正欲

著者 :
  • 新潮社
4.14
  • (2271)
  • (2001)
  • (946)
  • (183)
  • (67)
本棚登録 : 24401
感想 : 2325
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103330639

感想・レビュー・書評

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  • 朝井リョウ先生の作品は沢山読んでいるわけではないが、切り口がシャープというか、ええ!?っと思わされる角度から物事を描かれるなと思う。

    この作品は、全く知らなかった、知ろうとしたこともない向こう側の世界の物語と感じたが、実は知らないだけで、そういう人もそれなりの数存在しているのかも。。。

    多様性って、こう書かれると凄く難しい問題なのだなぁ。。。
    かっこよく、私何でも分かってますって多様性を口にする人間。うん、居そうだな。。。

    八重子の考え方、押し付け方??イライラするような形で描かれているが、実は私も八重子要素あるんじゃないか?なんて気もしてきた。

    朝井先生の作品はそうなんよ。。。
    自分の性格の悪いところを見つけられる気がしてしまうんよ(~_~;)

    この本は私には難しかったけど、朝井先生の作品には毎回大きな気付きがあるな。。。

    • bmakiさん
      naonaoさん

      寝不足ですか?
      お休みの日は、ゆっくり美味しいものでも食べて、美味しいお酒を飲んで、時々自分を甘やかせてあげてくだ...
      naonaoさん

      寝不足ですか?
      お休みの日は、ゆっくり美味しいものでも食べて、美味しいお酒を飲んで、時々自分を甘やかせてあげてくださいね(*^^*)

      私も今日は朝からダラダラだらけて、自分を甘やかせまくってます(笑)
      2022/09/25
    • naonaonao16gさん
      bmakiさん

      昨日は飲み会だったのですが、眠かったわりにいざ寝ようとなるとなかなか寝付けずで...

      今日の夜は少しゆっくりできるといい...
      bmakiさん

      昨日は飲み会だったのですが、眠かったわりにいざ寝ようとなるとなかなか寝付けずで...

      今日の夜は少しゆっくりできるといいのですが。
      2022/09/25
    • bmakiさん
      naonaoさん

      なるほど。。。
      時々飲み会の後、寝付けないって時ありますね。。。
      神経が興奮していたのかもですね。

      今日は...
      naonaoさん

      なるほど。。。
      時々飲み会の後、寝付けないって時ありますね。。。
      神経が興奮していたのかもですね。

      今日はゆっくり休めますように(*´꒳`*)
      2022/09/25
  • 衝撃的…
    “読む前の自分には戻れない”の帯の一言に、納得です。
    ガツーンっ ときました。
    自分の想像力の及ぶ範囲とは、こんなにも狭かったのかと痛感させられました。

    性癖が特殊すぎる人たちが、誰にも言えずに苦しんでいる。
    家族にも友達にも隠して、なんとか誤魔化して、「マイノリティ」なんてお洒落な横文字で括れるような、そんな甘い苦しみじゃない。
    理解されたいと思えないくらい、受け入れられることをすでに諦めている。
    だからこそ、「多様性」「繋がりが必要」などと理解者のつもりになって語り、勝手に寄り添ってくる人に殺意さえ覚える。
    大也の八重子への叫びは、じっくりじっくり読んだ。
    私は、八重子のような人が大嫌いだ。

    私自身、私を分かったつもりになる人が嫌い。
    簡単に分かろうとする人も嫌い。
    そういう人、本当に想像力が無いなとうんざりしたりして考えないようにする。
    本当は、あなたのその狭い世界で私を分かろうとするな、あなたの「普通」を私に押し付けるな、自惚れるなとはっきり言いたい。
    そもそも、誰かを全て理解するとは到底無理なことだ。
    私は適度な距離感を保ってほしいのだ。

    でも、誰かにとっては私も八重子なのかもしれない。
    この物語、私のこの程度の不満なんて話にならない。
    どうしようもなく救いが遠い。
    マジョリティたちがつくった「当たり前」の世界で、正体が知られれば生きてはいけない。
    当たり前・普通・定められた法律…
    理解に及ばないとされれば、「異常者」として処分される。
    社会的に抹殺され人権を失うだろう。
    無遠慮に晒されるのは目に見えている。

