坂東蛍子、日常に飽き飽き (新潮文庫nex)

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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101800066

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  • 『この女子高生、名を坂東蛍子という。容姿端麗にして才貌両全ながら、本来自動開閉のタクシーのドアを躊躇無く開いてしまう、この物語の主人公だ。』

    『出来ることなら積み重ねてきた全ての矜持を捨て去って、この密室の只中で大声で歌でも歌ってしまいたい気分だったが、生来の紳士の性分と近代合理の精神がローレヌにそれを許さなかった。「カラオケでやれ」と神が囁くのだ。』

    『まだまだ子供だな、とほくそ笑んだ。メロン味を選択するのは気を衒って他と差別化したい心の表れなのよ。私も昔選んでた。』

    『今度はレモン味である。まだまだ子供だな、と蛍子は思った。レモン味を選択するのは安易な刺激を求めている証拠よ。私も昔選んでた。』

    「好きな人とか好きなものってどんどん増えてくじゃない?だから、増えれば増えるほど、どれがどのくらい好きだったかはっきり見えなくなってくるの。ぼやけてきちゃうのよ。ー 失って初めて大切だったと気付くってよく言うでしょう? それってつまり、そういうことだと思うの。私達は好きなものを持ち過ぎるから、自分で好きなものを埋もれさせちゃうのよ」

    「意外に自分のことって分からないものなのよね。いや、ちょっと違うな。自分のことは自分だけが分かってるけど、自分のことを自分だけが見えていないの。私の目は私の外側しか見れないもん」

    『今は冴えない顔をして、音の外れた口笛を近隣住民に振る舞っているが、二十代の後半にはひょんなことからイタリア南部のカラブリア州で唯一の東洋人として活動するマフィアの構成員となり、地元では"ノンクリ"と呼ばれ恐れられる男となる。それ以外にはさして特筆することの無い、普通の高校2年生だ。』

    『"四の五の言ってられないなう"』

    『ただでさえ目立つ格好していた三木杉は迂闊に接近することすら出来なかったのである。そんな彼に、だったらコートを脱げば良いと唱える者がいるかもしれない。ハットを捨てろと提案する者もいるだろう。しかし三木杉がその意見に耳を貸すことは絶対にない。何故なら彼はハードボイルドだからだ。』

    『三木杉は先程定めた目的も忘れ、すぐさま少女の元へと走り出した。何故なら彼はハードボイルドだからだ。』

    「自由の女神という像は足元をどこよりも頑強に固定されている。自由とは束縛の上にあるものなのだ。俺が一歩も動かないのは自由に生きている証なのだ」

    『桐ヶ谷茉莉花は勇気という単語が嫌いではなかった。希望という単語も好きだった。しかしそれ以上に睡眠という単語を愛していた。』

    『相手との距離を決めるのはいつだって相手じゃない。自分なんだ。』

    『思いやりも、愛情も、未来のためでなく、今目の前にいる人のために存在するものなんだ。』

    『永遠の別れなんて無いのだ。我々はいつだってまた巡り会える。互いに笑い合うことさえ出来れば。そしてそれが出来るから、私達は友人になったのだ。』

    「ああ、見せたいものって、松坂のことだったのか」
    「松坂…?」
    「立派な猫だからな。立派と言えば、牛なら松坂だし、猫も松坂かなって」

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