- Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103068426
感想・レビュー・書評
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主に保育園から中学生の息子との日々の一場面を描いたエッセイ。
発表されたのは入院中の愛犬(よく出てくる柴犬とダックスフントのミックスの花子)をめぐる息子とのいさかいを書いた「点滴」のみ。これが一番完成度が高いと思った。他は発表されなかったということは、作品としていまいちと考えたのか、息子に「オレのことを書くな」と言われて発表しなかったのか、どっちもなのか定かでないが、男子のバカさと可愛さがイキイキとしていて、それでいて親の切なさも伝わり、なかなかよかった。まあ、まとめて読んだから子どもの成長がわかって余計にそう思うのかも。ひとつひとつバラバラに読んだら、ちょっと物足りないかもしれない。
それでも、何気ない日常のヒトコマを短くさっぱりした平易な文で、ここまで情感豊かに書ける人はそうそういないと思う。「あ、あっあ」なんて会話だけで書かれているのに、友達が欲しい女の子の気持ちだけでなく、同じくらいの年の息子に語る大人の気持ちまで読み取れて、ぐっとくる。
佐野洋子の文章のうまさは、天才的。
もう新しい文章が読めないのは残念だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あとがきに本書の主人公ケン、広瀬弦が「大袈裟と嘘を好き勝手に散りばめた」とコメントしていますが、嘘か本当か誇張されているかはさて置き、幼少期、子供時代の元気な男の子のはち切れた陽気さ、無邪気さが散りばめられた眩しい時代の記録?。
異性の息子を驚きを持って見つめる母親の頬ずりするばかりの感情が感じられ、それを鬱陶しいと感じる息子のあとがきにも頷けました。 -
祖母を見てるようだった
作者の書き付けなのだろうか -
2019.09.14
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佐野洋子さんの没後に見つかった未発表原稿を中心に、息子の広瀬弦さんが編集したもの。収録作品の主人公は弦さん、つまり幼い頃から思春期くらいまでの息子の日々を描いたもの。
佐野洋子さんってぶっ飛んでる女性という印象でいたんだけど、読んでみると母らしい母の面もあるんだなと、正直なところ驚き。これでいいのかなと思ったり不安や迷いもあり、また息子を信じ直したり見直したりの連続。何だか、息子だからこういう思いを抱くのだろうなと思ったりも(娘だったら同じように思うだろうか)。
未発表原稿だったわけだけど、佐野洋子さんはどうして世に出さなかったのだろう。弦さんは、自分のことを書くなと言ったからじゃないかと「あとがきのかわり」に書いているけど……。
最後に収められている「愛する者」の締めくくりの一文が素敵だ。以下の通り。
何でもやってくれと思う。子供時代を充分子供として過ごしてくれたらそれでいい。悲しいこともうれしいことも人をうらやむことも、意地の悪いことも充分やってほしい。
そして大人になった時、愛する者に、君は何を見ているのだと他者の心に寄りそってやって欲しいと思う。 -
佐野洋子はいいエッセイを書く。これもいい。けど・・・
弦くんがあとがきで「書きたいだけ書かせてあげればよかった。かあさん、ごめんね。なんていう訳ない!」って書いてたけど、ほんととうそが取り混ぜて書かれているって。あたりまえだけど。まあ、楽しかったです。 -
(ほぼ)未発表の、息子さんに関する原稿をまとめたもの。佐野洋子さんという人間の、母たる部分が垣間見える。
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「点滴」はIBM USERS掲載・時期不明、その他は新発見原稿です。と書かれてます。
佐野洋子氏の著作は全部読んだ気でいたんだけど(ファンなので)、あれ?読み逃していたのがあったのかな?と思ったら、死後発見された未発表原稿だそうです。
まず、題名がいい!(笑。
私は男児を産んだことないですが、一人娘だって、小さい頃はサルだったわ。としみじみしたり、ニヤリと笑ったりして読みました。男の子の友情って、いいね。
失礼ながら、本編よりも「あとがきのかわり」として描かれている広瀬弦氏(佐野洋子氏の息子)の文章、(たった2ページ)が、抜群に良かったです。とても良かったです。こっちが主流といっていいくらい。
このあとがきが、この本に幾重の深みを与えていると思います。
引用しまくりたいくらいですが、たった2ページのこの宝物は、ブクログには引用しないことにしました。
もし本屋でみかけたら、最後の2ページ、この「あとがきにかえて」を読んでみることをオススメします。(もちろん全部読むのがいいんだろうけど)
小説家じゃなくたって、私も含め、おかあさんだったら、何か感じるものがあると思います。(大人になった息子が読んでも、イイものがあると思う)
また佐野洋子さんの新刊を読みたいなぁ。
残念です。 -
『100万回生きたネコ』の著者が自分の息子との生活を描いたエッセイ。佐野洋子さんが母親として息子とどういう関係で暮らしてきたか、親子関係ほど難しいものはないけれど、子供との接し方に悩む親たちにとっての多くのヒントが描かれているように思った。