- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103529613
感想・レビュー・書評
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ひとり出版社「夏葉社」は良書の復刊をコンセプトにした出版社です。
夏葉社の本は最近本屋さんでも見る機会が多くなりました。
本自体がとても美しいので思わず手に取ってしまいますが、この本を読むと本は美しいものであるという事が基本に有るんですね。
物によりますが目が惹きつけられるような美しい本と、ギラギラと目は惹くけれど美しくはない本もあります。彼はそういった前者の本を作る事を志しています。
てっきり有能で迷いのない人なのだろうと思いましたが、就職出来ずもんもんとしている中で有る機会が有り、一人で出版社を興そうと考えた珍しい人です。
誠実で不器用で、それでいて人間を愛している人柄が出ている本たちが、どうやって生み出されたのか読む事が出来てとても有意義で楽しい本でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ようやく読むことが出来た。タイミングはあるのだろう。いまの自分の中で読むには涙する箇所のなんと多いことか。
夏葉社に限らず、活版印刷やハンドメイド作品に魅かれている自分はいて、それをこの本が「あぁ、そういうことなんだよな」とすっと心に落としてくれた。
そして。夏葉社と気づかないまま、手元には『神様のいる街』や『冬の本』、『さよならのあとで』があった。
自分も信じたい。こういう本のつながりというか、本の力を。 -
夏葉社という出版社をたった一人で経営している著者の本に対する想いがつづられた本。
もともと作家志望だったこともあり文章はとても気持ちよく読めます。
出版業界の不況と言われる中、小さな出版社や書店が独自の工夫とアプローチで新しい需要を生み出している。
まさに古くてあたらしい仕事。
頑張れ出版社、頑張れ本屋。 -
人生でもっとも大切なのは、人から必要とされることだ。
会社を経営するということは、ぼくが想像していた以上には難しくはなかった。経営に必要な才覚なんて、たぶんない。やると覚悟を決めれば、だれでも、いつでもはじめられる。あとは全部はじめてから考えればいい。毎日毎日、軌道修正していけばいい。
だれかのための仕事は、世の中がどんなに便利になっても、消えてなくなるものではない。 -
気がつけば「小さな仕事」をしている方の本を読んでいる。この本もそうだ。
「小さな仕事」とは、「悪い仕事」ではなく「大きな仕事をしているところではできない仕事」なのだということがこの本で話されていてスッと理解ができた。私も大きな仕事ができるタチではないと思うので、小さな仕事をコツコツと積み重ねていきたい。 -
良かった。
小説的自伝的な話のようで、全て作者のエッセイである。
小説的エッセイといえばいいかもしれない。
全く知らない著者だった。
働くということを考える時に、著者が言うある種の葛藤に対して、自らの思考、ありかたをぶつけていき、社会で生きていくこと。それが仕事だなと再確認できた。仕事自体がある種の成功や結果の浮き沈みという「数値」として見える指標でなく、人生にセットされたまさに「生き方」に近いといっていいだろう。
それはある種文学や小説的でもあり、著者はおそらく何か元気づける、身近で周りの特定の誰かに対して役に立つことを本書序盤で「仕事」としているのがとても興味深い。
仕事に自分を合わせるのもありだが、一方で自分に仕事を合わせるという選択肢もありということを痛感できた。 -
2009年創業
従業員ひとりだけの“ひとり出版社”「夏葉社」のモットーは二つ
《自分が欲しくなるような本をつくる》
《できるだけ他社がやらない仕事をする》
編集、営業、事務、発送、経理……すべてをひとりでこなしながら、文芸書を中心に年に3冊ほどを刊行している
出版から10年間の収支は7勝3敗という
「転職活動がうまくいかなくて、会社をやるしか選択肢がなかったんです」
事故死した従兄とその両親のために1冊の詩集をつくりたいと思ったこと
和田誠に装丁をしてほしくて、荒川洋治に巻末エッセイを書いてほしくて、庄野潤三の撰集を出版したくてその遺族に、長文の手紙を書いて依頼したこと
悩みながら、迷いながら本をつくりつづける経営者が、出版社を立ち上げるまで、立ち上げてからを綴った“生き方”と“本”の本
大きな会社がやらない仕事に活路を見出す出版人の書き下ろしエッセイ、新潮社から -
大きな仕事と小さな仕事。小さな仕事の自覚を持ちながら、大きな仕事の意義を否定することもない。自分の立ち位置でできることをコツコツとやるのだという気持ちになる本。