもうひとつの世界で繰り広げられる、滑稽でちょっぴり悲しいお話。

  • エリートだった斎藤総一郎が一転政府から追われる身に。斎藤家の政府に立ち向かうサバイバルをコミカルに描く。でもコミカルだけで終わらないのが篠田さん。最後は泣けるから凄い。

著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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