白鯨 (下) (新潮文庫 (メ-2-2))

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (569ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102032022

感想・レビュー・書評

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  • 鯨に関する蘊蓄がもうイシュメイルの語りを飛び越して作者本人が語ってる感じですが、とても面白いです。鯨に病んでるような感じがジワジワきます。本の終わり頃に急にエイハブの復讐劇になり、結構わかりやすくマクベス的フラグを立てたり、リア王的フラグを立てたり、むかしのパニック映画みたいな壮絶な感じになるのですが、そこだけちょっと読んでる本が違う感じですが二度も三度も美味しい感じで面白かったです。エッセイ好きにオススメ。

  • アメリカ文学の古典の一つと言われている「白鯨」を読んだ。分厚い文庫本上下2冊で、文章も古い訳で現代文とは言いにくくちょっと読みづらい。いつも通り通勤時に読んで1冊約3週間、上下で一ヶ月半ぐらいを要した。

    ストーリーは、伝説の白鯨(巨大な白いマッコウクジラ)を復讐に憑かれた捕鯨船の船長エイハブが探し求めて仕留めようと、アメリカ東海岸から大西洋を南下、アフリカ喜望峰を回ってインド洋に入り、東南アジアから太平洋、日本近く(たぶん小笠原近海)まで至り、ついに白鯨と戦う話である。

    物語自体はなかなか面白く、良くできている。途中、鯨に関する様々な解説が長々とあったり、当時の捕鯨の様子も細かく解説されている。この辺りに興味のない方には、文章の長さはちょっと辛いかも。私は、両方とも興味を持って読めたので、遅々として進まないストーリー展開も耐えてなんとか最後まで読めた。

    個人的に楽しかったのは、途中数多く登場する島々の名前が、趣味(アマチュア無線)の方で結構馴染み深いものばかりであった点である。結構珍しいところが多い。

    あと、この話に登場するコーヒー好きの一等航海士の名前がスターバックと言い、あの有名コーヒーチェーンのスターバックスの名前がここから取られたものであるらしいことを初めて知った。

    最後まで読んで、ふと、中学生のころ、学校の映画鑑賞会か何かで「白鯨」の映画を見たことがあるような気がしてきた。

    2007年3月24日 読了。

  • 世界文学の中でも「難読」で知られる一冊だと思う。難読という評価には主に二つの理由があり、

    ・純粋にページ数が莫大
    ・ストーリーを追うタイプの小説とは異なる

    特に後者の影響が大きかろう。そもそもストーリーだけに絞って書かれたとすれば上下巻になる必要もなく、児童絵本のページ数があれば十分。

    では何が書き加えられるかと云えば、鯨に関する生物学的考察、古典文書からの引用、近代芸術における鯨、考古学における鯨、宗教史における鯨、等々である。これら記述の ”熱量” の異常さ、こだわりの "執拗さ" を感知せずに読み終えた読者はいないと思われる。

    読んでいてもっとも中てられたのはこの点で、読む時間経過とともに「違和感」→「忌避感」→「畏怖の念」→「畏敬の念」という移り変わり具合。何やら面倒なことに巻き込まれたような地点から始まって、最後はもう好きなだけやってくれという感想に至る。

    そもそもの小説の構成として(新潮文庫のページ数でいえば)全884ページであるこの小説、肝心の白鯨との対決の場面は836ページ目のことである。その上、前述のとおり836ページの大半は、鯨に対する学術的考察がコラージュ状に、異様な執着心で書き連ねられているのであるから、そうしてやろうと発想した作者のねらいが異様だ。

    アメリカで発表当時なんら話題にならず、作者の死後に再評価をされたという歴史が語るように、ある評価軸からすれば本作は不器用な(ぶざまな?)作品。世界文学の古典として、ここまで「いびつ」な作品は他に思い当たるものもない。

  • 文章全体が、悪く言えば「遠回しで難しい比喩表現」、良く言えば「知に富んだ詩的表現」の洪水。この読みにくさが魅力。多分。私は好き。
    しかし、いかに自分が知識不足かを思い知らされる内容だった。
    白鯨を100%楽しむためにはある程度の宗教学(特にキリスト教・拝火教)、鯨類学、帆船の知識…等が必要なのかな。今後の読書のためにも勉強しようと思う。
    散々結末についてネタバレされていても(古典なので仕方ない)、読み通して迎える転がり落ちるようなラストは胸を打つ。百聞は一見にしかず。

  • ☆☆☆2019年10月☆☆☆

    長い長い物語を終えた。
    途中から何が何だかわからなかった。
    鯨から油を搾り取るために、なんと苦しい旅に出ることか!まったく気が知れない。
    一等航海士のスターバックは、エイハブの個人的恨みを晴らすために白鯨を追う事には反対だった。だからこそその死は悼ましい。

  • 幾重にも重なる捕鯨の記述。重厚な叙情。好奇心と勢いに満ちた上巻に対して破滅の予感と悲壮な下巻。やっと鯨を取る描写が出てくる。当時はこういう取り方をしてたのね。
    その知識の厚みと説明は素晴らしいんだけど、やはりモッタリする。登場人物の生き生きとした会話ややり取りがないと。クィークェグも冒頭では魅力的に書かれていたのに、全く出てこなくて心の内も分からなくなってしまった。しかも索やなどは図解がないと詳細に説明されてもよく分からない。イメージを広げるのには役立ちましたが。

