ローマ人の物語 (10) すべての道はローマに通ず

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096191

作品紹介・あらすじ

ローマの真の偉大さの源泉は、インフラストラクチャーの整備にあった-。街道、橋、水道のハード・インフラと医療、教育のソフト・インフラの両面から「ローマの本質」を描き尽くした渾身の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 2021/11/3
    ローマは高度なインフラストラクチャーを整備した最初の文明である。ハードなものでは街道、橋、水道であり、ソフトなものでは平和、法律、医療、教育である。街道と橋は、軍の速やかな派兵、交易などの民間交流、公営郵便とあわせた情報伝達を可能にし、ローマ帝国下にあることのメリットを属州民にも感じさせ、ローマ帝国を帝国民が自ら代償を払ってまでも守りたいと思う意味のあるものにしたり。
    水道は、公衆衛生向上に貢献した。劇場、闘技場、公会堂、神殿などの文化施設、司法・行政施設とともに、帝国民にとって統治機構面や文化面でローマ的な暮らしを実現するために必要なものであり、これもローマ帝国に実体を与えるものであった。ローマの為政者もこれらのインフラを整備することは、人間らしく生きるための重要な仕事として認識していた。
    ローマ帝国民であることのメリットを感じさせる、ローマ帝国に実体を与えるものとして、忘れてはいけないのは平和の提供である。リメスで外敵の侵攻を防ぎ、内部の治安を維持することによるパクス・ロマーナこそが最も重要なインフラだったとも言える。
    ・学問と芸術という文化面では優位性を保持していたギリシャ人もローマの街道と水道についてはローマ人の発明だと認めていた

  • これまでのシリーズのように皇帝毎に歴史を追うのではなく、ローマのインフラをハード・ソフトの両面からまとめた一冊。
    ただ、インフラの語源であるインフラストラクトゥーラという言葉が存在しなかったローマはこれを「人間らしい生活をおくるためには必要な大事業」と呼んでいた。
    ハード=公道、橋、水道
    ソフト=医療、教育
    採算ど返しで行われる事業規模には脱帽。
    63頁におよぶ巻末カラーにまとめられた現代に残るローマのハードなインフラには感嘆させられます。2000年ほど前に建てられたものなんてすごすぎる。

  • このシリーズでは異質な一巻です。人物中心ではなく、テーマはローマ帝国を支えたインフラである道、橋、水道などのハード、そして医術、教育などのソフト面のインフラ。ローマ人は子供の時から母国語のラテン語と世界共通語としてのギリシャ語を話したと言う。特に道の建設は当時としても土地の接収から始まる公共事業の大変さの記述など、現代にも通じる記述は迫力があります。ローマが世界帝国として現代に至るまで圧倒的な存在感を持っているもの凄さに圧倒されます。ローマ人とギリシャ人の違い、ローマがいかにインフラを重視し、清潔さを望んだか、ギリシャは美を求める割には、清潔さはあまり求めなかった!永年の繁栄、異常に少ない疫病の流行、パクス・ロマーナの実現は、これなくしてはなかったということが良く分かります。著者は全15巻の中で、この巻の副題、書く内容も決めていたというだけに力が入った作品です。

  • 本巻はガリア戦記に着想を得たのかなと思う(読み落としていなければよいけれど)。

    巻末カラーの写真が思った以上に充実していてよかった。2千年の昔が偲ばれる。アッピア街道やフォロ・ロマーノの「兵どもの夢のあと」の感じが好き。

    一方で、ネロの記念柱やポンペイウスの柱、ブリンディシの円柱など、力学的に不安定なものが綺麗に残っていることに驚く。建設時の技術力とメンテナンス力は素晴らしい。

    一番驚いたのは水道橋。カエサリアのものは海岸沿いにもかかわらず、よく現代まで残ったものだ。ニームの水道橋も3層の大きさだし、セゴビアのものは街中にそびえている。

    欲を言えば、多くの街道の説明や写真があるとよかったなと思う。
    街道の基本形の説明はよかった。水はけも考慮し、地中1.5mまで手が入っているとは想像していなかった。

    これだけの隆盛を誇ったローマ帝国が、どのように終わっていったのか、ますます次巻以降への期待が高まった。

  • 古代ローマのインフラについて取り上げた巻。
    街道、橋、水道、医療、教育といったハード・ソフト両方の基盤を紹介してくれる。
    特にハードなインフラの方はレベルの高さに驚かされる。今から2000年以上前とは思えないクオリティで作られ、維持されていたとのこと。
    例えば水道は長いもので全長90キロメートル以上で、場所によって高架橋であったり地下を水が流れる。垂れ流しにすることで腐らないようにしていて、水質が良かったとのこと。そして一人当たりに供給される量は現代の主要都市と変わらなかったらしい。
    こんなことを当時やっていたのはローマ人だけで、属州への普及には骨が折れたらしい。
    こういったインフラを大事にする民族性が、長きに渡る帝国を作り上げたのかもしれないと思った。

  • この巻は今までのと違うから、あんまりおもしろくないかもしれないと、前書きに書いてあったのですが、そんなことはなかったです。著者の古代ローマへの愛が感じられます。古代ローマ人はスゴイ!!すすんでます。現代の政治家の方々に見習ってもらいたいです。

  • 図書館長 井上 敏先生 推薦コメント
    『ヨーロッパの歴史を理解するにはまずローマの歴史。独特な書き方だが、ローマの建国から西ローマ帝国滅亡までの通史を知るにはちょうどいい。研究者からの批判もあるが、理解しやすい。』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/335567

  • 文庫版では27・28に相当。この巻はこれまでのように時系列や皇帝の歴史に沿うのではなく、ローマのインフラについての巻で、いわば番外編。
    しかしこのインフラについてまとめるという視点はよかった。わかりやすいし、教訓もたくさん。

    インフラはローマ人の定義では「人間が人間らしい生活をおくるためには必要な大事業」ということで、現代の政治家よ国策よ、そうしておくれ。

  • 9巻までの共和制から帝政までの為政者たちの歴史から打って変わり、ローマ街道、上下水道、医療、教育などインフラに特化した作品。

    街道も水道も2000年前に作られたとは思えない、とてつもない距離だ。しかも、ピラミッドのように為政者の権威を示すものではなく、人々が暮らしのために使う機能的なものとして作られていることが古代でありながら新鮮に感じる。

    ローマ皇帝の責任である食と安全、その前提となる平和を維持達成するための必要最小限の軍隊、自治を認める形での属州化と文明化。そのための手段としてインフラの確立とメンテナンスがあった。現代の国家の枠組みがとても小さく、遅れていると感じるほど先進的な考え方ではないか。

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