笑犬楼vs.偽伯爵

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103145356

作品紹介・あらすじ

「宿命」の顔合せ! 同世代の巨匠二人の豪奢きわまる対話と往復書簡、刊行。「宿命」の顔合せ! 同世代の巨匠二人が胸襟を開いた豪奢な対話と往復書簡。テーマは大江健三郎、戦前の豊かさ、文学的な悪意から、嫌=民主主義や映画、猥歌、喫煙、そして一人息子の死まで。互いの作品評も附す。

感想・レビュー・書評

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  • 笑犬楼vs.偽伯爵 | ダ・ヴィンチWeb
    https://ddnavi.com/book/4103145358/

    「筒井康隆」と「蓮實重彦」の貴重な顔合せから見えてくるもの――作家・川上弘美が語る、尽きせぬ魅力 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
    https://www.bookbang.jp/review/article/747371

    筒井康隆、蓮實重彦 『笑犬楼vs.偽伯爵』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/314535/


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    筑摩書房 PR誌ちくま 第622号23年1月号
    https://www.chikumashobo.co.jp/blog/pr_chikuma/category/223/

    〈些事にこだわり 11〉パソコンの故障は、この電子装置への感性的な執着をより強固なものとしてくれたのだろうか 蓮實重彥

  • 筒井康隆と蓮實重彦。この取り合わせはかなり好奇心をそそる。
    構成はこう。
    筒井康隆の「まえがき」に始まり、大江健三郎をめぐる対談。
    そして筒井氏による『伯爵夫人』論、蓮實氏による『時をかける少女』論。
    そして往復書簡。蓮實氏による「あとがき」。

    初めから終わりまで緊張感に満ちていて、スリリングだった。時間を忘れてあっという間に読んだ。
    じっさい、2人の間には一時期、互いを敬遠する時期もあったという。
    詳しくは書かないが『文学部唯野教授』とテリー・イーグルトンをめぐって。蓮實重彦は「殺す」と書くというほどにこの批評家を、アジア人を凡庸に侮蔑する人間として嫌っている。

    大江健三郎対談を読むのは2回目。雑誌初出時に読んだが全部忘れていた。でも大江氏の小説を激しく読みたくなったことだけは覚えている。今回も同じ。積ん読してあった『晩年様式集』を、今がその時だと読み始めたところ。

    大江氏は筒井康隆を発見し、その後も親しく付き合っている。それを見て蓮實氏は嫉妬をしている、という構図。いずれにしても、2人とも大江氏の小説を絶賛していることがちょっと意外だった(ノーベル文学賞受賞者だから、ちょっと恥ずかしくて、おおっぴらには好きだと言えない自分の小ささよ)。

    往復書簡が何よりグッときた。高齢の作家たちの用いる、今の時代から見ると過剰に婉曲的とさえ感じられるレトリックを読んでいると、それだけで胸が疼いて目頭が熱くなった。今は単刀直入に言うことが善とされる傾向がどんどん強まっているけれど、こういう遠回しな、二度読まないと悪口を言っているのかどうかすぐには気がつかないような表現、もっともっと復活してくれないだろうか。

    蓮實氏が三島由紀夫の『仮面の告白』を運動神経の鈍い奴だとボロクソに書いていた。まさに三島小説をうまく言い当てていると膝を打った。蓮實氏に対する親近感が湧くとともに、がぜん読みたくなった(たぶん読んだことがないと思う)。
    あ、今気がついた。『伯爵夫人』、三島賞受賞作だからじゃないけれど、これ、筒井康隆だけでなく、三島を意識して書いてるな。『仮面の告白』と比較しながら読んだら面白そう。

    蓮實氏がほめている筒井氏の『時をかける少女』も未読。これもこれを機に読んでみよう。今じゃないと読まないだろうし。

  • 蓮實重彦と同じ生活圏で暮らしていた。
    駅でよくすれ違った。
    なにしろ、顔の輪郭が長くてデカいし、あのインチキくさい蓮實ヒゲが特徴的で、すぐに発見してしまうのだ。

    電車が来るまで、彼は、ベンチに座って新聞を広げて悠然と読んでいた。
    近所のスーパーマーケットでも、よくすれ違った。
    彼は、背が高くてデカいんだけど、ベルギー人の奥さんもデカくて、一緒に買物してたり

    彼が1人で、買い物かごを腕にぶら下げて、トマト買ったり、レタス買ってたり
    ごくフツーのスーパーマーケットだけど、よく、見かけてた。
    彼の子供のことは、記憶にないなあ。

