ヒップホップの詩人たち

著者 :
  • 新潮社
3.98
  • (11)
  • (22)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 293
感想 : 21
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (599ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103014324

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ヒップホップがファッションでもスタイルでもないコトバの表現行為であることに改めて撃たれました。むかしむかしロックに日本語の歌詞が乗るか?という論争があったそうですがR.U.M.DMCやエミネムの圧倒的な存在があったとしてもこの国のヒップホップは、はじめに日本語ありき、なのだと思いました。ラッパーが言う「リリック」(インタビューでは誰もが絶対「歌詞」とは言わない!当たり前?)とは、まだ言霊が信じられていた万葉の時代の「歌」なのではないでしょうか?いまヒップホップは安定という幻想の底が割れた時代の万葉集!万葉集に東歌というジャンルがあるように地方での仲間、生活を中心にリリックを紡ぐという表現活動はこの国の希望なのかもしれません。

  • 日本語ヒップホップを現代詩と捉え、業界で活躍するラッパー15人を取り上げたインタビュー集。なんと600p近くあり、読了までに時間を要した。
    2012年のものなので少し古いが、読みごたえがあった。

    インタビューで語られることがアルバムや音楽性などではなく、「自身の半生」であることから、掲載されるリリックのリアリティが強く感じられる。黎明期からの話や、この当時の流れが語られるのでヒップホップファンでなくても楽しめる。
    合間に掲載されるリリックをインタビューと併せて読むことで、確かに現代詩という切り取り方をしても差し支えないように思える。歌詞ではなく、リリック。言葉に力がある。

    自分はあまりこの界隈に詳しくはなく、あぁ知ってるという人はほんの数人であったが、大御所から当時デビューしたばかり、それも地方で活動しているラッパーを選出するなど偏りはあまり感じられない。
    インタビューにけっこう人間性が出ていて面白い。

    どうしてもギャングスタラップは日本では嘘っぽいというか、作り物っぽいマッチョな価値観だと思うが、本人たちから語られる内容はそれがリアルな世界もあるのだと一部認識を改めた。どうも自分には合わないが。

    かなり内省的な、文学的なニュアンスの独自世界を持つラッパー(志人などはもはやヒップホップの枠をこえている)のインタビューは特に面白い。言葉選びからそういう人特有の傾向が見られるというか、意外といい家庭で育っているラッパーが多いのだ。ヒップホップにおいても前衛よりだとやはりこうなのか。

    基本的に凡その人に共通するのは、意地を貫こうという意思である。全然現代のロックよりロックなのだ。
    そして文学や詩をリリックの材料として吸収するラッパーが多く、けっこう生みの作業は苦しみを伴うようである。それを語る人が意外と言えば意外であった。

    目まぐるしく変化するシーンであり、この本が出て6年が経ち新世代が登場し自分が知ってる限りでも状況はかなり変わったように思える。
    しかしラッパーのパーソナルな部分を深く掘り下げることに成功している本書は、今でも充分読み応えある普遍性を持った一冊である。

