氷壁

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 159
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103025122

作品紹介・あらすじ

滑落事故はなぜ起こったのか?人妻との恋に悩む男はなぜ死んだのか?甦る名作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 井上靖さん初読。

    「氷壁」というタイトルから「神々の山麓」のような山岳小説をイメージしていたが、内容は山以外の人間模様が中心の作品。

    二人の親友でもある登山家の一名が滑落事故で亡くなった。その死因を巡り、様々な憶測が絡み合うことで物語が進行していきます。

    終盤ハッピーエンドかと思いきや悲しい結末に。まぁ、そうなるよねと思いながら読み終えてしまいました。

    救いがない展開ですが、主人公の上司の豪放磊落でありながら、部下に語ったり、愛情を持って接するところになんとか救われた気がします。

  • 著者、井上靖さん(1907~1991)の作品、ブクログ登録は2冊目。

    本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    滑落事故はなぜ起こったのか?人妻との恋に悩む男はなぜ死んだのか?甦る名作長篇。

    ---引用終了


    本作は、1958年3月18日に大映の映画として公開されています。
    そのキャストは、ウィキペディアによると、次のとおり。

    魚津恭太 - 菅原謙二(1926~1999)
    八代美那子 - 山本富士子(1931~)
    小坂かおる - 野添ひとみ(1937~1995)
    小坂乙彦 - 川崎敬三(1933~2015)
    常盤大作 - 山茶花究(1914~1971)
    八代教之助 - 上原謙(1909~1991)
    小坂の母 - 浦辺粂子(1902~1989)
    上条信一 - 河原侃二(1897~1974)

  • 63年も前の本。イギリスのボーイソプラノ合唱団Liberaが歌う「彼方の光」という美しい曲を今度演奏することになり、2006年のNHKドラマ「氷壁」の主題歌として作られた曲ということで、ドラマは観たことが無かったのでその原作はどんなだろうと興味を持って読んでみた。

    山を愛する魚津と小坂という2人の男が中心となって話は進む。2人で雪山登山中にナイロン・ザイルが切れて滑落した小坂は亡くなってしまい、失意の中日常に戻った魚津は切れるはずのないナイロン・ザイルが何故切れたのかという追究を始める。行われた再現実験ではザイルは切れず、世間では2人の技術的な問題があったかどちらかが故意に切ったという憶測が広がる。雪解けシーズンを迎え遺体を収容してみると、ザイルは故意に切られたものではないということが分かった。ではなぜ切れたかということは判然としないまま夏になり、1人で事故後初めての登山をして、降りたところで事故後親しい仲になっていた小坂の妹かおると落ち合う計画を立てた。しかし予定を過ぎても魚津が姿を現す気配はなく、捜索したところ遭難して亡くなっていた。

    登山用語など全然知らないので雰囲気で読み進めたところもあったけど、500頁超ずっと引き込まれるものがあった。ハッピーエンドではなく結局短期間のうちに2人も亡くなってしまうし、ザイルはなぜ切れたのか分からないままだし、物語に関わってくる2人の女性が握っているものもとても大きいのではと勘ぐらせる終わり方。「もしかして美那子がすべての厄の元なのでは?!」とか思ったり。そういうことや季節に応じた山の描写含め、とても想像力を掻きたてられる物語だった。63年も前の本だけあって、夫を立てる妻や男女の立場の描写などには流石に時代を感じた。
    登場人物で一番いいなと思ったのは魚津の上司の常盤。豪胆だけど人を信じるということにおいて強靭な信念を持っている。無条件に自分を信じてくれる上司のもとで働けたのは魚津も幸せだっただろうと思う。

  • 読みたいリストに入れておきながら、今更ようやく読み終えました。”ザイルがなぜ切れたのか?”。これを巡っていろんな推測がされる中の主人公の葛藤やその周りの人間関係がずーっと絡み続け、読んでいても真相が知りたくてワクワクする。古い本ではあるが、今見ても十分に楽しめる。ラストがあーなんとなくとは思っていたけど、やっぱり支社長があのときにいった言葉通りになっちゃったかーって感じで締めくくられていた。ページ数も結構なボリュームだけど読み応えはあった。

  • 山岳文学の結晶であることは分かるが古い道徳観で読みづらい。後半飛ばし読み。展開も、描写も陳腐と感じたが、これはこの本が山岳文学の方向性を決定づけたということなのだろう。

  • ちょっと前読んだのですが、ハラハラドキドキしながら読んだのを覚えています。

  • タバコ。携帯電話がない。言葉づかい。70年でこんなに変わるんだ。

  • デュブラの詩で涙。

    単なる登山家の愛と友情の物語ではなく、当時、本当にザイルが切れる事件があり、製造者責任の法整備に繋がる社会問題を扱った小説と知り、感動も倍増。

  • 昔読んだことがあるけど記憶に無いのと、山登りを始めた今だからこそ、と思い再読。
    冒頭から山をやる人にとって、お!と思う描写。奥穂高、涸沢、徳沢と、馴染みの知名オンパレードで、山から帰ってきたばかりだったのに、胸がワクワクします。
    ナイロンザイル事件が思いのほか早く起こって、そこからは、ドラマが展開するのだけど、山をやってる人には物足りないかも。
    そう、もっと山のこと書いて欲しいと思ったのです。

  • ミステリーなんだけど、人間ドラマ。

    ナイロンザイルが切れたのは事件なのか自殺なのか…

    山に関して無知なので、冬山登山に関する描写は「へぇ〜」と思う事が多く面白かった。

    時代背景は古い。

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著者プロフィール

井上 靖 (1907~1991)
北海道旭川生まれ。京都帝国大学を卒業後、大阪毎日新聞社に入社。1949(昭和24)年、小説『闘牛』で第22回芥川賞受賞、文壇へは1950(昭和25)年43歳デビュー。1951年に退社して以降、「天平の甍」で芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」で日本文学大賞(1969年)、「孔子」で野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章。現代小説、歴史小説、随筆、紀行、詩集など、創作は多岐に及び、次々と名作を産み出す。1971(昭和46)年から、約1年間にわたり、朝日新聞紙面上で連載された『星と祭』の舞台となった滋賀県湖北地域には、連載終了後も度々訪れ、仏像を守る人たちと交流を深めた。長浜市立高月図書館には「井上靖記念室」が設けられ、今も多くの人が訪れている。

「2019年 『星と祭』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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