    「多様性」という言葉は、今は小学生でも当たり前のように使う言葉ですが、私はもう軽々しく使えません。
    本当は理解していないくせに、「多様性」という言葉で済ませていたことが結構あるな、と。
    「今はもう多様性の時代だからね」なんて無意識に言えるのは、マイノリティもちゃんと受け入れますよ、時代の流れに対応してます、なんてわかったつもりになっているだけなわけで。
    『自分はマジョリティ側にいて、マイノリティを受け入れる立場にいる』と無意識のうちに上から目線でいたことを指摘されてしまい、私って傲慢だなとはっとさせられた。
    いかに物事の本質を見極めていないまま「多様性」という言葉を無意識に使っていたか。
    それは、「無神経な人」そのものだ。
    価値観が大きく変わる、そこまでの物語だった。

    それから、もう一つの私の知らない世界、YouTubeのコメント欄があんなふうに利用されているなんてっ!!
    考えてもみなかった、これも衝撃でした。

    • みんみんさん
      わかりやすいレビュー\(//∇//)
      ちょっと内容が知りたかった〜♪
      わかったような友達!ハイ嫌いです!
      あっ友達にならないか…知り合い止ま...
      わかりやすいレビュー\(//∇//)
      ちょっと内容が知りたかった〜♪
      わかったような友達!ハイ嫌いです!
      あっ友達にならないか…知り合い止まりね笑
      ざっくり理解してるのは姉妹くらいかしら?
      親はたぶん半分くらい笑
      2023/04/21
    • あゆみりんさん
      みんみんさん、コメントありがとうございます。
      この本、
      自分の想像が及ぶ範囲でしか語れないくせに、自分は「多様性」に対応してる人間と思ってい...
      みんみんさん、コメントありがとうございます。
      この本、
      自分の想像が及ぶ範囲でしか語れないくせに、自分は「多様性」に対応してる人間と思っている人が、一番たち悪いぞ。
      っていう話だと思いました。

      昨日、ひまわりめろんさんのレビュー読みましたよ。
      めろんさんは、たぶん分かってるつもりになってる人じゃないんだと思いました。
      とても冷静に読んでいらっしゃる。
      「多様性」ってものに取り憑かれている人ほど、読後に色々と思ってしまうのかと。
      心あたりがあるから… …(≖ᴗ≖ )ニヤリ

      2023/04/21
    • みんみんさん
      メロリン賢いし柔軟そうだもの〜
      ただBLだけは読んでくれない( ̄▽ ̄)笑
      メロリン賢いし柔軟そうだもの〜
      ただBLだけは読んでくれない( ̄▽ ̄)笑
      2023/04/21
  • この種はどこから飛んで来たんだろう?

    謎を解き明かすには朝井リョウさんをもう何冊か読まないといけないような気がします

    『正欲』です

    性欲とかけてるのかな?ってそんな単純なこと違うよなと思ったらそんな単純なことでした

    性欲って正しい欲だよねって話なのかな?って思ったら、もちろんそんな単純な話じゃありませんでした


    でもなんかちょっとズルいって思っちゃったんだよね

    「正しい」って大多数の人が無意識下に当たり前って思ってること

    と定義したとき、その大多数の側に属する人たちがたくさん出てきて、中でもその大多数の人たちを守る正義を司る検事をちょっとやな感じに描くことで、大多数の正しいを大多数から外れている人たちに押し付けるのは正しくないことなんだ、大多数から外れてもそれぞれに正しいんだってところに誘導されてるような気がしてしまったんよ