  • 本の厚さ同様、内容というか中身の厚さも素晴らしいし、感謝しています。

  • 地方の美術館 田舎の不良 でんがりゅう田我流 ほんとのワルはけっこう、音楽が好き 石和 甲府 ブロックパーティ なえふきし苗吹市
    コンサバ (思想) : 保守 (Conservative) 、「保守主義」(Conservativism) の略。対義語はドラスティック(革新)。
    ロー‐ファイ【lo-fi】《ハイファイをもじった語。low fidelityの略》録音環境や再生音質が悪いこと。また、意図的に質の悪い音響機器を使ったり、雑音や不明瞭なリズムなどを取り入れたりしたポピュラー音楽。→ハイファイ
    ノリキヨ 相模原市 座間市 米軍基地 団地 墓石屋 茅ヶ崎市 スケボー ひとのアラをつくのがうまい子供
    ルンペン【(ドイツ)Lumpen】《ぼろ切れの意》浮浪者。
    ゲイン【gain】1 利益。収益。利得。「キャピタル―」2 制御系の電圧・電流・電力の入力に対する出力の比。単位はデシベル。3 アメリカンフットボールの攻撃側が距離を獲得すること。
    スペルマ【(ドイツ)Sperma】精液。ザーメン。
    アドレナリン 車椅子 鬼 福島県いわき市小名浜おなはま 本田理沙 いちごがポロリ 4代目のお父さん MSC 妄想族 漢 甲府刑務所 優等生 化粧したアワビ ホスト 会話のキャッチボール フリースタイルの練習 ビバップ セロニアスモンク 村上春樹 複雑なものをシンプルにする チャールズミンガス ZONEザダークネス 新小岩バーミヤン 自殺の名所 ロンリー論理 奮エテ眠レ ふつうのパーティラップとかと桁外れに違ってた 芸術の域に達していた 神秘性 可能性 ひとり覚醒した言葉への意識 言葉を肉体化し、命を持たせること 星新一 ふくせん伏線の張り方 アルティメットMCバトル 朝方 健全に過ごしたい サバイブ 悪いことを経験した上での普通 小林勝行 神戸薔薇尻 伊川谷 パチンコ屋 マークII 吉本 躁鬱病 宗教 ギリギリのライン ゴミ屋 千歳市 自衛隊 ヤクザ 小指 美容師 暴威 看板屋 菊水 北海高校 札幌商業高校 レゲエ ラップの発展の歴史 喋り口調 シャウト バイブス ホッチャレ 体現 大麻 自生 北海道 6kgのヘロイン オーストラリア パスポート 元締め DDD アコースティックギター 電話 ジェイル 遠隔コラボレーション 『イル』「ぶっ飛んだ」「キレている」という意味合いの誉め言葉。
    「ヤツのラップスキル(技術)はイルだ」
    手紙に忍ばせたテープ 全国のサイファー情報を共有する為のbotです。 サイファーとはラッパーが輪になって フリースタイル(即興)でラップをする事 レイト トイレ 麗人 石川県金沢市 エミネム シンゴ2 マイスペース デザイン系の専門学校 アメリカ留学 マリリンマンソン ハルクホーガン 自伝 ひたすら走るとスカッとする CD-Rをかけてもらってラップ どこをレペゼンしてるの? 空手の型を披露してますみたいな感じ その瞬間のリアル アウトサイダーアーティストチプルソ=マルチプルパーソナリティ=多重人格 大阪府豊中市 登校拒否 クラシックギター 時間ケチ ヒューマンビートボックス 一人宇宙 岡本太郎 芸術は爆発だ NO DJ 1MC アイラブミー ERA 東横線 床屋 NUMB WOB どれだけバイオレンスなダンスができるか 多摩川 田園調布 志人 生かされるなら生きてやる 発酵人間 新宿区落合 吉本昌行 ミシガン 玉兎 勉強ハイ 入試の数学は5点 鉛筆と紙で白紙の虚無に息を吹き込むことで、こころを解放する瞬間というのを、小さいころから知ってた 早稲田大学 サドゥー 大木 熊出没注意 芥川龍之介じゃないですけど、将来に対するぼんやりとした不安 自分自身の死を見るというような瞬間 柵がなくなる瞬間 神話的なもの 熊本の阿蘇 神隠し 檜原村 中央線 五日市線 バス 氷瀑 エコも濁ればエゴになり徳も濁れば毒になる 遺稿改生こう RUMI 詩のボクシング 一発真剣勝負 どっかのプロバイダー 夢は夜ひらく 目黒区 川崎 女ひ物乞うバブルの亡霊 中国女 ひさめ氷雨 般若 パブリックエネミー カチコミ 高円寺とか吉祥寺とか中央線系のライブハウス 中島みゆき 山崎ハコ 緑川アコ 日本海みたいなの 元気が出るテレビ ダンス甲子園 アナーキー 京都駅南側 近鉄京都線 ひらかたし枚方市 国道一号線 むかいじま向島ニュータウン 三条 IDチェック 兵庫県加古川市 刺青彫師
    イリーガル【illegal】違法な。非合法的な。「―な滞在者をあぶり出す」
    トゥイギー 滑舌 インテレクチュアル 三重から名古屋 そやんなあとか柔らかい 薄い関西弁 ブレイクダンス 風見しんご 刃頭ハズ ECD スティーヴィーワンダーのフィーチャリング 18でヒモ状態 和製ヒップホップ 山塚アイ オウディオスポーツ NY ダブルデート 鳥山明になる 白線引き カミナリ ユーザロック アジテーション ストレンジ ディール契約 実験途中過程 改宗 ヴィーガン 日本語の文法とか、そういう概念を壊すことから 夜行列車 成熟 トコナエックス 常滑市 イルマリアッチ 勝新太郎 栄のセントラルパーク 金山グルーブ 仁義なき戦い 計算されたカッコよさじゃなくて タランティーノ ロバートロドリゲス エルマリアッチ イル=病んだ メキシコ的な音楽 名古屋弁ラップ 尾張=ビバリヒルズ 熱中症に伴う体力低下による心停止 葉書 ラッパーは光、言葉は影 2時間にわたって読み続けるという作業の厳しさ メジャーなメディアとは、ほんとうはもはやメジャーですらない、裸の王様なのか 尾崎豊の歌詞のまんまの世界 17歳で配管工 19歳で高校を卒業 札幌大学 経済学 ススキノで世渡りを学んだ 見極める、その術 踊ってる自信 千歳からジョージ ナズ イルマティック 訳詞 結局その程度 ほんとに、こんなすごいの? 深いものを求めてた 宮沢賢治 20代後半になって、保険も入ってねえし 人生ほんとにぎりぎりの土壇場 秒針という名のカミソリをのどに当て横に引く ストイズム まったくシンパシーもリスペクトも感じられない ジレンマ 六本木コア 時間軸 つながりの必然性 まだ聞いたことのない言葉を、それが音とからみあう快感を 創作がサバイバルに直結するとき、手段はシンプルであるほどいい

