あかあかや明恵

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103345367

作品紹介・あらすじ

僧も俗人も、人は誰しも「あるべき様」を保つべし――。身命を賭して仏の教えに肉迫しようとした傑僧の生涯。武家に生まれた明恵は、八歳で父母を亡くし、十六歳で出家。その学才を見込んだ東大寺、神護寺からの要請を断わる一方、釈迦のご遺誡を体現するために右耳を切り落としさえした。承久の乱で朝廷軍をかくまったが、その教えに打たれた幕府軍の総大将・北条泰時が後に帰依したことでも知られる、華厳宗中興の祖を描く傑作歴史長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 中世の心性がどんなだったかは結構想像がつかない気がする。イサがわりと近代的なのだ。信仰が持てない身からは読みやすさが何か座りが悪い。

  • 鎌倉時代の華厳宗僧侶・明恵(みょうえ)上人の生涯を描いた歴史小説。その奔放な一生にずっと付き従ってきた架空の世話人イサの思い出話として物語が進みます。イサは15歳年下ながら直属の弟子ではない在家者、いわゆる寺男ですから、変に明恵を美化したり神格化したりしません。耳を切り落としたり、島に手紙を書いたり、インド巡礼を計画したり、お茶を栽培したり、樹の上で坐禅したり、夢を記録したりという明恵上人の史実に沿ったエピソードの数々が、著者の想像力によって印象的に綴られていきます。周囲への迷惑を考えれば、けっこう困った人だったろうと思うのですが、穏やかな語り口のおかげか、不思議と微笑ましく思えてくるのが、小説の力というものでしょうか。

  • 高山寺の明恵上人の仏道を追い求めた生涯。寺に捨てられたイサが従者として仕えた上人の在りし日の姿を語る。そのひたむきさ、自分への厳しさが心を打つ。耳を切り落とす場面など、まず最初に驚かされ、子供っぽいところにはほっとし、人への優しさと厳しさに魅了された。「あるべき様になる」とは見習いたいと思いました。

  • #明恵上人 は澁澤龍彦の本で知ったので、「夢記」の人、渡海を春日大明神に止められた人、半跏思惟像のような清らかなエロティシズム、の印象。
    でも、従者のイサが語る明恵さんは、身体は弱いのに、直情径行で強情。優しい微笑みを浮かべつつ、自分の信ずる仏の道を黙々と歩く。明恵さんを尊敬しつつ、駄々っ子をなだめすかすように支えるイサに語らせることで、明恵さんのチャーミングなところがのぞいて、だから、「明恵上人」というより、「明恵さん」と呼びたくなる。

    「鎌倉殿の13人」を見ていたので、北条泰時とのエピソードは、坂口健太郎で脳内再生しました…。

  • なかなか重みのある一冊だった。主人公の明恵(みょうえ)と一生を供するイサの物語は人の心を鷲掴みする感動を頂いた。

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著者プロフィール

1953年静岡県生まれ。明治大学文学部卒業。1993年、『喜娘』で第18回歴史文学賞を受賞しデビュー。歴史に対する確かな目線と骨太のドラマを織り込んだ作風で着実な評価を得てきた。作品執筆の傍ら、2007年から東洋大学大学院で仏教学を学ぶ。2014年『捨ててこそ空也』で、第3回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。主な作品に『百枚の定家』ほか。

「2016年 『井伊直虎 女にこそあれ次郎法師』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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