    大多数の正しいから外れている人たちに、大多数の正しいを押し付ける行為は正しくないってことを押し付けられてる気がしたんよね

    言葉遊びみたいになっちゃったけど
    正しいの押し付け合いになってない?
    正しいのがっぷり四つ
    正しいの尻相撲

    うーん

    正しいってなんだか暑苦しい

    • ひまわりめろんさん
      作中ちょっと当たってるシーンもあるっていうね
      さすが土瓶師匠w
      作中ちょっと当たってるシーンもあるっていうね
      さすが土瓶師匠w
      2023/04/19
    • みんみんさん
      申し訳ないけど…多様性あんまり考えず生きてるからなぁ( ̄▽ ̄)
      申し訳ないけど…多様性あんまり考えず生きてるからなぁ( ̄▽ ̄)
      2023/04/19
    • ひまわりめろんさん
      あ、5月29日に文庫版出るってさ
      まぁ、おびーは新潮社の営業も兼ねてるからすでに知ってるだろうけど
      あ、5月29日に文庫版出るってさ
      まぁ、おびーは新潮社の営業も兼ねてるからすでに知ってるだろうけど
      2023/04/21
  • 息継ぎしたくなった一冊。

    大波のように襲いかかってくるような数々の言葉に何度も息継ぎしたくなる苦しさを感じた。

    人それぞれ…わかる。
    多様性、うん、当たり前。

    なのになんだか心が落ち着かない。

    たぶん読むほど自分が思っていた多様性の愚かさが次々に降り積もってくるから。

    まるで自分の心がアメーバになった気分。
    四方八方うねり出す。
    ストンと落ち着く場所、酸素を求めてうねり続く感覚。

    何が正しいかなんて答えはない。

    ただ多数派か否かなんて関係なく、とある感情を持っている人が今たしかにいること。
    そのことだけは理解できたかな。

    • くるたんさん
      naonaonao16gさん♪ありがとうございます♪

      うん、これを受け入れるのは簡単にはいかないですよね。

      黒い方の浅井さんはグリグリな...
      naonaonao16gさん♪ありがとうございます♪

      うん、これを受け入れるのは簡単にはいかないですよね。

      黒い方の浅井さんはグリグリなんですね(° ꈊ °)✧˖°
      言葉選びとか、表現のセンスが素敵だなって思いました。
      オススメ作品ありがとうございます♪
      またチャレンジしてみたいです。

      naonaonao16gさんの丁寧に作品に向き合われたレビュー、毎回素敵です¨̮♡
      2021/05/21
    • 勝又健太@炎上商法さん
      他の方のレビューも読んでいますが、テーマが多様性なんですね。
      今の私のテーマでもあるので、ぜひ読んでみたいと思います。
      他の方のレビューも読んでいますが、テーマが多様性なんですね。
      今の私のテーマでもあるので、ぜひ読んでみたいと思います。
      2021/05/23
    • くるたんさん
      勝又健太@炎上商法さん♪コメントありがとうございます。
      読み応えのある作品でした!ぜひぜひ!
      勝又健太@炎上商法さん♪コメントありがとうございます。
      読み応えのある作品でした!ぜひぜひ!
      2021/05/23
  • 苦しかった。
    一般的な「男女間の恋愛」が成り立たない人たちの苦悩をこれでもか!これでもか!とてんこ盛りにした感じ。

    冒頭の詩が読み手をぐんと惹きつける。
    「明日、死にたくない」と思って生きる、その事に無自覚な人達。
    そんな人達が大多数を占めるこの世界。
    その中で「今日、何とか死ななかった」と思いながら生きる。この先何十年と。

    そしてその辛さは誰にも、到底理解されない。
    たった一人で季節のない世界を通過していく。
    想像すらしたことがない感情が、そこには溢れていた。


    ---------------------------------

    最初の「児童ポルノ所持を摘発」という事件。
    容疑者3人の名前が小説の中に出てくるたびにドキっとするが、ある瞬間気付く。

    この人達は子供が好きなんじゃない、と。

    彼らの欲は、世の中にあまりにも認知されていないため、全く違う罪に当て嵌められ、裁かれようとしている。
    しかもその事は、警察にも弁護士にも説明できない。到底理解される気がしない。

