ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ

  • 新潮社
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感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103808510

作品紹介・あらすじ

九人の人気作家が織りなすもうひとつの源氏物語。

感想・レビュー・書評

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  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/705750

  • 源氏物語の54帖のなかから、9人の作家がそれぞれ好きなものを選び仕立て直した作品集。

    豪華な作家陣にひかれて手に取ったのだが、なんとも読みごたえのあるぜいたくな一冊だった。
    原作に忠実に淡々と訳しているものから、砕けた口調のもの、時代や場所の設定を変えて独自の物語にアレンジしたものまで、作者の個性ごとに読み比べができるのも楽しい。
    なかでも、女性のしたたかさを仕込んだ角田光代、桐野夏生がおもしろかった。この二人は日頃から好きな作家なのだが、こういうところでもぴんと来るんだ、と妙な部分で納得も。

    原典のあらすじが添えてあるのは助かったが、人間関係がややこしく、原典に精通しているわけではない私には、人物の相関図がほしかった。
    あとは、ぜひ続編を読んでみたい。
    源氏物語は長くて手を出せずにいたが、最近角田光代の訳が出たので、これを機会に挑戦してみようかな。

  • 9人の現代作家による翻訳というより翻案。男性が町田康と島田雅彦しかいないのは、今の日本の作家状況を反映しているからか。いずれにしてもそれぞれ違って面白い。
    原典を読みたくなるが、原典は余りにも長すぎる。橋本治か田辺聖子訳あたりを読んでみるか。

  • 松浦理英子の帚木、江國香織の夕顔、金原ひとみの葵、島田雅彦の須磨、日和聡子の蛍、小池昌代の浮舟、桐野夏生の柏木。

    どだい1000年の年月に晒されて残ったものに
    ン十年をぶつけるのも難しい試みなのかな~と思いつつ。意外に・・・

    「須磨」はもともと好きってこともあるし、島田だから、っていう(←一応ファン)バイヤスもかかっていたかもしれないけど、「柏木」はあんまり好きな巻じゃないのにしっかり引き込まれてしまった。

  • 現代の作家9人が源氏物語を書くとどうなるか。

    松浦理英子(帚木)、日和聡子(蛍)は現代語訳の風情。島田雅彦(須磨)、桐野夏生(柏木)、小池昌代(浮舟)はもうちょっと柔らかく。江國香織(夕顔)、町田康(末摘花)は横文字も使ってさらにくだけて。角田光代(若紫)、金原ひとみ(葵)は時代を飛び越えて。

    町田康の末摘花が抜群に面白かった。光源氏がくだけすぎだし、ストーカー(笑)頭の中将もチャーミングで好感が持てる。次によかったのは桐野夏生の柏木。通常の訳とどんなふうに違うか、比べながら読むとより楽しめそう。

  • 各章ごとに、作者が変わる源氏物語。いろんな源氏が、楽しめる。

  • 性懲りも無く日和さん目当てで読んでみたのだが結果は流麗ながら凡庸、さすがにこの錚々たる面子の中では個性を発揮するまでには至らず優等生的な現代語訳となってしまったようだ。
    ではその錚々たる方々はどうかというと…町田町蔵は反則(大笑い) 、金原ひとみは我が道を突き進み、角田さんは技あり、意外な伏兵は小池さんか。
    しかしやはりこの歴史的レディコミの怪物をさらりと退治してしまうのは江國さん。きっと式部と共鳴する琴線を持っているのだろう、まるで違和感のない夕顔は九篇のなかでも一押し。
    原点を知る人も知らぬ人もそれなりに楽しめる企画本かな…私はこれ以上知るつもりはないが

  • 9人の現代作家が描く源氏物語。
    一人一帖を受け持って、それぞれの解釈やら超訳やら。
    読みやすい現代語に訳したものあれば、おもいっきし視点を変えて再構成したものあり。現代に置き換えたもの、異国の物語になったもの、なんでもありなアンソロジー。