    最後の最後まで読まないと白鯨は出てこなかった。
    破滅に向かって進む船。あらゆる凶兆に逆らう狂気の船長。スタブが頻繁に出てきて、あの調子が印象に残った。

  • 一言で言うと、長かった。とにかく鯨に関するあれやこれやの知識を詰めまくった長大すぎる小説なので、多くの人が挫折するのも致し方なし、といった感じ。
    鯨の生態、性質、解剖学を微に入り細に入り書き連ねるほか 旧約聖書やら、ヨブ記からの知識まで入れてくるので、本筋(ストーリー)が遅々として進まない。娯楽として小説を好むひとにはかなり退屈なのではないか?
    しかしこの小説の醍醐味は、その『鯨知識の深さ』にある。ただのストーリーだけを逐う小説だったら、おそらく後世ここまで評価されなかったろう。

    鯨に関する知識教養はさることながら、作者の実地体験からくる記述もかなりおもしろかった。例えば、別の船の船乗り同士が打ち解けて交歓をかわす『ガム』という宴会?。粗野なヤロウどもが、お酒を飲んで騒ぐ場面は、とてもワクワクした。
    船乗りあるあるみたいなネタも面白い。マレー人の海賊?とっ遭遇したり、大王イカを発見したり、何度かマッコウクジラを仕留めたりもした。仕留めた後の処置(どのように鯨油を搾取するのか等)もかなり詳細に描かれている。ちょっと残酷、というかグロ、というか
    昔の鯨捕りは大変だったんだね。単純に、勉強になった

    物語根底には、常に気怠い陰鬱なムードが漂っており、海が人をゆっくりと狂わせる様は、その後の凄惨な結末へとつながってゆく。真綿で首を絞められるような感覚だ。
    ネタバレになるのでここでは書かないが、主人公イシュメールの体験した『白鯨との戦い』。
    終盤の、息を呑む怒涛の展開は読む人をあっといわせ、手に汗を握らせ、その結末にだれもが放心してしまうのではないだろうか。

    中盤が冗長だからといって、心折れて本を閉じてしまうなかれ。
    読後はなんとも言えない複雑な心境になること請け合いである、


    たにみに、だけど、某コーヒーチェーン店の名前は、
    一等航海士のスターバック君からとってるんですね
    へえ~!!って思ったw
    なお、物語に登場するスターバック君は、作中一口もコーヒーを飲まない。

  • やっと、やっと読み終えたー!!!モビー・ディックに出会う為の本当に長い長い道程だった。モビー・ディックとの格闘まではほとんど面白いところがなくて流し読むようにして少しずつ進んできた。最後の3章は圧巻の出来。情景が目に浮かび、心が高揚した。白鯨モビー・ディックは強く、そして気高かった。白鯨に立ち向かった男たちも熱かった。この本を執筆する為にメルヴィルは捕鯨船に乗り込んだという。作者の鯨、そして捕鯨への思いが余すことなく詰め込まれた一大叙事詩。ただもう一度読みたいとは思えない。2012/146

  • 鯨に勝てるか人類。大きいのは態度だけか。

  • アメリカ東海岸の捕鯨基地に現われた風来坊イシュメール――陸の生活に倦み果て、浪漫的なあこがれを抱いて乗り組んだのが捕鯨船ピークォド号。出帆後数日してやっと姿をみせた船長エイハブは、自分の片脚をもぎとった神出鬼没の妖怪モービィ・ディックを倒すことにのみ、異常な執念を燃やしていた。堅忍不抜の決意を秘めたエイハブの命令一下、狂気の復讐は開始された……。獰猛で狡知に長けた白鯨を追って、風雨、激浪の荒れ狂う海をピークォド号は進んだ。ホーン岬、インド洋、日本沖を経た長い航海の後、ついにエイハブは、太平洋の赤道付近で目ざす仇敵をみつけた。熱火の呪詛とともに、渾身の憎悪をこめた銛は飛んだ……。作者の実体験と文献の知識を総動員して、鯨の生態と捕鯨の実態をないまぜながら、エイハブの運命的悲劇を描いた一大叙事詩。

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著者プロフィール

1819年-1891年。ニューヨークに生まれる。13歳の時に父親を亡くして学校を辞め、様々な職を経験。22歳の時に捕鯨船に乗り、4年ほど海を放浪。その間、マルケサス諸島でタイピー族に捕らわれるなど、その後の作品に影響を及ぼす体験をする。27歳で処女作『タイピー』を発表。以降、精力的に作品を発表するものの、生存中には評価を受けず、ニューヨークの税関で職を得ていた。享年72歳。生誕100年を期して再評価されるようになり、遺作『ビリー・バッド』を含む『メルヴィル著作集全16巻』が刊行され、アメリカ文学の巨匠として知られる存在となった。

「2012年 『タイピー 南海の愛すべき食人族たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ハーマン・メルヴィルの作品

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