- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103362128
感想・レビュー・書評
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はじめての作家さん
文章が繊細。
大袈裟はなくてジワジワ染み込む良質な短編は、それぞれいい感じです!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
気象学、地学、火山学、など、さまざまな「科学」のエッセンスと、人の心の機微がやさしく穏やかに描かれた短編集だ。
かつては地球に裏も表も見せていたのに、現在は裏側を決して地球に見せない月。
雪の結晶の形によって大気の状況がわかるということ。
人間の体が多くの循環する水素で構成されていること。
堆積する地層や岩石から、遥か昔の環境や火山の特性を読み取るということ。
物語の中で語られる科学のかけらは、わかりやすく、ささやかだけれど、少し疲れたり倦んだりしてしまった登場人物たちの心に重なり、かすかな光となってその人生を照らす。
どの短編も派手さはないけれど、じんわりと滲むような、いい話だった。 -
初作家さんで、いい小説に出会えたなと嬉しくなりました。科学を修めた作者らしく、どの短編にもふんだんにその蘊蓄が出てくるのですが、全く堅苦しくも嫌味な感じでもなく、むしろその科学のお話が登場人物たちの心をほぐして、癒して、光を与える感じがとても不思議な印象でした。科学なんて無機質で割り切りの世界だと思っていたので、人の心情なんてふわふわしたものにこんなにうまく絡まっていくなんて。私もとても癒されました。この短編集はどれも心に残って、どれも一番よかったです。
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ちょっと予想してた話しとは違いましたが、なかなか良いお話しでした。初期の道尾秀介の作品の様な、影があるどこか切ない話の短編集でした。
上手くいかない人生に疲れた大人の話しで、初めは暗くなってしまいますが、そここら徐々に光が指してきて、何とか上手く行きそうな展開になって少しホッコリします。何とも微妙な切ない様な、ホッコリする様な6話でした。 -
6編からなる短編集。各編の繋がりは特にない。ただ各編に共通しているのは天文学とか地質学、素粒子物理学とかいろんな科学の知識が絡んでいる。といってもそれが科学的な話なのかというとそうでもなく各話の主人公とそれに関わる人たちの生きてきた人生とうまく結びつきドラマが構成されている。特に科学知識がなくともすんなり話の中に入っていけそして温かい気持ちになれるそんな物語でした。どの話も好みの話で良かったです。初読みの作家さんでしたが他の作品も読んでみたいと思いました。
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6つの短編集、どれも良かった。
主人公が抱えている問題や悩みに、科学が寄り添っていた。
天文学、気象学、地質学、気候学、素粒子物理学、火山学。
知らないことを調べたり、自分の視野が広がっていくのがうれしい!
「アンモナイトの探し方」
中学受験する6年生の男の子が主人公のお話。
「わかるための鍵は、常にわからないことの中にある。その鍵を見つけるためには、まず何がわからないかを知らなければならない。」
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初めての作家さんなので、どうかな〜と思っていたのですが、とても良かったです!!
生きてくのってしんどいこともあるけれど、人との偶然の出会いが糸口になることもあるよね、と思わせてくれる。壮大な宇宙との絡みもなんだかロマンがあって素敵でした。
他の作品も読んでみようと思います。
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いつの間にか、ここまで来てしまった。というような、誰もが日常でふと感じる「取り返しつかない感」 みたいなものを、視点を変えることで軽くさせてくれる。
思わず引き込まれて、ほとんど一気読みしていた。
その登場人物が、どの人も信頼出来る感じ。
安心して読みながら、軽く涙してしまう――
不思議な一冊だった。
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短編6編。
どんでん返しや急展開があるでもない何気ない話。主人公の煮え切らない思いが最後には解消されていくストーリーに心暖かくなった。
また、主人公が出会う地学の専門知識を有するキーパーソンの、自分の好きな分野にとことんのめりこんでいる姿は好きだ。
職としている「天王寺ハイエイタス」や「星六花」もいいが、「エイリアン食堂」のようにもがきながらも夢を追い続ける人柄?は尊敬。