消えない月

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 102
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103394822

感想・レビュー・書評

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  • 出版社に勤める松原と、マッサージ師のさくら。
    さくらの客として出会い、二人は付き合い始める。

    ストーカーという加害者と、被害者のふたつの視点から物語は進んで行く。
    ふたつの視点がこんなにも違うものかと、徐々に追い詰められていく怖さがあった。
    現実にもストーカー殺人と言われる事件はあるし、こんな風にちょっとしたことで歯車が狂って行くのかも知れない。

  • 怖いとは聞いていたけれど、本当に怖い。
    一気に眠いの我慢してビクビクしながら読んだ。
    松原の思考が本当に理解に苦しむ。一定数こういう男性っているのだろうか?私もこの手の方と過去付き合った事あったので思い出して怖かった。すごく似ている。
    本当の話のようでリアルですごく怖い。
    ストーカーと化していくこと、さくらの恐怖、こんな風に事件が本当に起きているだろうなと思った。

  • <内容紹介より>
    出版社に勤務する松原とマッサージ師のさくら、二人は、付き合いはじめ、やがて別れる。それで終わりのはずだった。婚約までした男と女の関係は、はじめから狂っていたのかもしれない。
    なぜ、さくらは、僕から離れようとするのだろう。
    どうして、松原さんは、わかってくれないの。

    ーーーー
    最初に付き合い始めるときから、周りが見えていないというか、フワフワした不安感を感じさせる二人でした。
    案の定、すぐにお別れとなったのですが、双方ともに問題のあるメンタルをしています。
    ストーカーの男に、被害者としての自覚が足りない(ストーカーを助長するような)女。
    もっとも、実際にストーカー被害に遭われた方の体験談なども存じ上げないので、大きな事は言えないのですが。

    なかでも、さくらが警察官に言われる、
    「警戒し過ぎるということはない」
    「ストーカーは尋常ではない努力をし、その努力に対して「運」が味方する。「運」を自分の味方にするため、ストーカーよりも努力してください。」
    という言葉は非常に説得力がありました。

    読後感は決して爽やかなものではありませんが、非常によく練られた作品だと感じました。
    ストーカーとなる人の思考回路も、凡そこういったものなのだろう、と説得力のある描写であったと思います。

  • ストーカー加害者、被害者両面からのストーリー。加害者である男性がひどく、読んでてうんざりしてくるが、それだけうまく書かれている。最後には加害者の独白があるが、それがお見事。女性の心情も書かれているが、男性のがより深く描かれていた。ストーカーの心情がわかりました。怖いですなあ。女性の方は優しいというか弱いのかなあ、主体性がない人? 自分では考えられないなあ。男性も家庭の状況でああ歪んでしまったんだろうし、成長の中で信じられる、頼れる人が現れなかったのね。それはかわいそうでした。

  • よっ君「いつだって、僕は正しい。」

    初めから決まっていたんだなと思ってしまう、生い立ち。怖かった。

    恐怖と対峙して最期を迎えたさくら。ほんの少しの間離れた後に、姉の姿と松原の狂気を目撃した和樹や両親祖父の無念さがどれほどのものかと考えると胸が苦しくなる。

    今回も畑野さんの書く人物の心理描写にはため息が出る。こんなジャンルも書けるのか...。

  • 勘違い男・松原と、デモデモダッテ女・さくらの話。
    ストーカーの話。
    被害者視点と加害者視点で描かれる。松原がすごく気持ち悪いが、さくらも煮え切らない感じがあって苛立つ箇所がいくつかあった。
    他の登場人物も、いい奴悪い奴色々いてよい。描写が上手。

    とにかく、ストーカー男の感情や行動が詳細に書かれすぎている。すごい!気持ち悪い!こわい!笑!人の修羅場をずっと覗き見しているような感じ。
    そしてこういう奴は実際にいるし、こういった事件は実際に起きている。

    何気なく読んだ作品だったけどアタリだったなと思った。

  • ストーカーという言葉を初めて聞いたのはいつ頃でしょうか。小学生の時は間違いなく聞いたこと無かった。中学校の頃も聞いたこと無かった。高校の頃に言葉を認識したような気がします。そうすると大体25年位前に概念が浸透し始めた感じでしょうか。ストーカー規制法が2000年施行のようなので大外れではなさそうです。

    嫌だと言っているのに「俺の事好きなのにその事に気がついていないだけだ」パターンと「俺の事嫌いだろうがなんだろうが関係ない」およそ2パターンありますが、この本では前者です。強くNoを言えない主人公タイプはどんどん押し込まれてしまうので、事態が次第に悪い方へ・・・。

  • ストーカー犯罪の被害者と加害者を描いた物語。

    最初の方が一番に記憶に残りました。

    序盤は加害者との出会いや付き合うまでの淡い恋模様が描かれていて、
    唐突に、だけど淡々と自然とこぼれるように、加害者側の異常な心理の一片が出てきて、不気味でした。
    それまで幸せそうな恋の始まりを描いていたから尚更に。それがとても、「異常なことをごく平常だと思っている加害者の心」を、如実に表していたように思えて、感嘆です。

    あとは、主人公のさくらと私はまるで性格が違うので、ダメだよ〜逃げようよ〜そこは徹底抗戦だよ〜しっかりして〜!と突っ込み突っ込み、読み終えました。

    一番は、家族に被害が及ぶことを懸念して、上辺だけでも再び付き合ってしまったところですかね…
    そういった背景と理由があるのだとしても、これじゃあ今の警察じゃ、今後に何があっても痴話喧嘩だと一蹴されてしまうかも知れない!と、心配したのですが、最後にお世話になった警察がしっかりしていて安心しました。
    しかし、報われない最後。
    さくらを守ろうとした弟や家族、現恋人を思うと涙が出そうです。でも、バッドエンド好きなので美味しくいただけました。

  • どこで間違えたのか?
    女性の選択。
    1番気になったのはやっぱりアパートの鍵。交換して、気持ち悪いから。
    でも男をストーカーにさせちゃう(表現が適切かわかりません)行動のどれを避けるべきだったのか?
    どうすれば嫌われてでもすんなり別れられたのか?
    全然答えが見つけられない。

    この女性がたまたまだったのか?
    どんな女性でもこの男をストーカーに変身(?)させちゃうのか?

    いっぱい疑問ばっかり。

    でもとにかく怖かった。

  • 緊張感に満ちた文体で、加害者と被害者、ふたつの視点から「ストーカー」に斬り込んだ、残酷にして無垢な衝撃作!!

    出版社に勤務する松原とマッサージ師のさくら。
    二人は、付き合いはじめ、やがて別れる。
    それで終わりのはずだった・・・。

    でも、婚約までした男と女の関係は、はじめから狂っていたのかもしれないー。

著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。13年に『海の見える街』、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる。著書にドラマ化された『感情8号線』、『ふたつの星とタイムマシン』『タイムマシンでは、行けない明日』『消えない月』『神さまを待っている』『大人になったら、』『若葉荘の暮らし』などがある。

「2023年 『トワイライライト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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