厳島

著者 :
  • 新潮社
4.03
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本棚登録 : 141
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103506447

作品紹介・あらすじ

希望と絶望、そして祈り――男たちを戦へ駆り立てるすべてが、この島にあった。兵力わずか四千の毛利元就軍が二万八千の陶晴賢軍を打ち破った名勝負の影には、壮絶な人間ドラマがあった。「これまで誰も書きえなかった厳島合戦の全貌を描き、我が国の歴史文学の空白を埋める記念碑的作品」――縄田一男氏絶賛! 謀略で勝利した元就と義を貫いて敗れた晴賢。対照的な二人の武将を通して人間の矜持を問う!

感想・レビュー・書評

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  • 歴史物が苦手なのに何故手を出してしまったのか…読み進めるのに苦戦。弘仲隆兼がとても魅力的で、その生き様を知ることができたのがよかった。

  • 読むのが勿体なくて3ヶ月ほど寝かしていました。とうとう覚悟を決めて読みましたが最高でした。尼子から連なる作品で尼子と毛利ファンの私にはもう至極の一冊でした。
    生涯であと6回は読み直したいです。
    表紙もかっこいいし、この本を鞄に入れてるだけで最高の日々でした。

  • 厳島の戦いは、戦国時代の戦史に名を残す有名な奇襲戦ですが、この戦いを描いた歴史小説は少なく、ワクワクして読みました。4百数十ページの作品のうち、厳島の戦いの部分は終盤の百数十ページです。それまでの3百ページは毛利元就の恐るべき鬼謀の数々が描かれてていて、背筋が凍ります。この恐ろしさには痺れますね。でも、同じ鬼謀の人なら「宇喜多の捨て嫁」の宇喜多直家像の造形には及んでいません。残念です。厳島の戦いでは、敗軍の将弘中隆兼を中心に悲劇性を描いています。役者も揃っていて、それぞれにドラマがあり、読みごたえがありました。

  • 厳島の戦いをベースに対照的な2人の人物を描いた歴史小説。構成として上手いのは勝者である毛利元就が不気味な存在として描かれているに対し、敗者の陶晴賢の家臣、弘中隆兼が信を重んじる忠実な武将として描いてある。この対比がどちらにも傾けない心情を見事に演出している。ドラマティックな動きよりも史実をベースに静かに重たく進む物語はヒリヒリとするが胸は熱くなる。ラストの決戦シーンは見物。読みながら押し寄せてくる感覚が沸き立った。現代にも通用する勝負ものの本として大変に面白かったぞ

  • 厳島における毛利元就の奇襲、くらいしか思い浮かばない程度の知識で読み始めた。
    毛利元就と言えば、なんとなく胡散臭いとかずるがしこいとか、そういうイメージであまり好きじゃないタイプ。
    それがこれを読んでますます強固になった。もーとーなーりー!!大嫌いだー!!
    「知将」というより「謀略の雄」。そんな嫌われキャラの元就と対するのが弘中隆兼。この人の名前も全く知らず、己の無知さに震えたが、その震えがどんどん別の感情を引き連れてくる。
    戦国時代に武士として生まれなくてよかった…と心底思う。
    二万八千の陶晴賢軍がなぜ四千の毛利軍に負けたのか。歴史の裏側にあったであろう多くの分かれ道。なぜその道を選んだのか。選ばされたのか。

    しかし、義のためにここまで主に尽くすのか。
    「上があほやからやっとれんわ」なんて口が裂けても言えない。言わない。そしてあほな主のために散る武士の生きざまよ。

  • 毛利元就、
    名前はよく知っているが、そのキャラクターはあまり読んだことがなかった。
    作者の描く毛利像は、陽性のヒーローではない。
    この物語の主人公も、別にいる。
    毛利元就はじめ、多くの登場人物は、みんな魅力的な描かれ方をしている。

    途中チラッと登場する尼子一族

    元就の謀によって、同族から襲われる尼子敬久の
    「、、、者ども。
    ここが、戦場と心得よ!」

    かっっっっこよ!

    人生のピンチに、こんな台詞を吐ける侍でありたい。

  • 第45回吉川英治文学新人賞候補作。弘中隆兼という武将を私は知らないでいました。毛利元就よりそちらに感情移入してしまっていたので途中の軍議の場面などなどなかなかつらかった。歴史もの読むとちゃんと勉強しなきゃなあと思いますね。結果を知らずに読むので、ストーリーはものすごく楽しめますが。

  • 歴史の勝敗と人間性の良し悪しは関係ないとあらためて思った。違った角度から見ればまた違った印象になるのかも。

  • 硬質の時代小説。戦国時代の「いわゆる」登場人物ではな、この時代、この地域の歴史は初めてだったので、新鮮。厳島にこの様な歴史があったとは。「団結」とは難しいものですね。どんどん行ってはいけない方へ転がっていく。分かってても。哀しいお話でもありました。この筆者、一文一文がカッコいいですね。

  • 毛利元就と陶・大内軍との厳島での戦いを描いた歴史小説。

    「関ヶ原の戦い」など群像劇になりやすいもの以外で、一つの戦いだけを描く小説は珍しいです。
    主人公は弘中隆兼で他に元就や吉川元春などの視点も入って戦いの全貌を網羅する感じの構成です。
    元就の陶晴賢誘き出し説がとられているので、隆兼から昔の晴賢は賢将だったといくら語られても、この時点では晴賢が愚将のように描かれているのは残念です。
    群像劇ほどにはならないかもしれませんが、隆兼に偏らず、元就、晴賢、元家なども心情も同じレベルで描かれていたらもっと面白かったかもしれません。
    いずれにしても、この戦いを描いた小説としては嚆矢となることでしょう。

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著者プロフィール

1978年群馬県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。映画、テレビ番組の制作に携わった後、第十七回日本ホラー小説大賞の最終候補作となった原稿を改稿した『忍びの森』でデビュー。2015年『妖草師』シリーズが徳間文庫大賞を受賞。さらに同シリーズで「この時代小説がすごい2016」“文庫書き下ろし部門”第一位に。2022年『阿修羅草紙』で第24回大藪春彦賞を受賞。『吉野太平記』『忍びの森』「源平妖乱」シリーズなど、著書多数。

「2023年 『謀聖 尼子経久伝 雷雲の章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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