- Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102182314
作品紹介・あらすじ
1910年、メキシコ革命前夜。犯罪常習者のローボーンは武器を満載したトラックを強奪してひと儲けを企むが、あえなく捕縛されてしまう。弁護士の仲介で合衆国捜査局との取引が成立し、ローボーンは若き捜査官ルルドによるメキシコ情勢の内偵に同行することとなる。だが、実は二人には共有する過去があった-。血煙渦巻く国境の荒野を舞台に、鬼才による"悪の叙事詩"が炸裂する。
感想・レビュー・書評
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テキサスとメキシコを舞台にした冒険小説!犯罪者の父親と合衆国捜査局の特別捜査官の息子との偶然の邂逅。息子は父親と知っているのだが、父親は息子とは知らず…一体、どんなドラマが展開されるのだろう。
現在のテキサスにはテキシカン料理があり、昔からメキシコとの関わりが深いことがうかがえるが、本書にもその辺が描かれている。
読み終わると、救いのある哀しみが心を支配した。父親と息子の距離が次第に縮まり、ラストには…
なんという冒険小説なんだろうか。テキサスからメキシコへ。この祝福したい気持ちと哀しみの読後感。テランは凄い。覆面作家のようだが、かなりの経験を積んだ人物に違いない。
蛇足になるが、テランのオシャレな言いまわしも好きだ。
ボストン・テランの『暴力の教義』は、『音もなく少女は』『神の銃弾』を超えてる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりの再読。荒くれた非情な世界に生きる二人の男たちの戦いを、テランらしい思い入れたっぷりのまわりくどい形容がてんこ盛りな叙述で描き出す。そのまわりくどさが、父に捨てられ過酷な状況を生き延びてきた捜査官ルルドや、残酷な殺人も全く厭わない一匹狼のローボーンの描写に完全にマッチしている。革命が勃発したメキシコでの武器の密売を調べる彼らには、ある隠された繋がりがある。ルルドだけがそれを承知しているが、捜査を進める二人の関係にその秘密がどう影響するのか。終盤近くで秘密を知るローボーンの心中を思うと胸が熱くなる。ロマンスあり、徹底的に悪い悪党との血みどろの戦いあり、読後感も良いし、最高に面白かった。
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父子の愛憎劇、主人公の純愛、ド迫力の戦闘シーン、何もかも引き込まれます。
無駄に長~い長編を書く作家さんに見習ってもらいたい。ボストン・テラン今まで苦手でしたが、この作品で一気に評価あがりました。 -
なんやこれ
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2010年に発表され、日本では2012年に翻訳刊行されたテランの6作目。犯罪者の父親と連邦捜査官の息子の確執(父親はとうの昔に家族を捨てているため、息子だと気づいていない)をメキシコ革命間近に配置し、緊迫した展開のサスペンス……のはずだが、なんだこのつまらなさは? 自分の状態の問題かとも思ったが、ネットで検索すると評判もあまりかんばしくないので、やはり本書に問題があるのだろう。本編終了後に映画化についての言及があるが、もしやそのせいか? 結局、紆余曲折を経た挙げ句、未だに映画はクランクインすらしていないようだが……。
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メキシコ革命前夜、犯罪常習者であるローボーンは捕縛される。彼は、合衆国と取引し、捜査官ルルドと共にメキシコ情勢の内定に同行することになる。
滅茶苦茶面白いのに、翻訳が途絶えそうなテラン。
これは、映画化が決まっているそうな。が、ググってみたら<西部劇>になってたよ<汗 ついでに、ルルドの名前が変わっていた。
もーーーーー!!
ルルドの名前変えたら、意味ないじゃないかあ。
ローボーンとルルドとの因縁の意味が消えちゃうじゃないのぉ。と、ちょい、憤慨なのである。
うむ。
で、生まれついての犯罪者で、小狡く生きることしか考えない、できないローボーンが、道行の中でゆっくり変わっていくさまが上手い。
ルルドも、任務一辺倒だったのが、ローボーンや、聾唖の少女とのやり取りの中で変わっていくのが切ない。
人が許されるのは、人によってだけだ。
許されるためにも、許すためにも、痛みが存在する。それを乗り越えるのも、また自分自身なのである。
相変わらず、美しい文だった。
英語力があるなら、言語で読んでみたい。きっと、音にしたら口が幸せになる響きがするんだろうな。 -
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1910年メキシコ国境付近が舞台。連邦捜査官と犯罪人が協力して、腐敗したメキシコ国家の裏に存在する組織を探る旅に出る話。お互いが親子だということに捜査官の息子が先に気づき、後半父親が気づくところが絶妙で、効果的に作品を盛り上げていると思った。ボストン・テランの前二作より描写が激しくなくて読みやすい。結末は短いためかあっさりしすぎてよくわからない。
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重罪犯に免責特権を与えて釈放させ、武器密輸ルートを追って捜査官と同行させるのだが、かなり早い段階でその当てにしていた手札は潰えてしまう。押収した品を持っていったん出直すのかと思いきや、そのままメキシコに強行潜入。革命前夜の中、武器を満載したトラックで、行き当たりばったりの珍道中になるのだが、主人公がどういう見当で潜入しているのかわからずもどかしい。途中、いきなり列車のなかで気を失う理由もわからなければ、その後に父親が、まるで長屋で嫁のいるお隣に応援を求める男やもめ然として走り込むのも珍妙であった。
脱線後に女達を連れてタンピコまで、どのように移動していったのか、読んでも絵が浮かばない。クライマックスの水嚢のすり替えも深読みして最初理解できなかった。訳文は読みやすいのに、イメージを描きにくい文章で、訳者の苦闘が理解できる。
しかし駄作と結論づけるには、「神からは遠すぎ、アメリカに近すぎる場所」があまりにも刺激的で、父子の運命も悲劇的だ。一つ一つの警句にもニヤリとさせられ、何気ない台詞にホロリとさせられる。