上野池之端 鱗や繁盛記

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103003168

作品紹介・あらすじ

なぜみんな気がつかないの? 優しい若旦那の背中で口を開ける蛇の姿に――。騙されて江戸に来たお末の奉公先「鱗や」は料理も接客も三流の料理店だった。少しでもお客を喜ばせたい。お末の願いが同じ志を持つ若旦那に通じ、名店と呼ばれた昔を取り戻すための奮闘が始まった。甦った名物料理と粋なもてなしが通人の噂になる頃、お末は若旦那のもう一つの顔に気づいていく……。美味絶佳の人情時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 信州の田舎から、江戸の一流料理茶屋に奉公に出されたお末。ところがその店は、連れ込みまがいの三流料理屋。お末より先に鱗やに奉公し良縁を得たと聞かされていた従姉は、実は店の金に手をつけて駆け落ちしたのだと店主夫婦に聞かされる。

    ある日、店の客に泥棒の濡れ衣を着せられそうになったお末を、ひとり若旦那の八十八朗だけが信じ、客の言いがかりを突っぱねる。
    お末が、幼いながらも客に精一杯のもてなしをしようと努力している姿に、八十八朗を先頭に、無愛想だった板前ややる気のなかった女中たちも、少しずつ鱗やを元の名店に押し上げようと奮闘を始めるのだった。


    健気で真っ直ぐな娘が奮闘する姿は、まわりの人々も変えてゆく。
    感想を書きかけだったのを発見。
    直木賞受賞おめでとう!
    ふふふ、もっと前の作品から読んでたもんね、となんとなく優越感にひたる。

  • 信頼できるかどうか、って本にも言える。
    フィクションだとかそうじゃないとかじゃなく。
    優しいだけじゃない、人のこころのドロっとした部分ごと語ってくれて、だけどベースに西條さんの正義がある。物語に安心して入り込めて、読み終えた後には必ず満たされる。

  • 江戸の料理店が舞台。奉公に出されたお末、若旦那を八郎に軸に三流料理店「鱗や」が一流店に至るまでの繁盛記。お末の成長と思いととも八郎の秘められた過去が馬脚を現し始める。怨念、非道、欲望に裏打ちされた事件の解明もミステリー心を擽る。若旦那に掛けられた言葉にお末が明日の希望を見出し、その思いが若旦那の大罪を防ぐ防波堤となる ・・・意地らしい感動の場面。料理の描写に唾を飲み、人の情けに涙を流しサクサク染み入る文章に心の襞は踊り出す。最後の情景が一枚の絵となり暫く心はホカホカな予感です。

  • 落ちぶれた料理屋に半ば騙される形で奉公に出された女の子・お末が主人公の連作短編集。
    主人家族のダメダメっぷりにイラっとしながらも、お末の聡明さに救われ、お店がどんどん昔を取り戻していく姿にじんわりする。
    最後の終わり方が少し物足りなかったけど、ほんわかするお話でした。

  • 騙されて江戸の奉公先に連れて来られたお末。連れ込み宿同然の三流料理屋の鱗やを、若旦那とともに立て直していく。

    巻き込まれる事件の謎を解き明かしながら、料理屋を奉公人ともども作り替えていく前半は面白かった。料理の描写も美味しそうで、楽しく読めた。西條さんの料理描写は本当に素敵。大好きです。しかし、後半から、若旦那の過去が絡み、思いがけずシリアスな展開に。まぁ、最後は落ち着くところで落ち着いたけれど、若旦那が暴挙に走るところはちょっとなぁ、、、という感じ。お末に諭されなくとも、もうちょっと頭のいい振る舞い方も出来たのでは?と思った。

  • 人の心がかよっていてあつたかい小説。
     面白かった。後半に入って、若旦那やそれを取り巻く本筋がすべて読めた。

  • 『千年鬼』のあの、救われないのに爽やかに明るいのが強く印象に残っていて、読んでみようかな、と。
    ピーナツアレルギーのアナフィラキシーショックや、ストーカー殺人と言った超現代的なネタでミステリ仕立てな部分もあり、でも其々のキャラの機微はしっかりしてるかな。
    ラストが最大3行(?)何か足りないような気がした。
    残念なところはそこだけ。期待した通り、読後感は悪くなかったです。

  • 読み始めたら朝ドラ「おしん」を思い出していた。ところが、どうやら仇討ちの要素も見え始め最後もスッキリ面白く読了。

  • 三流料理屋「鱗や」に奉公に出されたお末。
    盗みの疑いをかけられたお末を助けてくれたのは、鱗やに婿入りしてきた若旦那の八十八朗。
    八十八朗の、「鱗やをもっといい料理屋にしたい」という思いに賛同し、力になろうと懸命に働き出す。
    鱗やの評判が上がってきた時、お末は若旦那の裏の顔に気づき…。

    よくある巻き返しものというか下克上ものと思っていたら、最後にひとひねり。
    後味さわやか。


    収録作品:蛤鍋の客 桜楼の女将 千両役者 師走の雑煮 春の幽霊 八年桜

  • 江戸は上野、池之端の料理屋が舞台の時代小説。
    田舎から出てきた女の子が奉公に上がった店は、料理屋とは名ばかりの連れ込み茶屋だったが、婿入りした若旦那の差配のもと、店の者たちもやる気を出して、料理屋番付に乗るところまでとなる。その過程でトラブルが起きたり、それを解決したり、という展開で、そのまま人情話で終わっても良さそうな感じで進んでいく。しかし、ふとしたキッカケから女の子は若旦那に違和感を抱く。菩薩と呼ばれる若旦那は、両親と兄弟を殺し、店を乗っ取った男への復讐を周到に準備していたのだ。その男とは、店主であり婿入り先の舅だった。
    前半は女の子が苦労しながら、歯をくいしばって頑張る姿が健気。それが奉公を続けるうちに周りに気を配れるようになり、それは仕事でも生かされていくのだか、若旦那の裏の顔に気づいてしまうことにつながっていく。奉公人たちを一流の店に相応しくなるよう育ててきた若旦那にとって、女の子の成長は嬉しくもあり、皮肉な結果でもある。
    エンディングはちょっとうまく行き過ぎじゃないかなあと思うけど、復讐のくだりがドロドロで重いので、最後はこのくらい暖かくないと終われないかな。

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著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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