ジキルとハイド (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102003039

作品紹介・あらすじ

ロンドンの高名な紳士、ジキル博士の家にある時からハイドという男が出入りしていた。彼は肌の青白い小男で不愉快な笑みをたたえ、人にかつてない嫌悪、さらには恐怖を抱かせるうえ、ついに殺人事件まで起こしてしまう。しかし、実はジキルが薬物によって邪悪なハイドへと姿を変えていたのだった……。人間の心に潜む善と悪の葛藤を描き、二重人格の代名詞としても名高い怪奇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 「ジキル博士とハイド士」は、読んだ記憶があるけど、たぶん、児童用リライトだったのですね。
    さすがに、目新しさは無いのです。薬で善良なジキル博士が邪悪なハイド士に変身する怪奇小説のイメージが強かったですが、もう少し深いところ、人間の二面性に対する苦悩を追ったもの。
    怪事件が立て続き、周囲はハイド士を怪しむ。薬の効き目も思うようになくなる。
    最後にジキル博士の遺書による告白。善良なジキル博士の中に潜んでいた邪悪な存在。その奔放さに溺れていく。多重人格でなくても、自分の二面性を認識することもある。
    もはや「ジキルとハイド」日本語としても、多重人格障害の代名詞。熟語的風格さえあるのです。


  • ジキル博士の遺言書には、「ヘンリー・ジキル死亡の際には、財産はすべて友人であり恩人であるエドワード・ハイドに送られる」と書かれていた。

    ジキル博士は、皆に好かれる親しみやすさと才能を持った紳士である。
    彼の小切手を預かったアスタンはその内容に不信感を抱いた。

    そこに書かれたハイドと言う名の男は、見るものすべてに不快感を与える憎悪に満ちた顔をしている。
    背が低く軽薄そうな笑み浮かべているハイドとジキルが友人だなんて考えられない。
    不審に思ったアスタンは、ジキルとハイドの関係性を調べることにした。

    アスタンは街で見かけたハイドの後を尾けるうちに、ハイドの異常な行動を目にするようになる。
    またハイドは人を殺した殺人者であることが判明し、事件は大きくなる。

    ————-

    「ジキル博士と殺人者ハイドの接点はなんだろう?」と考えているうちに、どんどんとストーリーは進み、ジキル博士のおかしな発言や人前を避けるような行動に「おや?」と思うことが増えた。

    すべての謎はジキル博士の最後の独白で解ける。
    善の中に隠れた悪を具現化してできた存在のハイドに自分を乗っ取られるなんて、ジキル博士は考えてもみなかっただろう。

    罪を犯すと、必ず自分に返ってくる。
    どんな善人であっても、心の見えないところでは人に言えない衝動を抱えて生きているのかもしれない。
    人生に役立つ深い教訓が得られるのも、ジキルとハイドの面白さだと思った。

  • 善悪を持ち合わせていることを尊いと思う作品。人相も変わるので、ファンタジー要素もあって面白かった。読んでよかった。

  • 知ってはいたけれど、ちゃんと読んだことがなかった本を
    今こそ読んでみよう....を、ここ最近のマイブームにしています。

    "二重人格"の代名詞ともいわれている「ジキルとハイド」もその一つで
    数か月前に、そういう事を連想した小説を読んだことが
    手にするきっかけになりました。

    "学校の授業にあったなぁ..."と
    娘が言うので、二つの心を持った人間の真意を解いていくような
    道徳的なお話なのかしら...と思っていましたが、やや、、これは.....

    とにかくミステリー感たっぷりでした。謎に満ちたトリック?に
    気持ちはどんどん引き込まれ、「ジキルとハイド」はもしかして
    ミステリの元祖的なお話なんじゃないかしらと思ったくらいに完璧。

    読みながら、そして読み終えて感じたことすべて
    解説に載せられていたことと同じだったので、真似ることになってしまうのですが
    ミステリの中には摩訶不思議なファンタジックな要素も散りばめられ
    また、ジキルの周囲の人たちの信じて疑わない真摯な心にも温かさが感じられて
    とても奥深いです。

    ジキルはどうしてハイドを生んでしまったのか...
    ジキルはジキルのままでいられたかもしれないのに...

    読み終えて感じた道徳的想いは
    人間の誰しもが持つ"善悪"よりも"欲"の恐ろしさの方でした。

  • 二重人格者の物語であるとは知っていたものの、詳細はまったく知りませんでした。名作と言われている文学作品なので読んでみようと手にとった本。

    二重人格者が主人公かと思いきや、その友人が主人公。なので冒頭は、正義漢とした弁護士とその親戚が、たまたま見かけた悪人を異様に罵っている場面から始まり、何の話やねん……と本を閉じかけたが、最後まで読んで良かった!
    予想の斜め上をいく展開でおもしろかったです。
    二重人格というより見た目まで変身しちゃうファンタジー感とか、殺人事件の真相に迫ろうとするも謎の手紙を渡されたりするミステリー感とか、文学作品というわりに堅苦しさゼロで一気読み。
    ジキルが自身の中に潜む裏の顔に悩む様子や、ハイドにのっとられていく心情の変化は、読んでいてちょっと泣きそうになりました。それを友人に打ち明ける友情もみどころあり。
    訳者あとがきまでおもしろかったです。

