ラブレス

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103277224

感想・レビュー・書評

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  • 『嫌われ松子の一生』的な。謎の位牌を握りしめ、死の床についた百合江。彼女の波瀾万丈な生涯を追う。

    生まれは標茶の極貧農家、飲んだくれの父は文盲の母に暴力をふるい、生活もままならないのに子沢山。子守りに明け暮れ、高校進学も叶わず、親の借金のカタに奉公に出され。奉公先の主人に凌辱され、「なんだ、あんなもの突っ込みやがってーー」と強がるも惨め。逃げるように旅芸人一座に飛び込むもやがて一座は離散、歌い手をしながら、女形の宗太郎とその日暮らしの末、第一子(綾子)妊娠・出産。宗太郎の失踪により、別の男性と結婚するも姑にいびられ、夫の借金のカタに旅館でタダ働きをさせられ、第二子(理恵)出産は難産で子宮を失い、退院したら第一子の綾子は里子に出されたのか行方不明に。

    そんな姉 百合江を常に気にかける妹の里実は夫が愛人に生ませた娘 小夜子と、実子 絹子を育ててながら理容師として頼もしく働き…

    飲んだくれの父のみならず、弟たちも卑屈で下品で肉親の情は欠片もなく老いた母に暴力をふるうほどで…昭和演歌調に語られるどこまでも幸薄い百合江という女の生涯。

    里実、作家になった理恵、45歳で思わぬ妊娠をした小夜子が見守る病室に現れた1人の老紳士。
    ザ・ピーナッツの『情熱の花』や、『テネシー・ワルツ』が女たちの人生に彩りを添えて、ラストが美しい。

  • 20190210読了 最初から中間くらいまで重くて切ないが(途中でやめようかと思ったよ)、最後にこんな終わり方もありかなと、ホロッとくる。いわゆる『普通の』生活者がいない。人名と人間関係、文のつながりが引っかかる。ストンと入ってこない。が、一気に読ませる熱量を感じる。

  • 『ホテルローヤル』は直木賞受賞時の話題を記憶しており、なるほど「ラブホテル」が主人公とは珍しや
    泥臭くに落ちそうも、さにあらず、なかなか洒脱でおもしろい短編集だと唸った次第

    そして、長編はいかに?と読んだ『ラブレス』
    姉妹のものがたり
    肉親への愛、連れ合いへの愛、子供への愛

    姉妹の性格が真逆
    能天気な姉としっかり者の妹
    極貧から出発して頑張っても、いい時が少なくて
    めでたしめでたしにはならない
    つつましい庶民で終わってしまう人生

    愛はしあわせか?愛とはなんぞや?
    しあわせな顔をして死にゆく姉を見て
    妹が、娘が、姪がそして元夫が、元恋人が
    それぞれに、こころ突き動かされたのであった

    もちろんこんなふうに波乱万丈ではないけれども
    昭和どっぷりの、もろわたし達世代のものがたりじゃないか
    みんな、悩みましたよ、悩みながら時代を潜り抜けてきましたよ

    と読後感が演歌調になってしまうのでもあった
    文章はしんねりとはしておらず、短編に比べるとむしろそっけない

  • こんなに古い昔のことだったろうか。。。
    確かに平成も23年ともなれば、「昭和」は昔のことには違いない。メールや携帯電話などの機器の発達以前は、もう現代と言うには色褪せて見えるほど遠い昔なのかもしれない。
    なんだかとても古くさい。

    でも、親子関係や貧困や、地方の閉鎖的な環境から出て行こうとする気持ちなども、平成23年の今から振り返ってみた時、そんなに昔のことになっているのだろうか?今はもうないものなのだろうか?
    なんだか、とても遠い別世界の話のように感じる。

    最初のほうは、「嫌われ松子の一生」を思い出されるような展開で、ジェットコースターノベルでいくのかな、と思ったけれど(そして事実一気読みさせられることになったけれど)、それだけではなかったようだ。

    姉妹関係が3組と、従姉妹という擬姉妹が1組、かつ母娘が3組、かつ異母姉妹、異父姉妹…と複雑な家族関係で、関係を把握し続けるのがしんどかった。何度も立ち止まり、ええっと彼女と彼女の関係は…と、思い出し確認しないとならなかった。
    多重構造による効果を狙ったのだろうけれど、もう少し整理して絞ってもよかったような気もする。名前がまた輪をかけて覚えづらく難儀した。
    時系列も、複雑にしている一因ではあり、こうする必要があったのかな?と疑問。
    また小夜子の妊娠という設定もあまり生かされておらず、不要だったのでは?と思う。

    舞台のシーン、歌のシーンはエキサイティングで、筆も活き活き滑るように書いていたのではないかと感じた。”けれん”がよく出ていると思う。

    しかし登場人物に作家としての心情を語らせるのは、あまり必要性を感じなかった。むしろ興ざめる。
    少々の不合理と(最後に現れるあの人は、なぜ居場所を知っていたの?)、少々の文章上のひっかかり(これはひらかないで漢字のままでいいのでは?)。

    まあ確かに力強く、後味は決してわるいものではないけれど、演歌的な感じが残る。
    いずれにせよ、”女の人生”の1パターンでしかなく、これだけじゃないよと言いたい。
    普遍性までは掘り下がってはいない、と思います。

  • なんだか嫌な日、反省の日。

    ってな事で、桜木紫乃の『LOVE LESS ラブレス』

    ほんと桜木紫乃さんの作品はどっぷりと心の奥底に沈めてくれる。

    親子3代の女達による生き様、生き別れ、壮絶な一生の終幕

    ホント凄い、現実にある話みたいで震えた。

    その日暮らしで昨日の事は捨て去って生きてく……。

    わしもその日暮らしを改めて、先を見て生きて行かんとね。

    2018年25冊目

  • 百合江と宗太郎の結末に、涙が浮かんだ自分に驚いた。愛に飢えているのは私かもしれない。

  • ☆3.5

  • 辛い話だったな。

  • 勝ち組、負け組という価値観がうまれたのは何時だったのだろうか?
    その価値観の愚かしさ。
    綺麗事で済まない人生を謳う桜木紫乃。

    二番目のダンナ。あんたは私が許さない!

  • 凄いな。何ていうか色んなものが詰まってる。北海道開拓、そして貧しさ。それにしても勝手に子供を売ってしまうとか許せない。でも昔はそうだったんだろうな。それでも百合江は強く生きてた。

著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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