    もうこの絶望といったら無い。

    しかし夏月と佳道はこういう風に自分が破滅することを想定しつつ生きてきた訳で
    その生き方を思うと切なくなった。

    「居なくならないから」と取り乱す事なくお互いに伝え合っている彼らをみて
    この生き辛さしかない世界で、本当に出逢えてよかったねと思った。


    ---------------------------------

    この本を読んで「自分が想像もできない事」を認めることの難しさを知った。
    安易に「わかる」「理解できる」と言えない程の深い傷と憎しみを知った。

    ただそれを知った上でとても難しい。
    彼らのことを知りたい、当然幸せになるべきだと思う反面
    じゃあ自分や家族が彼らの性の対象になることがあったら、危害が及ぶことがあったらと思うと、そこは無理。受け入れ難い。
    到底、受け入れられないのだ。
    その態度が彼らを傷つけていたと知っていても。

    繋がりだ、絆だといっても、所詮は自分とその周りに不利益が生じない場合に限る。
    人間同士なんて所詮その程度だと
    嫌というほど突きつけられた。

    ただし絶対にこうはなりたくないと思う姿は
    頭から彼らを存在しないものとしたり
    異端だと決めつけて批判すること。

    到底受け入れられないことがあったとして
    相手をどれだけ自分と同じ感情がある人間なんだ、と思えるか
    とても難しいことではあるけども。

    ---------------------------------

    この物語の中で【多様性】の言葉が持つ薄っぺらさ、みたいなものが注目されていたけど
    その言葉がよく聞かれるようになったこと自体は良いことのように思う。

    そこに確かにあるものを「無い」と決めつけていたのが大多数だったのが
    「有る」と認められる人達が増えてきたということだ。

    色んなものが「有る」と認められていく世の流れ。それはこれから加速する。

    まずは「有る」ことを余計な先入観なく見つめられるようになりたい。

  • 自分のもっている"多様性"という言葉の薄っぺらさを目の当たりにさせられ、LGBTQの先にある視座を考えさせられる何とも重々しい物語。

    冒頭、児童ポルノで逮捕される容疑者達の記事があり、先に終着点を見せられる系の展開。

    中盤くらいまでは何故この主人公達の物語であの結末に辿り着くのか全く結びつかない。
    何となく心に陰があるのは見て取れるのだが、それが何なのかは明かされない。

    その後明かされる水に性的興奮を覚えるという特殊性癖を持つ者達の悩める人生。
    そこからはマジョリティが認める範囲のマイノリティだったり、選べる選択肢があるように見えて選べないマジョリティの辛さだったり、正解がなく、結局どうすべきかに行き着けない問題提起をされ、頭が飽和状態に。

    なんとも悲劇的かつ救いがない結末だが"いなくならないから"で繋がれた2人の絆が淡い光なのかなと感じた。

    ブクログのブックリストに多くの方が登録していたのと本屋大賞ノミネート作品ということで『桐島、部活やめるってよ』以来の朝井リョウを手に取ったが、なかなかヘビーな読書体験でした。

  •  著者の作品は、デビュー作「桐島、部活止めるってよ」以来読んでいない。この正欲が黒版で、「スター」が白版だということを知らなかった。今でも何故分冊されているのか知らない。

     そもそも「正欲」という熟語はありません。造語なら、何なのというところから疑問を感じていた。(※本書に答えが書いています)

     単純に、帯の文句に「生き延びるために手を組みませんか」に釣られて作品を手に取った。サバイバル小説かと連想されるのも無理はない。元々著者の作品は好き嫌いが明瞭に分かれているらしい。しかし僕はこの作品を興味深く読ませていただいた。

     プロローグは、著者は読者に或る命題を出す。それは、「明日、死にたくない」とはどういう状態の人たちなのでしょう。という具合に!それから、事件を説明する新聞の特集記事「『児童ポルノ』悪魔はあなたのすぐそばに」に登場人物が逮捕されたことを示す。
     容疑は、“パーティ”に参加する仲間のコミュニケーションの場に「小児性愛者」が潜り込んでいたという衝撃的な事実だと書いている。
     児童ポルノ“画像と動画”を所持していたという理由で次々と容疑者が明るみに出ることになった。物語の進行は時系列に説明し、登場人物が語り始めるのです。