    彼が住んでる家の前を、よく行ったり来たりしていた。
    なにやら、重苦しい雰囲気の、古びた豪邸だった。
    家にはテレビが置いてない、とのことだった。

    マスゴミが、ニューアカデミズムなどと持て囃した、空虚なバカ騒ぎの最中だった。

    オレは、彼の本を、図書館で借りて、何冊か読んだけど、どれも、スッキリせず、まったく何も入ってこなくて、さっさと返却した。一冊くらいは、買ったかもしれない。『表層批評宣言 (ちくま文庫)』だったかな。

    ゴダールや、タルコフスキーの映画は、オレも観てはいたけど、蓮實の映画論はヤヤこしすぎて、理解できなかった。

    いずれも、理屈っぽくて、イヤミったらしくて、どーでもいいことしか書いていない。

    蓮實重彦は、父親が京都大学の教授で、自身は東大の学長まで上り詰めるし、いったい、どれほどエライのか知らないが、吉本隆明をバカにし、村上春樹をバカにし、熱烈な蓮實ファンだった伊丹十三までバカにしていたらしい。とにかく、いろんな人をバカにしながら生きていた。

    浅田彰と、伊藤俊治、四方田犬彦らが編集した雑誌GSを読んでいたら、当時の、バカ騒ぎのことが書いてあって、
    そこに、『あまりにも、おそ松くんな現代思想』という、赤塚不二夫のマンガになぞらえた人物紹介が載っていて、とても感銘を受けた。

    ちっちゃなお手々にオデンを握りしめて、ケケケッ、リゾームだー、と走って逃げてゆくチビ太が、浅田彰で
    デッカいパンツを履いたオッサンが、文化人類学者の山口昌男
    体中キズだらけで過激派のヘルメットを被って松葉杖をついたピンクのネコは、栗本慎一郎で「ニャロメ!こーなったらもうヤブレカブレだ」とか言ってんの。
    ウナギとも犬ともつかぬ、ヌエのような存在で、蓮實重彦の劣化版コピーだったのが、蓮實重彦ファンのウナギ犬、四方田犬彦であった。蓮實ヒゲまで、マネしてたらしい。
    天才赤ちゃんハジメちゃんは、中村元なのであった。

    「シェーっ、ミーは、おフランス帰りのバルト主義者ざんすー」
    と、シェーのポーズをキメている、その人こそ、蓮實重彦であった。

    トドメは
    「これでイーのだ!」
    と断言してしまう、腹巻きをして鼻毛が飛び出したバカボンのパパ、吉本隆明。

    蓮實重彦の、第29回三島由紀夫賞の、怒りの受賞会見を、チラっと見たときは
    「あ、でしょうねーーー」
    としか、思えなかった。

    いかにも、あーゆーメンドくさいことを言いそうな奴なんだよ。
    あああハスミらしいなあああー、ハスに構えてるなあああーーーって、思った。
    彼が、ナニに怒っていたのか知らないけれど、全く、どーでも良いとしか思えない。

    それより、この本を手にとって驚いたのは、裏表紙で、蓮實がウマそうに煙草を吸っていること。
    東大の学長までやった奴が、この齢になるまで煙草、吸ってんのか?マジか?バカなのか?
    今どき、田舎のヤンキーでさえ煙草なんか吸わないぞ?
    よく、この年まで、生きれたな、と、愕然とした。
    そう言や、駅でベンチに座ってた時、煙草をくゆらせていたのかもしれない。よく憶えてないけど。

    まー、どーでも良いかあ。

    よーするにオレは、蓮實重彦なんかには、なんの興味も無く
    それ以上に、筒井康隆には興味が無いんだけど

    しかし、なぜか、その日、この本と、図書館でバッタリ出会ってしまい、なんとなく立ち読みし、そのまま借りてしまい、帰ってから、フトした瞬間に本を広げてみたら、イッキに読んでしまった。

    三島由紀夫賞の授賞式の前に、蓮實が、筒井康隆のコメントが気に入らないから文句を言うと予告して、そのとおり、怒りの会見になったとか。

    蓮實と筒井の、微妙なやり取りは、クセ者どうしの、神経戦みたいな、めんどくさすぎる言葉の応酬が繰り返されてゆく。

    大江健三郎については、オレにとっては同時代の作家でもなく、よく知らないし、内容が難しくて、読みにくいなあとは思うけど
    『「雨の木」を聴く女たち』は、好きだったなあ。
    外は雨が降ってて、オレは図書館で読んでて、感性が新しくて、ハッとさせられたのを覚えている。
    途中で、ギンズバーグが出てくるところが好きだ。
    『新しい人よ眼ざめよ』も好きだった。
    新しい時代の若い作家より、ずっと、新しい感性じゃないか、と直感的に、思ったんだよね。
    原発のデモとか、オレもよく行ってたんだけど、彼も、アチコチのデモに参加してたし。どこかですれ違う可能性もあったんだけど、直接会う機会はなかった。

