思い出の作家たち: 谷崎・川端・三島・安部・司馬

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103317067

感想・レビュー・書評

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  • 先日NHKで、エドガー・アラン・ポーやレイモンド・チャンドラーやアガサ・クリスティを特集した番組を連続でやっていて(録画したけれどまだ見ていませんが)そのあとにドナルド・キーンが特集されていて、これも実は後半部分をチラッと見ただけですが、あれっ、と思ったものです。

    この文脈からいくと物故者だということになりそうですが、でも、まだ生きておられ・・、いえ、たしか去年か一昨年に亡くなられた記憶がありますが・・・・。

    調べてみると、何と言うことでしょう、まったくの私の勘違いでした。亡くなられたのは、一昨年8月26日ですが、それはエドワード・G・サイデンステッカーで、ドナルド・キーンは86歳でご存命です。たいへん失礼しました。

    共に私に、日本文学の何たるかを日本人以上に教えて下さった方です。そんな大恩人に対してあまりにも近況を知らなさすぎました。

    最初に読んだドナルド・キーンは何だったのか、今となっては確定できませんが、源氏以外はほとんどすべて読んでいるはずです。

    私は源氏物語を、古くは与謝野晶子が、そして谷崎潤一郎が円地文子が、田辺聖子が瀬戸内寂聴が、そしてかの橋本治が現代語訳を出していて、その魅力に痺れている愛好者が多いのは知っていますが、どうせ単なる淫乱助平男の乱交乱痴気騒ぎ物語にすぎないもの、くらいにしか思っていません。たぶんこのまま一生読むことはないでしょう。

    そんなことはともかく、ドナルド・キーンのドナルド・キーンたるゆえんは、何と言っても、日本の古典から日本的美意識の充満した戦後文学までを評価し紹介した、なんてことではなく、ひとえに極めて特異な安部公房の優れた文学性を読み取り、日本のみならず世界的に評価したことにあると思います。

    これは即物的な、単に英語に容易く翻訳できたからというのではなく、日本的なるものにドップリ浸かっていた60年代70年代の文学において、始動するSFに先んじて、孤立無援の孤高の闘いをしていた安部公房を、世に出した埴谷雄高や花田清輝と共に、優れて先験的な批評眼の持ち主だと思います。


    ・・・・・

著者プロフィール

1922年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学名誉教授。日本文学研究者、文芸評論家。2011年3月の東日本大震災後に日本永住・日本国籍取得を決意し、翌年3月に日本国籍を取得。主な著書に『百代の過客』『日本文学の歴史』(全十八巻)『明治天皇』『正岡子規』『ドナルド・キーン著作集』(全十五巻)など。また、古典の『徒然草』や『奥の細道』、近松門左衛門から現代作家の三島由紀夫や安部公房などの著作まで英訳書も多数。

「2014年 『日本の俳句はなぜ世界文学なのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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