     小説の中で問題になったのは、特殊性癖で著書では説明していないが、性的指向で分類されています。それは異性愛・同性愛等々全部で7つあるそうです。その中で対物性愛は、対象が人間又はその他の動物ではありません。
     報道で取り上げられるのは〇〇泥棒で、下着に異常な興奮を覚える方、2013年には、女性の自転車のサドルを2百台も盗む男もいたという。
    何とも言えない妄想性癖の窃盗犯です。しかし、この小説は他の物です。

     ネタバレになるので書けませんが、法律で縛るのは難しい内面的なものが問題になるのです。どうせ説明しても分かってもらえないという諦観が、登場人物が問題の本質を伝えられないのではなかろうかと思いました。逆にメディア等で、与えられた情報だけを鵜吞みにしても誤解してしまう。
     読書を通して本質を見極める努力が大切ですね。
     大丈夫です。「いなくならないから…。」
     実におもしろい。

  • 朝井リョウさんの本は読んだことがありませんでしたが、インターネットで見かけた、オンリーワンのつらさに関する記事を見て、自分の想像力のなさを、見せつけられた気がしたのを覚えています。

    多様性、ダイバーシティという言葉はよく聞きますが、全部救えるほど、両手は大きくなくて、どうしたって掬った水は溢れてしまう。

    わかり合おう、と言いながら、許容範囲を広げようのように使われて、「でもあなたの「それ」は違うから」という声が聞こえてくる。

    きっとこの本は、そんなテーマを持って生まれた本なのだろう、と私は思います。

    冒頭の事件を見て、あぁ、そういう本なのか、なんて思っていましたが、読んでいるうちに、彼らの頭の中を見ているうちに、単純なことではない、という事実を知らされます。

    マイノリティの受け皿は、これからもどんどん広がっていくと思います。
    ただその受け皿が広がっても溢れていく人がいる。

    そのとき、受け皿は「あなたは異常者」だと、何度も突きつける暴力となるのです。

    -----

    読んでいるうちに、文章が主人公たちの叫びのように聞こえてきて、時間を忘れて読み進めてしまいました。

    今まで読んだ本の中で、誰ともテイストが違っていて、そして、自分と年齢が近いので、ここまで考えられることに、ちょっと憂鬱な気持ちになりました。

    しかし、自分よりも、ずっと優れている人間がいるという現実は、明日への活力になる気もします。

  • 朝井リョウさんは3作品目だが、これまで短編集ばかりだったので長編は今回が初めてだった。

    いやぁ、これはディープ過ぎる・・・
    読後あまりの破壊力と味わったことの無い衝撃で暫し放心状態になった。更に、読後レビューに辿り着くまで頭がグルグル掻き回され続けた。


    私自身、日本で生まれ日本で暮らしマジョリティとして当たり前に生きてきた。けれど、一歩国外に出ればマイノリティとなることがある。例えば無宗教が圧倒的に多い日本人だが、宗教信者の多い諸外国からみればそれはマイノリティに他ならない。母体が変われば容易にその立場も変化することがある。
    そういった場面で、居心地の悪さを感じたことがある。自分を全否定された様な感覚になった。当たり前と思っている価値観をぶつけられる圧力と違和感。仮にこれが日常となったらどんなに生きづらいことだろうと思う。

    本作はいわゆる「性的マイノリティ問題」を扱った作品。
    特殊な性的欲求をもつ佳道と夏月。
    2人は社会の一員として生きるために夫婦となり、『繋がる』という手段をたよりに自分たちが生きることを肯定しようと試みるのだが、それすらも圧倒的マジョリティの中では許されない。
    本来そこにある真実すら、世間から事前に受け入れ拒否されている。読んでいる間ずっと重苦しくて逃げ出したい心境に駆られた。

    「明日、死にたくない」という大前提のもとに成り立つ世界。当たり前過ぎて自覚すらしていない人の隣で、その世界とは線を引き、ほっといて欲しいと願いながら生きる人がいる。でも、社会はほっといてくれない。
    これは難しい問題だと思う。
    私ももしかしたら無意識に加害者となっていたことがあったかもしれない。