  • 現代の路上詩人とも呼ぶべきラッパー15人についてまとめたものです。それぞれの「生き様」から放たれる言葉たちは「ストリート」の中から産み落とされたもので、個人的にはその全てには共感できませんでしたが…。

    正直なところを言うと、僕はヒップホップをほとんど聴きません。大学時代にエミネムを少し聴いたことがあるくらいでしょうか?本書は、「現代の路上詩人」とも呼ぶべきラッパー15人のインタビュー記事をまとめたものです。

    なぜこれを僕が手に取ってみようかと思ったのはまったくの「第6感」からだったのですが、特集されているラッパー15人はその殆どが「ワル」と呼ばれる人たちで、「ヤンチャ」して、お決まりの「獄中」体験からリリック(歌詞)を書いてフリースタイルのMCバトルを繰り広げて成り上がっていったというのが大半のストーリーなのですが、中には早稲田大学出身のラッパーなどがいて、本当に驚いてしまいました。

    彼らの書くリリックのうち、「リアル」と彼らが言うものが僕の中ではなんとなくしっくり来なくて、それは、彼らの見ている、もしくは感じている「リアル」と僕が感じているそれがまったく違うからなのでしょう。中には、職を転々としながらステージに立ち続ける女性ラッパーや、地方から自分の生活を基にして発信していく、というラッパーもいて、単に「あぶく銭と暴力と酒と麻薬とオンナ」みたいな単純な割り切りでは到底説明できない「豊かな世界」があるんだな、と読み終えた後にそんな感想を抱いてしまいました。

    以前、クラブカルチャーに詳しい人間と付き合いがあったのですが、ある日、僕が彼と酒を飲んでいるときに
    「『8mile』で出てくるようなフリースタイルのMCバトルって、東京でも見れるの?」
    という僕の問いに
    「あぁ、それはどこでもやってるよ」との答えが返ってきて、
    これを書く前に一度それをナマで見ておくべきだったなあと、若干の後悔をしながらこの文章を書いていることをここで告白いたします。

    でも、それはさておき、生々しいまでの彼らの「息吹」と彼らのつむぎだす「言葉」によって癒されるという少年少女が少なからず存在するという現実を、本書を読むことで知ることができました。

著者プロフィール

1956年東京生まれ。1976年から1986年まで「POPEYE」「BRUTUS」誌で現代美術・デザイン・都市生活などの記事を担当する。1989年から1992年にかけて、1980年代の世界現代美術の動向を包括的に網羅した全102巻の現代美術全集『アートランダム』を刊行。以来、現代美術・建築・写真・デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集を続けている。
1993年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』を刊行。1997年、『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』で第23回木村伊兵衛写真賞を受賞。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続けている。2012年より有料週刊メールマガジン『ROADSIDERS’weekly』(http://www.roadsiders.com/)を配信中。近著に『捨てられないTシャツ』(筑摩書房、2017年)、『Neverland Diner 二度と行けないあの店で』(ケンエレブックス、2021年)、『IDOL STYLE』(双葉社、2021年)など。

「2022年 『Museum of Mom’s Art』 で使われていた紹介文から引用しています。」

都築響一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×