暗闘 尖閣国有化

著者 :
  • 新潮社
3.56
  • (1)
  • (4)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 35
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103069645

作品紹介・あらすじ

野田VS.石原の「百五十日戦争」、知られざるその内幕を検証する――。二〇一二年四月、石原都知事が米国でぶち上げた「尖閣購入」に対し、野田総理が密かに進めた「尖閣国有化」。動き始めた外務・財務・防衛官僚たち、繰り返される対中シミュレーション、地権者との秘密裡の交渉、そして官邸での「頂上対談」……。関係者への徹底取材で浮き彫りになる真実、総理の決断までの攻防を描く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 今更ながら、あのとき、何があったのかを知るために読みました。

  •  筆者独自の見解を披露するというより、事実関係の経過を克明に写し取ることが主眼のような本である。
    ・巡視船体当たりの中国漁船船長釈放には、仙石官房長官の「間接誘導」はあったが、法律家である長官はあくまで司法の世界での判断にこだわった。
    ・地権者からの尖閣買い取りにリードしていた石原都知事と、平穏な維持管理のため国の買い上げ検討を少人数で内密に進めていた野田首相周辺。それを暴露して混乱を生じさせた朝日新聞報道。
    ・中国への説得工作を続け一定の支持を得ていたと思っていた日本政府側。中国内部の権力闘争により、むしろ現状を実質的に変更しないための国有化という日本政府の意図をくみ取る余裕がなく、親日的と見られる姿勢を取れなかった中国指導部(特に温家宝・李克強)。

     国有化以降、確かに日中関係は悪化し、激しい反日デモも起きた。しかし、あの時点で東京都が買い上げて建造物を作っていたら、事態はより悪化していたかもしれない。一方で国有化から数年経った現在では日中関係に国有化自体が大きな問題となっている雰囲気はなく、中国人訪日客の「爆買い」は世間を賑わす。そうすると、国有化自体は長期的には大きな意味はなかったのかとも考える。ただし、本書末尾でも触れられている尖閣周辺への中国の艦船や航空機の進出拡大、レーダー照射といった危険な行為は現在も大きな問題であることには変わりはない。

  • 野田佳彦・元内閣総理大臣や長島昭久・元内閣総理大臣補佐官ら、
    当時の日本政府関係者に取材を行っていることが、
    本書の記述を肉厚なものにしていると思われる。

    とても生々しい場面描写もあるし、なにゆえ、
    唐突に国有化が決められたのか、その内情というのが、
    とりわけ、野田元首相の心理描写がなされているがため、
    より切実なものとして感じられた。

  • 国有化2周年を迎えるにあたって再読。国有化に尽力した民主党の政治家たちの証言をもとに組み立てた政治ドキュメント。10年の衝突事件から12年9月の国有化、その直後の中国の猛反発までが書いてある。よくここまで調べたとは思うが興味のない人には面白くないと思う。僕もこの問題をずっと調べているだけに、情報量に愕然とした。
    石原氏側や地主側からの話が聞けていないので減点。

  • こういうことだったんですかね。

  • 地元の図書館保有。

  • ▼野田民主党政権が決断した尖閣諸島国有化。私も東京都の尖閣諸島の募金をしたことだし、せっかくだからちゃんと勉強しようと思って。

    ▼石原元都知事が尖閣諸島を東京都で購入すると発表した時はビックリでしたが、結局、地権者は国に売却することに。急な地権者の心変わりに「どうして?」とまたまた驚かされました。(東京都の対して不信感を持ったと書かれてしましたが)。石原氏の無念さを思うと複雑な心境でした。

    ▼民主党政権で尖閣国有化にして大丈夫?そのまま中国に横流ししたりしない?って思っていました。とてつもなく高額な金額で尖閣購入希望していた中国人実業家に売られるよりはマシかなーとは思いましたけど。今は安倍政権になったので、きっと安心ですね。

  • この本を読むまでは、大国に遠慮して現状維持大事の外務省がよく国有化に反対しなかったな(最初から最後まで野田・長島ラインの官邸主導で、島に一切手を加えないことを認めさせるのがやっと)とか、国有化によって侵犯が常態化し日米安保にも揺さぶりをかけれるので中国にとって悪くなかったのでは?(実は、漁船接触以来後手つづきで、巻き返そうとすればするほど米が尖閣を安保対象範囲と踏み込んだ解釈を招く)とか考えてたのが、実情が詳しくわかってよかった。惜しむらくは、石原氏や地権者の栗原氏に直接聞き取りした証言があれば良かった。

    「船溜まり」なんかは当時造ればいいじゃんと勝手に考えてたが、中国の漁船が台風で避難してきて立ち退かなかった時どうするかって問題があったなんて知らなかった。

    「国有化」とは言わず単なる「所有権の移転」ということでなんとか穏便に済まそうと思っても、これによってかつて鄧小平が持ちかけた「棚上げ論」に戻るその前提が失われたわけで、この一連の暗闘はこれからも詳細に見ていく必要があるだろう。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

春原 剛
春原 剛:日本経済新聞社編集委員

「2013年 『オバマと中国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

春原剛の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×