江分利満家の崩壊

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103906056

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  • もの書きを生業とする人、そしてその身内というのはつらいものだなあ。しみじみそう思わずにはいられない。山口瞳氏の息子である著者が「ぼくの父はこうして死んだ」に続いて、ここでは母の死に至るまでを綴っている。赤の他人の読者でさえ、ちょっと読むのが苦しくなるほど赤裸々に、著者と母親との長年の葛藤や、家庭内での出来事が語られる。ものを書くというのは本当に厳しいことだ。

    三十代の頃だったか、山口瞳さんのエッセイを愛読していた時期があった。共感はしないけれど、全く違う世界を見るようで面白かったのだと思う。うまく言えないが、そこには得体の知れない屈折を抱えた「オトナの世界」があった。「江分利満氏」はこれからも読まれていくんだろうか。あの時代を知る人がいなくなると、手に取る人はなくなるんだろうか。

    自分の家族を持たなかった(持てなかった)著者は母の死によってひとりぼっちとなる。「江分利満家の崩壊」である。誰にだって母がいるから、「母の死」を書いたものは必ず涙腺をゆるませる。リリー・フランキー「東京タワー」は、明るくたくましかった母をなくした喪失感に満ちていて、多くの人を気持ちよく泣かせたが、インテリで子どものためには生きなかった母への愛憎半ばする本書は、最後にあふれる涙も苦い味わいだ。

  • 血筋というものについて、考えてしまう一冊。

  • 「崩壊」なんていうタイトルだから、どんな凄いことが書いてあるかと思ったが(宣伝文句も激しかったし)、「崩壊」というより「終焉」という感じ。
    山口瞳亡きあと、母と二人で暮らしていた著者(妻子なし)が、とうとう母の死を迎える。
    本書は母とその死について多くを割いて書かれている。
    読んでみて、お母さんは、堕胎やそれから始まる病気については気の毒だが、いい夫を持ち、息子はずっと一緒にいてくれて、結構幸せな人生だったのではないかと思う。息子に妻がいれば、必ずもめただろうし、ずっと息子についてもらうこともできない。
    娘だったら同性の辛辣さで、もっと親子の対立があったかもしれない。
    それに、癌が発見されても、穏やかに死を迎えられた。(切り刻まれてあっけなく死んだ瞳と違って。)近藤誠の言ってることはやっぱり正しいのかもと思った。
    一筋縄ではいかないこの両親を愛した著者の思いが伝わってくる。

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