林檎の樹 (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (151ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102088036

作品紹介・あらすじ

徒歩旅行の途中、果樹園のある農場に宿を求めたロンドンの学生アシャースト。彼はそこに暮らす可憐な少女、ミーガンに心を奪われる。月の夜、白い花を咲かせる林檎の樹の下でお互いの愛を確かめ合った二人は、結婚の約束をする。だが旅立ちの準備で町へ出たアシ ャーストを待っていた運命は─。自然の美と神秘、恋の陶酔と歓び、そして青春の残酷さが流麗な文章で綴られる永遠のラブストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • ある男性の回想作品。

    物語の内容としては正直最低な男性の行動を見せつけられるだけの自分よがりな恋愛小説。
    なのだけれども、その恋愛を美化しているのが象徴的な場面場面で登場する林檎の樹。描かれている情景の美しさがすべてを美しくみせている。

  • 【あらすじ】
    ロンドンの大学を卒業し、徒歩旅行中のアシャーストは、農園で出会った17歳のミーガンと出会い、恋に落ちる。
    情熱的に結婚を誓うが、その準備の間に出会った友人の妹、ステラに惹かれて恋に落ちる。
    健気に慕ってくれているミーガンを裏切る事で、アシャーストは自身の不誠実に苦しみ、後ろ髪を引かれながらも自分を言い聞かせて忘れる事になる。
    やがて、銀婚式の旅行中にミーガンが悲しみの中で命を落とすことを知る。
    【感想】
    自然の姿を文字を使って美しくみせるのが凄く上手な作品だった。作者は勿論、翻訳家の人の功績も多分にあると思うけど。
    作中に、知らない花や木、鳥といったものが多くあり、俺自身がその描写をしっかりと捉えきれていないのは残念だったから、木の植物図鑑もいずれは買って目を通しておきたいと思う。
    アシャーストは詩人気質ではあるが、農園にいる時点では人間の移ろいやすく、弱い部分を理解しておらず、ミーガンを裏切る事で 、きっとそれを知ることができたと思う。
    だけれど、その代償は本人が考えていたものよりもはるかに大きなものだった。

    何よりも胸を打ったシーンは、ミーガンを馬車から見つけた所で、驚き、焦りと後悔、総じて生じる苦しみは凄まじい。特にミーガンの田舎者の特徴でもあった 帽子の描写が、ミーガンである事をより強烈に示しており、都会での不安と、その不安の中でアシャーストを探している健気さは、感想を書いている今でも、とても悲しい。
    何が正しくて、何が悪い、といった善悪の話ではなく、人間の弱さと儚さを若い時代の短い物語にまとめきり、そこから老後の物語で逃れようのない悲劇で終えるのは、とても上手だな、と感心させられた。
    アシャーストは、妻のステラとはうまくいっているところからも、一時の逃げや単なる浮気性という訳でもない、愛のある人間であるように思う。
    ただ、恋に盲目となり、愛を不滅だと過信したがために、今回の悲劇が起こったように思う。
    短いけれど、自然の美しさと愛の恐ろしさを描いたいい作品だった。

  • 望まれない恋愛をしている女性に読んで欲しい。これを読むと男が自分を決して選ばないとわかる。

    アシャーストは、現実を見て怖気付いた。
    ミーガンは健気だったが自分の思いを貫いた。
    アシャーストは望んでも辿りつかない理想を追い求める。弱くて堅実さを求める男の心理がよく表れている。

  • 今もイギリスに根強く残る階級意識のもと、上流階級出身の青年の身勝手によって引き起こされる悲恋のストーリー。

    今はつかの間の夢と消え去った青春時代の、純で甘美な記憶を思い出さずにはいられなくなる名作。

  • 表紙に惹かれて購入。
    ものすごく後味の悪い結末。
    非日常な田舎でアシャーストはただ恋をした<つもり>になっていただけで、現実の都会に戻って来ると同時に夢からさめてミーガンを捨てた最低な男だったという話。
    自分で言い訳を作って、自分に言い聞かせて納得して、ミーガンの気持ちは?結局ミーガンのことも下に見てたし、自分に酔ってただけの事で、あらすじから想像するような素敵な切ないラブストーリーではなかった。この物語の唯一良かった点は、風景描写が凄くキレイなことだけ。

  • 心情と風景の描写がとても丁寧であっという間に読め、一つの映画を見終えたような気分になった

  • 一言に言えば若気の至りの恋の話なんだけど、きっと多くの人が思い当たるところがあるんじゃないだろうか。
    状況は違うとしても、例えばよく知りもしない相手を盲目的に好きになったり、それから突然現実に立ち返って冷めてしまったり、別の人を好きになってしまったりというのは、空想だけのドラマじゃなく、普通に起こり得ることだ。
    それだけに、繊細に描かれた青年の心模様が身につまされる。忘れ去られた遠い過去の思い出に、自分の知り得ぬところで、誰しもこんな罪を犯しているのかもしれない。

  • 田舎の農場と都会ロンドンの対比が印象的。アシャーストが現実に目覚めていく様子がリアルに描写されていた。どうしようもない、といえばどうしようもないことだか切ない話だった。

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