    蓮實と筒井にとっては大江健三郎は同時代の人だし、喋ることがイッパイある。
    二人のやりとりは微妙にスレ違いながら、お互いに、悪意のあるジャブを繰り出したりしながら、言葉の応戦が続いてゆく・・・・・

    でも、彼らの、亡くなってしまった、一人っ子の話題になると、呼吸がピッタリと重なり合う。
    とても痛ましい、やり取りだ。

    蓮實重彦が、自分から、子供のことを話し始め、筒井康隆は、「お子さんのことは承知していたが、お話が出るまでは、こちらからは触れないでおこうと決めてしました」と言う。

    長生きをすれば、自分より先に、周囲の者が亡くなっていく、ということはありえることだけど・・・・・うーーーん、でも、これは、とても辛かっただろうなあ、と思う。
    どちらの一人っ子にも、子供がいた(?)らしいから(不確かな情報かも)、その点は、大きな救いなのではないだろうか?
    分からないけれど・・・・・。

    そして、これは、蓮實重彦が、全力でバカにしてコキおろすであろう、凡庸すぎる感想なんだけど

    とにかく、人は、死ぬんだから、DNAを継承し続けることに、微かな希望があるんではないだろうか?

  • ありそうでなかった巨匠同士の組み合わせ。
    大江健三郎をテーマにした対談、双方の小説(「伯爵夫人」「時をかける少女」)への書評、半年ほどの期間の往復書簡で構成されている。

    筒井康隆が大江と仲がよい(=お互いに認め合っている)ということは何となく知っていたが、蓮實重彦が大江をこんなに高く評価し尊敬しているとは知らなかった。若い頃初期の小説を何冊が読んだきりになっていた大江の作品を、また読んでみなくてはと思った(読みたくなった、ではなく、読んでみなくては、なのだが)。

    蓮實が筒井の作品で一番好きなのが「時をかける少女」だというのも意外だった。どこが好きなのかは、書評を読んでも(相変わらず)よくわからないのだが。

    往復書簡では、文学論を闘わせるよりは(映画の話は結構出てくるものの)、双方が自分の来歴を相手に向かって紹介・披歴している部分が多く、ちょっとした自伝の趣き。二人とも、都会の学者の家に育ち、文化的な素養を育める環境にいたこと、演劇(観るだけでなく自ら演じる方に)熱中した経験は共通しているが、演劇のほか勉強・スポーツも得意だったスーパー優等生の蓮實に比べ、勉強はできなかったしスポーツには興味がなかったと告白している筒井の対照が印象的だった。
    蓮實が筒井の作品から距離を置いていたことを正直に綴り、筒井がそれに寛容な姿勢を示しているところも好感が持てた(以前はそうではなかったようなので年の功かもしれないが)。

    そして二人の、本人たちも「宿命的」と表現しているつらい共通点、一人息子に先立たれるという悲劇について触れているのを初めて読んだ。ご子息たちはいずれもたった一人の子ども、芸術家として自らの好きな道で活躍し、中年で早すぎる病死を遂げたところまで同じ。自らは長生きし80代後半の今も旺盛に仕事ができる頭脳と体力に恵まれながら、子を先に送らなくてはならなかった悲しさが伝わってきて胸が痛む。

    文中に出てきた双方の著作のうち、未読のものも読んでみたい(こちらは読みたくなった)。

  •  図書館の新着コーナーで目にして迷わず手に取った。
     まさにおふたりの老獪さ、といってもその対照的な老獪さが大変興味深い。まさに毒は毒を持って制すだ。一方、お互い同時代を生きてきて、ここでどこか共通点を見つけようと、お互いが応える素直さは高齢者アルアルだ。
     でも、日本を代表する研究者であり文筆家である元気な後期高齢者の毒(ウィット)に富んだこんなやりとりはまねしたくてもまねできるものではないなぁ。
     そんなおふたりの大江健三郎氏へのリスペクトは間違いないようだ。

  • 対談は面白かったけど、全般に私の知識が追い付かない感じでした。

  • 読み逃してるのが殆どだったので、本になって嬉しい。アプレゲールか。

  • 文芸誌の『新潮』で連載していた往復書簡が目当てで。色々刺激を受け何冊が積んである大江健三郎と蓮實重彦の『伯爵夫人』を読もうと思った。

  • 口の汚い頑固な爺さん2人の罵り合いを期待していたのに、見事にうらぎられる!
    互いに気を遣い合うかの如き美辞麗句の数々!

    それにしても、蓮實さんが「◯◯させていただく」表現を連発していることに、ガッカリしました…。

  • 蓮實氏がこんなに面白い方でしたっけ。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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