厳島

著者 :
  • 新潮社
4.10
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本棚登録 : 137
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103506447

作品紹介・あらすじ

希望と絶望、そして祈り――男たちを戦へ駆り立てるすべてが、この島にあった。兵力わずか四千の毛利元就軍が二万八千の陶晴賢軍を打ち破った名勝負の影には、壮絶な人間ドラマがあった。「これまで誰も書きえなかった厳島合戦の全貌を描き、我が国の歴史文学の空白を埋める記念碑的作品」――縄田一男氏絶賛! 謀略で勝利した元就と義を貫いて敗れた晴賢。対照的な二人の武将を通して人間の矜持を問う!

感想・レビュー・書評

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  • 読むのが勿体なくて3ヶ月ほど寝かしていました。とうとう覚悟を決めて読みましたが最高でした。尼子から連なる作品で尼子と毛利ファンの私にはもう至極の一冊でした。
    生涯であと6回は読み直したいです。
    表紙もかっこいいし、この本を鞄に入れてるだけで最高の日々でした。

  • 厳島の戦いは、戦国時代の戦史に名を残す有名な奇襲戦ですが、この戦いを描いた歴史小説は少なく、ワクワクして読みました。4百数十ページの作品のうち、厳島の戦いの部分は終盤の百数十ページです。それまでの3百ページは毛利元就の恐るべき鬼謀の数々が描かれてていて、背筋が凍ります。この恐ろしさには痺れますね。でも、同じ鬼謀の人なら「宇喜多の捨て嫁」の宇喜多直家像の造形には及んでいません。残念です。厳島の戦いでは、敗軍の将弘中隆兼を中心に悲劇性を描いています。役者も揃っていて、それぞれにドラマがあり、読みごたえがありました。

  • 厳島の戦いをベースに対照的な2人の人物を描いた歴史小説。構成として上手いのは勝者である毛利元就が不気味な存在として描かれているに対し、敗者の陶晴賢の家臣、弘中隆兼が信を重んじる忠実な武将として描いてある。この対比がどちらにも傾けない心情を見事に演出している。ドラマティックな動きよりも史実をベースに静かに重たく進む物語はヒリヒリとするが胸は熱くなる。ラストの決戦シーンは見物。読みながら押し寄せてくる感覚が沸き立った。現代にも通用する勝負ものの本として大変に面白かったぞ

  • 厳島における毛利元就の奇襲、くらいしか思い浮かばない程度の知識で読み始めた。
    毛利元就と言えば、なんとなく胡散臭いとかずるがしこいとか、そういうイメージであまり好きじゃないタイプ。
    それがこれを読んでますます強固になった。もーとーなーりー!!大嫌いだー!!
    「知将」というより「謀略の雄」。そんな嫌われキャラの元就と対するのが弘中隆兼。この人の名前も全く知らず、己の無知さに震えたが、その震えがどんどん別の感情を引き連れてくる。
    戦国時代に武士として生まれなくてよかった…と心底思う。
    二万八千の陶晴賢軍がなぜ四千の毛利軍に負けたのか。歴史の裏側にあったであろう多くの分かれ道。なぜその道を選んだのか。選ばされたのか。

    しかし、義のためにここまで主に尽くすのか。
    「上があほやからやっとれんわ」なんて口が裂けても言えない。言わない。そしてあほな主のために散る武士の生きざまよ。

  • 毛利元就、
    名前はよく知っているが、そのキャラクターはあまり読んだことがなかった。
    作者の描く毛利像は、陽性のヒーローではない。
    この物語の主人公も、別にいる。
    毛利元就はじめ、多くの登場人物は、みんな魅力的な描かれ方をしている。

    途中チラッと登場する尼子一族

    元就の謀によって、同族から襲われる尼子敬久の
    「、、、者ども。
    ここが、戦場と心得よ!」

    かっっっっこよ!

    人生のピンチに、こんな台詞を吐ける侍でありたい。

  • 第45回吉川英治文学新人賞候補作。弘中隆兼という武将を私は知らないでいました。毛利元就よりそちらに感情移入してしまっていたので途中の軍議の場面などなどなかなかつらかった。歴史もの読むとちゃんと勉強しなきゃなあと思いますね。結果を知らずに読むので、ストーリーはものすごく楽しめますが。

  • 歴史の勝敗と人間性の良し悪しは関係ないとあらためて思った。違った角度から見ればまた違った印象になるのかも。

  • 硬質の時代小説。戦国時代の「いわゆる」登場人物ではな、この時代、この地域の歴史は初めてだったので、新鮮。厳島にこの様な歴史があったとは。「団結」とは難しいものですね。どんどん行ってはいけない方へ転がっていく。分かってても。哀しいお話でもありました。この筆者、一文一文がカッコいいですね。

  • 本の雑誌・年末ランキングから。毛利元就を読むのは、中学時代に山岡版を読んで以来かも。信長界隈の物語なら高確率で顔を出すから、久しぶりな感じは全然しないけど。それにしても最近、歴史ものに対する自身の感受性が低いわ。本作も、権謀術策渦巻く、正に戦国ものど真ん中をいくもので、従来なら大好物ってハズなんだけど、自身の興奮が、終始いまいち盛り上がらんままだった。繰り返しになるけど、飽くまで史実を大前提とする場合、どちらが勝つかっていう、最大の結末部分が覆らない訳だから、やっぱりそこがもどかしい。無茶な言い分だとは百も承知だけど。

  •  戦国時代まっただなかの1555年に厳島で行われた、毛利元就と陶晴賢(すえはるかた)との合戦までを描いた時代小説。本書を読むまでは、あの厳島神社の目の前で戦いが行われ、のちの毛利家の隆盛のきっかけになったことは知らなかった。
     本書の主人公は毛利元就でも陶晴賢でもなく、大内家の家臣である弘中隆兼ということが途中からわかってくるが、それまでは視点が定まらないのと人物関係がよくわからないため、読むのにひと苦労した。山籠もり中の百姓のこどもを弘中隆兼が助けたあたりから俄然、面白くなっていく。

     暴政だった領主・大内義隆を葬り去り実権を握った陶晴賢に感服していた隆兼だったが、虎視眈々と領土拡大を狙う毛利元就の卑劣な策略に陶晴賢が翻弄されるようになると、この大将のコントロールに手を焼くことになる。
     隆兼の心配をよそに、陶晴賢はまんまと毛利元就の奸計に乗って厳島におびき出される。当時の瀬戸内海の潮の流れや天候、厳島の地形を詳細に再現した最終決戦の模様は、隠密行動あり、奇襲あり、山岳戦ありと手に汗握る面白さだった。

     忠誠を誓った大将に最後までつき従い、厳島で戦った隆兼の心意気、何年もかけて計画を練り上げた毛利元就の周到さといった人物の造形に加え、戦国時代ならではの刺すか刺されるかの緊迫感や、忍びを駆使した情報戦による騙しあいもあって最後まで堪能できた。

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著者プロフィール

1978年群馬県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。映画、テレビ番組の制作に携わった後、第十七回日本ホラー小説大賞の最終候補作となった原稿を改稿した『忍びの森』でデビュー。2015年『妖草師』シリーズが徳間文庫大賞を受賞。さらに同シリーズで「この時代小説がすごい2016」“文庫書き下ろし部門”第一位に。2022年『阿修羅草紙』で第24回大藪春彦賞を受賞。『吉野太平記』『忍びの森』「源平妖乱」シリーズなど、著書多数。

「2023年 『謀聖 尼子経久伝 雷雲の章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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