人間の絆 4 (新潮文庫 モ 5-4)

  • 新潮社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102130049

感想・レビュー・書評

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  • 大阪の古本屋でⅠ~Ⅳまでまとめて購入。

    これは、モームにとって、人を楽しませるために書いたものではなく、たまらない固執観念から自分自身を解放させるために書いたそう。
    しこり落としの書、カタルシスの書。

    人生、紆余曲折で、恋に溺れる時期、金がなくなる時期、人との不思議な出会いの時期、人間同士のぶつかり空いやすい時期、いろんなことろで曲がりくねった道を歩んでるフィリップ。

    人生に意味などは何もないのだ。
    宇宙を突進している一恒星の、そのまた一衛星にすぎないこの地球上に、この遊星の歴史の一部である、ある種諸条件が揃った時、それによって、生物はただ偶然に生まれたのであり、したがって、
    他のある種条件がそろえば、それは永久に消えてしまうことだろう。

    彼の存在の無意味さは、むしろ力と変わり、瞬時にして彼は、今まで彼をあんなにも苦しめてきた冷酷な運命と立派に対等の立場に立ったような気がした。

  • ★2.5かな。何かこの手の昔の作品を読むのは少々骨が折れるようになってきた、当方の衰えかな?ともかく作品自体に現代性が欠けているのかと思う、普遍性はあるんだけど。この点が古典としては今一つと感じさせる原因か。
    ところで翻訳というのは誰かが言ってたが賞味期限が確かに存在する、この点で本訳は最早完全にダメなのかも。いわゆる「新訳」には賛否両論あるが、その意図は十二分に理解できる。訳は書換え可能であることを考えると、実は外国文学には無限の可能性が広がっているのかもしれんとふと考えた次第。

  • 2013年5月23日(木)、読了。

  • 両親の死から始まったフィリップの人生。芸術家の卵、医者、デザイナーなどの職業を遍歴する中、何人もの女性が彼の前を通り過ぎていった。迷いさまよった果てに、彼がたどり着いた場所は。

    少年期から青年期にかけての感性が豊かに表現されており、フィリップの人生に深く共感できました。全編にかけてちりばめられた著者独自の美意識や人間観も、興味深い。

    特にミルドレッドのくだりは面白かった。こんな女に心酔するなど冷静に考えればありえないんですが、その意気地のなさが、フィリップという劣等心の固まりのような男に人間性を与えてくれる。
    近代でも現代でも、男の情けなさは変わらないのですね。

    物語の結末は平凡たるものですが、そこから彼の人生はまだ続いていく。どこまでも彼は悩みつづけるのでしょう。

  • ハッピーエンド。
    それは、主人公の長く辛かった紆余曲折をきれいに上書きしてしまった。めでたしめでたし。

  • サラもいいけど、私はノラ(三巻の)が好きだったなー。それはともかく、落ち着いたもんだのうフィリップ君。よかったよかった。<BR>
    [06.07.31]<yi

  • 06.05
    モームの自伝的要素を持つ作品。両親と死別、伯父に預けられ聖職者を養成する学校で過ごした少年期〜信仰心を失って学校を辞めドイツ留学〜帰国して経理事務所で働き出すが全然使えない〜画家を目指してパリ留学〜才能のなさに気付いて帰国し今度は医者を目指す〜株で失敗して学費払えず医学断念〜パリ時代の経験を活かしてアパレル系商社のデザイン部勤め(薄給)〜伯父が亡くなり遺産で病院に復帰して医師免許取得(=30歳)…というのが大まかな流れ。これに文学や芸術や美へのこだわり・友情・恋愛・生きる意味の模索なんかが絡んで、非常に面白い。ごく最近まで就職活動をしていた身としては自分が何をしたいのか悩んで試して失敗して悩んで…という部分に激しく共感。最終的には医者を選ぶあたり、お医者さんを目指している方にもおすすめです。主人公は内翻足なんだけれども、これはモーム自身が吃音症だったのを肉体的障害に置きかえたものらしい。吃音・内翻足・美へのこだわりときたら『金閣寺』を思い出さざるを得ませんね。しかし意外なことに燃やす場面はありません。あしからず。  

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