屍肉 (新潮文庫 カ 18-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102380031

感想・レビュー・書評

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  • 死という文字・・屍とかくにふさわしい小説。っていうか、カーの各作品群は概ね、その傾向、においがきつい。

    この一か月、数冊読み、やわなメンタルしか持ち合わせぬ私はゲップが出てしまった。十分に休息を置いて後日。。

    20世紀後半、ロシア解体後の自由化民主化の嵐は世紀半ばにおけるロシアマフィアの徹底したガサ入れで息の根を止めてしまったかに見えたが豈図らんや~かの国の経済の髄に食いつき 巨大権力と化して行く。

    一般市民は花一本を買うにも躊躇う程の困窮をよそに、公務員・警察は善か悪かの二分・・マフィアの下っ端として豪勢な羽振りを利かす。

    中盤、あたかもアメリカのシカゴを思わせる悪の華を思わせるが異なった感覚のどす黒い闇。ロシア版アンタッチャブルが花開くサンクトペテルブルグ。エリオット・ネスはグルーシン。

    ちらちら文面に出てくるロシアの家庭日常、女性と男性の関係、金稼ぎへの執着など小ネタも面白い。
    冒頭で屍肉とかしたミリューチンの妻、ロシア美人と描かれている。元オリンピック体操選手、聡明でもあり ふとロシア報道官ペスコフが脳裏に浮かんだ・・プーチン愛人も五輪体操選手だけど。

    自殺率世界一のこの国、自殺が政治手段と言い切ってあるのは怖いを越えた感覚。

  • 傑作「偽りの街」でナチス・ドイツ下でのハードボイルドを見事に成立させた才人フィリップ・カー。本作は、ソ連崩壊後の旧レニングラードを舞台に、混乱期に乗じて台頭するロシア・マフィアと刑事らとの対決を臨場感溢れる筆致で描き切る秀作だ。人々の生活は困窮し、食料や物の値段は高騰、登場する刑事たちの家庭も貧しい。旧体制への恐怖感の残滓と、急速な資本主義への転化がもたらす倫理の荒廃。背景となる社会状況が物語に深みを与え、巨悪に立ち向かおうとする刑事らの息遣いが生々しい勢いで迫ってくる。

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著者プロフィール

フィリップ・カー(Philip Carr)(1953-2020)
フランス、モンペリエ大学名誉教授。著書に Phonology(Macmillan)など。

「2021年 『新版 英語音声学・音韻論入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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