    大変おもしろかった。
    企画的に大勝利なんじゃないだろうか。
    特に以下の4帖がお気に入り。
    源氏物語について詳しくなくても読めそう。知ってたらより楽しいけど。
    勿論他の話もおもしろい。

    ・江國香織『夕顔』
    江國香織作品の雰囲気をすっぽり被ってしまった。
    個人的に従順で儚くて可愛い夕顔という女君はあまり好きでなかった。何考えてるかわからないし。
    でも、この人の描く夕顔はすごい良い。

    ・町田康『末摘花』
    この作品を読む為にお金を出しても惜しくない!
    源氏視点で、末摘花との場面を描くんだけども、笑いが止まらない。ボロボロな言われようの頭中将が哀れだ。大輔の命婦もいいキャラだ。
    こんな主人公で54帖続いてたら大変身近な気分がしてしまう。
    突然虚無的になってびっくりだが、それも良い。

    9編のオムニバスの中、私の一番はこの作家。確実に。
    今までこの人を知らなかった。今度この人の本を買おう。

    ・桐野夏生『柏木』
    桐野夏生は凄い。
    女三宮視点からの物語は初めて読んだ。
    紫の上と対比して幼稚で浅はかで、お人形のようなイメージがあった女三宮。しかし、この作品では皇女としての自覚を持った女三宮が居て、老境の源氏の身勝手さを責め立てている。
    「わざと」柏木に姿を見せた彼女の心境が新鮮だった。
    目から鱗な感じで大変おもしろかった。
    話の筋を知ってるはずなのに、また面白い読み方ができて嬉しい。


    ・小池昌代『浮舟』
    源氏物語最後の女君、浮舟。
    薫と匂宮の二人に慕われ、悩み苦しんだ浮舟のお話。
    独身で定年間近の現代の女性が夢の中で見た浮舟の姿。
    最後の濡れた服が暗示するのは何だろう。
    どちらが夢なのか。そういうぼんやりした雰囲気が良い。
    どっちにも決めない浮舟についてもあんまり好きじゃなかったんだけど、これもまたちょっと好きになった。


    金原ひとみの『葵』は生々しすぎてちょっとなー。
    その生々しさで、是非とも六条御息所のところを書いて欲しかったなー。

    なにはともあれ大変面白いアンソロジーでした。満足。

  • 源氏物語は不思議な読み物だ。小学生で読んだときはさっぱり魅力が分からなかった。中高生では源氏の傲慢さ・浮気性に憤り、大学生では単位のために分析を試みた。与謝野晶子さんや瀬戸内寂聴さん、田辺聖子さん、橋本治さん、玉上琢弥さん…色んな方の訳で読んだし、解説書も読んだ。

    それでもまだ理解しきれないし、読む度違う表情を見せる。

    推しメンと言うか、お気に入りのキャラクターも移り変わる。読み手の現状で自己投影の対象が変わるからか。

    朧月夜や紫の上、六条御息所、夕顔、葵の上、浮舟、花散里…それぞれの魅力や悲哀、秘めた想いまで、巡らせればキリがない。

    源氏に対しても、「ただの女好きおぼっちゃま」と言う認識から変わりつつある。婚姻制度も今とは異なるが、もしもこの時代に生きていたらきっと私も彼を拒めないだろう…その先にどれだけ辛い思いをしようとも。

    こちらのアンソロジーでは角田光代さんの「若紫」、江國香織さんの「夕顔」、桐野夏生さんの「柏木」が好き。元々、紫の上や夕顔は好きなのだけれど女三の宮への見方が変わる。

    「朧月夜」も読んでみたかったなぁ。忍んでくる男の顔も名も知らず身を委ねる夕顔は自分と真逆で、だからこんなに無垢で可憐なんだろう。

  • 好きな作家のアンソロジーだったので読んでみたり。源氏物語といえばやはり「あさきゆめみし」だなと…。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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