  • 有名なお話
    読む前からどういう話か知っているから、驚きはなかったけど、知らずに読んだらわからないだろうなと思う。
    ミステリーとして、面白かった

    最後のジキル博士の手記は、哲学的で、うまく咀嚼できてないので、読み返しするかも

  • 夏休みの図書館からの紹介本、「古典作品」の一つとして読みました。
    どうしても、鹿賀丈史の舞台の筋書きの印象が強く、舞台の展開と原作との差に違和感を覚える部分もありましたが、ひといきに読み切ることができる作品でした。
    文体は少し「古さ」や「固さ」を感じさせるものでしたが、その独特の雰囲気が作品の持つ「善と悪の二面性」というテーマによく合っていたと思います。

    自身の欲求とどのように付き合うか、ということだけでなく、信仰や人生観、人生哲学について考えるきっかけにもなる作品ではないでしょうか。

  • 心情や情景の描写が凝っててすごい!
    これは映画や舞台じゃなくて、小説で表現されるべきだと感じた。

    「畏怖」の対象となるハイドの描写は全て抽象的。
    これは読者によって「畏怖」を感じるものが多少違うからなのかなと思った。

    他の描写は精細で濃密だから、しっかりと情景が思い浮かぶ。
    読者の想像力で完成される作品。

    人格が変わる瞬間、
    恐怖や苦痛と同時に、甘美だと感じた心理描写が好きだった。

    私も誘惑に負けてしまう気がする。
    この着想は一度読んだら忘れられない。

  • ページ数はそこまで多くなく2、3時間でサラッと読めるので、短時間で名作を読んで見たい方にはおすすめです。

    タイトルがとても有名な作品なので読みたいと思っていました。

    ストーリーを通しては二重人格に焦点を当てており、人間に潜む裏表の描写が興味深いです。
    ただし個人的にはそれ以上に、主人公(?)のアタスンと表の顔のジキル博士という老紳士2人の上品な友情のストーリーとして読んでいて心に響きました。

  • 読む前から「二重人格」を軸とした物語である事は知っていたのだが、ここまで濃密で巧緻な作品だとは思わなかった。まず喫驚したのが、一つの肉体に宿る二つの異なる人格は、同じ形の肉体を共有しているわけではないという点だ。ジキルの時は大柄で教養のある知識人の見た目になり、ハイドの時は小柄で陰湿な、一度見ると忘れられない程の不快感を齎す見た目になる。人格の変化と同時に肉体の変化も起こすという非現実的な事象が起こっているのだ。作中では薬品の影響で肉体に変化を及ばすとしているが、読んでいる我々には作者が意図的に二つの人格を徹底的に分断し、懸隔を作ることでお互いの共通性をとことん擯斥している様に写る。しかしこれは二つの人格がまるで別次元のものである事を主張するのではなく、あくまで元は同じ次元の一つの魂から生まれでたものであるということ、そしてその一つの魂に本来は善と悪が渾然一体となって存在している事を強調しているのだろう。
    前述したことを念頭に置くと、私はこの作品のジキル博士を「二重人格」と呼ぶことに懐疑的な立場を取るに至った。ジキル博士は優れた医者であり、善良な人であると同時に、無性に快楽を求め、抑制が利かない汚辱まみれの快楽主義者である。この様な二面性はジキル博士に限ったことではない。我々人間が通常心に抱えているものである。誰でも傑出した一面に加え、軽蔑されるべき一面やコンプレックス、あるいは性的な倒錯を包み隠して生活している。大切なのは善良でありたいと美辞麗句を並べるのでなしに、己の善と悪の両方に向き合うことができるかどうかということだ。ジキル博士にはそれができなかった故に、本来共生するべき善と悪を両断した。いわば己の向き合わずに、逃げ出した弱さが招いた結末である。善良になりたいと思う事は間違いではないかもしれないが、畢竟、人間たるもの汚辱を持ち合わせてこその生物である。人間はその辛い現実に向き合わずして「真っ当に」暮らせないという逆説を受け入れなければならないのではないか。私はこの作品からその事を学んだ。それ故にこのジキル博士を、新たな人格を生み出した「二重人格」者とは到底思えなく、一つの人格を無理やり引き裂いた「半分人格」者だと私は考える。
    ドラゴンボールの魔人ブウが生み出した悪い自分や、化物語の戦場ヶ原がおもし蟹によって切り離させた本来背負うべき母親への思い。これに通じたものがジキルとハイドにはあると私は思う。

    ハイドの風貌の描写は割と抽象的な表現が多く、恐らく読んでいる人間千差万別になるであろうと思う。これを精細さを欠いたと捉えることもできるかもしれないが、己の想像力によって畏怖の念は如何様にもなり得るともとれる。これは映画や舞台とは違う、共有を排した排他的な小説という娯楽の醍醐味でもあるのではないか。『フランケンシュタイン』でも同じ様な事を感じた。小説においての「怖さ」の描写の仕方が少しわかった気がする。

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