    近年、『多様性』という言葉をよく耳にするようになった。本作を読むと、軽はずみに口にしてはいけない言葉の様な気すらしてきた。
    確かに、多様性といっても自分たちの受け入れられる範囲内、或いは世間のマジョリティからの理解が得られそうなものだけを振り翳して受け入れることに満足しているのかもしれない。
    理解の範疇を超えたものは、危険因子と見做され排除しようとする。社会秩序を保つために、確かにそういった局面もあると思う。

    でも、そもそも私も含め大多数の人は、圧倒的少数派のマイノリティを知らないのだと思う。
    その存在も、その世界も、そこから見える世界も知らずに生きている。
    知らないものは恐怖だ。

    だからといって恐怖だから知る前に蓋をするのではなく、知ろうとすること。
    自分の価値観を疑ってみること。
    もしかしたら、自分もそちら側になる可能性があること。
    明確な答えはいくら考えても出てこなかったが、先ずは「知る」ことが、変わる一歩になるんだと思う。

    本作で受けた衝撃波が「知る」きっかけに繋がることこそ、作者が読み手に託していることなのかなぁと感じた。


    以下、印象に残ったフレーズ

    「生きていくために備わった欲求が世界の方から肯定される。性欲を抱く対象との恋愛が街じゅうから推奨され、性欲を抱く対象との結婚、そして生殖が宇宙から祝福される。そんな景色の中を生きていたら、自分はどんな人格で、どんな人生だったのだろうか。」

    「まとも。普通。一般的。常識的。自分はそちら側にいると思っている人はどうして、対岸にいると判断した人の生きる道を狭めようとするのだろうか。多数の人間がいる岸にいるということ自体が、その人にとっての最大の、そして唯一のアイデンティティだからだろうか。だけど誰もが、昨日から見た対岸で目覚める可能性がある。まとも川にいた昨日の自分が禁じた項目に、今日の自分が苦しめられる可能性がある。
    自分とは違う人が生きやすくなる世界とはつまり、明日の自分が生きやすくなる世界でもあるのに。」

    • こっとんさん
      はなちゃんさん、おはようございます♪
      いつもありがとうございます(*^_^*)

      はなちゃんさんのおっしゃる通り、
      恐怖だからといって蓋をす...
      はなちゃんさん、おはようございます♪
      いつもありがとうございます(*^_^*)

      はなちゃんさんのおっしゃる通り、
      恐怖だからといって蓋をするのではなく、知ろうとすることが大切ですよね。同感です。
      なかなか難しいことでもありますけど。

      これからもよろしくお願いします(о´∀`о)
      2023/12/08
    • はなちゃんさん
      こっとんさん、おはようございます!
      コメントありがとうございます。
      いつもレビューを楽しく拝見しています。

      そうですよね、読書していると世...
      こっとんさん、おはようございます!
      コメントありがとうございます。
      いつもレビューを楽しく拝見しています。

      そうですよね、読書していると世の中まだまだ知らないことだらけだぁ〜!とつくづく思います。
      自分以外の読書家さんのレビューも多様な見方があって、沢山の気付きを与えてくれます。
      知らないことを真っ新な気持ちで受け入れる心を常に持っていたいですね。

      こちらこそ今後とも
      よろしくお願いします(о´∀`о)♪
      2023/12/08
  • 朝井リョウ作品を読んだ後はしばらく作品から抜け出したくなくなる。

    私のような点以下の存在でも、人間という生物の群衆で生きていくからには身に付けないといけない色んなことがあって、そこをピンポイントで指摘されるから辛い。

    辛いと分かっていても読んでしまう。
    朝井リョウ大好き(´・ ・`)

    正しい欲
    と書いて『正欲』

    『性』『多様性』に対してすごく真剣に考えさせられます。

    『多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。
    時に吐き気を催し、時に目を瞑りたくなるほど、自分にとって都合の悪いものがすぐ傍で呼吸していることを思い知らされる言葉のはずだ。』

    正当化する為に使われる言葉でもない。
    人間は声を上げて言えない事を抱えているということを忘れてはいけない。

    もっと色々書きたいけど、それも違うと思った。
    他の読者が私と同じ事を感じると思わなかったから。

    他者の感想に引っ張られないで読んでほしい一冊。

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著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

朝井リョウの作品

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