デイジー・ミラー (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (132ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102041017

感想・レビュー・書評

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  •  現代の日本人の感覚では古臭いと感じるような淑女の振る舞いができない(あえてしない)デイジー・ミラーに心惹かれる主人公。その自由奔放さは無邪気さゆえのものと必死に擁護しようとするが、彼自身も段々愛想をつかしてしまう様子がリアルで良い。無邪気で悪意がなければ少しぐらい道徳的に外れていても良い訳ではなく、周りの空気を読み忠告を聞き入れる素直さも大事。若い・可愛いだけでは済まされないこともあると思うが、若い時は注意されてもうるさがるだけで理解できないもの。そんな女性の末路が描かれている。

  • ヘンリー・ジェイムズの作品は、この先何かが起こりそうな、得体の知れない不安を煽る独特の世界観があって、それが何とも面白いのだけど…この作品にはそれがなかった。翻訳が違えばまた違った印象を持つのかもしれない。

  • ■「若くて天真爛漫な女の子が主人公の男をとりこにするのだが突然その子が事故かなんかで死んじゃう系」のお話。
    ■舞台は19世紀後半のスイスの保養地ヴヴェイおよびローマ。アメリカを遠く離れヨーロッパを遊弋する有閑貴族ウィンターボーンが彼の地で、”無邪気で蓮っ葉”なアメリカ人女性デイジー・ミラーとめぐり逢い、恋に落ち、そして永遠の別れを経験する。
    ■当時の、まだ世界中からの観光客でごったがえしていない国際観光地をゆったりと旅するような、ノスタルジックかつ新鮮な気分にさせてくれるholiday novel。
    ■デイジーは”いかにもアメリカ人らしい奔放な娘でその言動には世人の眉を曇らせるものがある”という設定なのだが、現代人からしたらデイジーを非難するような人たちの価値観の方が不可解、むしろ滑稽でさえある。
    ■最後、デイジーのとってつけたような死はあまりにも唐突。夜のローマを一回歩いただけで、すぐにマラリアを発症して高熱出して死ぬか?

  • 「あたし、男の方とずいぶんおつきあいしていますのよ」(p24)
    そんな風に自分を語る、若くて美しい女性デイジー。

    この美しいアメリカのお転婆娘に、長年アメリカから離れていたウィンターボーンは、ヴヴェーで出会い、魅せられてしまいます。

    その後ローマでウィンターボーンはデイジーに再開しますが、デイジーはイタリア人ジョヴァネリと仲良くしていました。それでもウィンターボーンはデイジーに惹かれ続けますが、最終的に、デイジーのことを“もはや紳士たる者が、何も強いて尊敬するにはあたらない娘なのだ。(p117)”と考えるようになります。

    物語の最後、デイジーは悪性の熱病にやられ死んでしまいますが、死ぬ前にデイジーは「あたしは美男子のイタリア人と婚約などけっしてしなかった」とウィンターボーンへの言づてを頼んでいました。

    彼女はただ野育ちの無邪気な娘だったのか、ふしだらな恐ろしい娘なのか。ウィンターボーンの最終的な彼女への評価は正しいのか。難しいところです。

  • ヨーロッパ旅行にきた無邪気なアメリカ人の娘デイジー・ミラーと出会ったウィンターボーン。ウィンターボーンは同じくアメリカ人だったが、ヨーロッパ暮らしが長くヨーロッパのしきたりに順応していた。彼はデイジーに惹かれるがその行動は理解し難いものだった。

    デイジーの心理は一切描かれず、ウィンターボーンから見た謎めいた娘という印象だった。最終的にウィンターボーンは彼女との付き合いをあきらめ、彼女は疫病で亡くなった。

  • 解説によると作者が書きたかったのはアメリカとヨーロッパの文化の違いの対比らしいのだが、それはあまり分からなかった。むしろ、全体的に価値観が古く(男性と二人でデートしただけで憤慨されるような時代の話)私にとっては現代と過去の対比に感じられた。デイジーがあれほど怒られているのは私からすると不可解だった。女性は慎み深くあれ、というのは男性のエゴだと思う。

  • いわゆる国際テーマを扱った心理主義リアリズム小説であり、ジェイムズの中でももっともポピュラーな作品の一つ。俺もこれすごく好き。単純に主人公に共感してしまう。完全に男性中心主義的視点から女性を眺めているので、女性がこの小説を読んだらどう感じるのか興味がある。

  • 誰かの理想を生きられやしない

  • 4

  • 原作理解の確認の意味で読んでみた。

    私が原作から受けた印象とは違う会話体だけど、本書が書かれた時代背景を思えばこういう訳になるんだろうな。訳を現代の読者よりにするか、書かれた時代を尊重するかは難しいところでしょうね。

    翻訳のシフトについて考えさせてくれました。

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著者プロフィール

Henry James.1843-1916
19世紀後半~20世紀の英米文学を代表する小説家。
主要作品に『デイジー・ミラー』、『ある婦人の肖像』、
『ねじの回転』、『鳩の翼』等。
映画化作品が多いが、難解なテクストで知られる。

「2016年 『ヨーロッパ人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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