生き延びるための世界文学: 21世紀の24冊

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103323228

作品紹介・あらすじ

名作は世界中で日々生まれ、その大半はまだ訳されていない――。タオ・リン、アレハンドロ・サンブラらの新鋭から、J・M・クッツェー、トニ・モリスンらの大御所まで。世界文学の「いま」を伝える、最速・最強のガイド、待望の第二弾。文句なしに面白い21世紀の24冊の紹介に加え、著者自身の世界文学との出会いを明かすエッセイ、ジュノ・ディアスの未邦訳短篇「モンストロ」を特別収録。

感想・レビュー・書評

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  • 「はじめに」がとても良かった。
    「言葉には、人の心を鎮める力がある。それは歌になり、詩になり、物語となるだろう。心の中にある、夜の密かな、ほとんど聞こえないほどのか細い声が言葉によって拾い出される。そして自分ではない他人、しかも自分とは異なる言語を使う書き手の発した言葉でも、それが生の真実を捉えているとき、僕たちはそこに自分を見る。地球の裏側で、かろうじて一分一秒でも生き延びるために探り取られた言葉が、なぜか僕たちに力を与える。」
    「文学は、見ず知らずの人々の心の中にまで降りていくための強力なツールだ。見た目も言語も、背景となる歴史も違う人々の心の中にさえ、僕たちは物語を通じて入って行ける。そして、同時代を生きる世界の人々が、自分たちと同じ問題に苦しんでいることに気づく。心の底から信じられるもののない者が、いったい何を頼りに生きていけばいいのか。」

  • 読んでいる間、非常に辛かった。この24冊を翻訳本や原著で読む体力も能力も今の私にはないと自覚した。しかし、この本があったからこそ、この24冊の本とその著者らを知ることができたし、文学にできることは何なのかについて考える機会を得た。

  • 本を紹介する本を読むと、たくさん知らない作家がいて、知らずにいたことを残念に思うことが多いのですが、この本もそんな1冊。さらに、未だ翻訳されていない本も紹介されていて、読みたいキモチがさらに煽られるという不条理…なかなか死ねません。

    ルイーズ・アードリック 円い家
    メアリー・ゲイツキル ヴェロニカ
    エドナ・オブライエン 聖者たちと罪人たち
    シャーマン・アレクシー 飛行
    これらをぜひどなたか訳してください…
    他は、何とかなりそうなので。

    著者の子供時代、高校までの思い出コラムも、良かったです。

  • 重かった~。読み始めたのはだいぶ前だけど、本の数章ずつしか読み進められんかった(苦笑)。作者の場合、対談形式のものだと、熱量が二分・三分される分、それが読みやすさとしてフィードバックされるから(自分の場合)、興味深く読み進めることが出来るのだけど、本作のようになってくると、重みに耐え兼ねてしまう。一冊の本に対して8頁。熱量マックスの持論が展開されるから、そう簡単に向き合えるものではない。そう、本作は、原著にあたってでも対象作品を読み、自分の意見でガッチリ武装した上で、徹底的に意見を戦わせる読者向けの一冊だと思う。そういう意味では自分なんか甘ちゃん過ぎて、這う這うの体で逃げ出したくなった次第なのであります。

  • 何冊か読んでみよう。

  • タイトルの惹句はともかく。原文を読む選択肢がなければ未訳がどれだけ翻訳されるかが関心事になる。エヴンソンは遁走状態が高評価だったよね?ヘモンのネイティヴが使わない英語は日本語にできる?都甲さんには頑張っていただきたいな。

  • 「はじめに」を読んで、自分が本を読み続ける理由が少しわかった気がする。

  • 毎日鬱々としている私に、希望の光を与えてくれた。今すぐ成果が現れなくてもいい、できる範囲で生きるしかない。偉大な先人に続いて輝くスターが今は見当たらなくても、今、精一杯表現するという努力が本当に貴重だということに気が付いた。町田康の書評が素晴らしい。

  • メモ

    2000年以降に発表(英語で)された作品を対象に24人の作家を選び、年齢の若い順に紹介している。だから、初めの方は、ほとんどなじみがない。後半になると、ジュノ・ディアスだとか、『ブルックリン』のコルム・トビーンだとか、顔見知りの作家がちらほら登場する。

    そんななか未読だが、ジェームズ・ソルター作『最後の夜』の書評が気になった。岸本佐知子編訳『変愛小説集』所収というので、さっそく読んでみることにした。

    ジュリアン・バーンズ『終わりの感覚』についても触れていた。この二編については気が合いそうな気がした。

  • 著者があげる21世紀の24冊の内、読んだことがあったのは2冊(Julian BurnsのThe sense of an endingとJ.M. CoetzeeのThe Childhood of Jesus)のみだったので、総合的な判断はできないものの、この2作品の書評だけでも多いに感銘を受けた。
    消された過去ーJ.M. Coetzee
    著者は、まずCoetzeeと2013年の東京国際文藝フェスティバルで話した印象から始め、何故、この作品にThe Childhood of Jesusというタイトルがつけられているのか?について解説する。
    そして、本作を「現代人において信じられるものとは何か、という原理的な問い」を続けて来たCoetzeeの思索の結晶と位置づける。

    水の記憶ーJulian Barnes, The Sense of an Ending
    個人的にも好きな作品なので、都甲さんも絶賛していてくれて嬉しかった。「見事な文章と人間観察力、シリアスな場面で不意にはさまれるユーモア、ミステリー顔負けの息もつかせぬ展開、しかもそれを、平凡な男の障害を扱う作品でやりとげたこと、どれをとってもバーンズの素晴らしさは明白である」

    本書の最後には2012年6月New Yorkerに掲載された
    未邦訳短篇JunotのDiaz Monstroが収録されている。ドミニカ・アメリカ・ハイチ間の人種問題・階級/差別感情など深刻な内容を明るい口調で扱う作品で、翻訳も読みやすい。

    また、本書には、都甲氏がどのように世界文学と出会ってきたのかのエッセイも3本、掲載されている。
    たまたま最近、小野正嗣さん・平野啓一郎さんの故郷についたエッセイ(あるいは対談)を読んで、都会でない場所(=文学に逃避するくらいしか楽しみがない場所)で多感な青春期を過ごすことが、素晴らしい作家・翻訳家・文筆家を生み出す要因の1つといえるのではないか?と思い始めていたところ、本書の著者の都甲さんも高校時代に親の都合で周囲を山に囲まれた金沢に移り、逃げ場の1つが文学だったと吐露していて、なんとなく得心がいった。

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著者プロフィール

翻訳家、批評家、アメリカ文学者。早稲田大学文学学術院教授。 一九六九年、福岡県に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。
著書に、『偽アメリカ文学の誕生』(水声社)、『 世紀の世界文学 を 読む』(新潮社)、訳書に、C・ブコウスキー『勝手に生きろ!』(河出文 庫)、ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』、同『こうし てお前は彼女にフラれる』、ドン・デリーロ『天使エスメラルダ』(共訳、い ずれも新潮社)など多数がある。

「2014年 『狂喜の読み屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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