- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104061075
感想・レビュー・書評
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2022.05.07 図書館
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プロの文筆家の著作というものはこういうものか。いつものように話があっちに行ったりこっちに行ったりするが、終始スジが通っていて、最後にきちんと主題がまとめられる。素人がダラダラ書いた文章にはこのような構成力は到底期待できまい。
この本の主題は、自分のことを考えるとき「まず自分を考える人」と「まず他人を考える人」の2種類あって、どうやってこれら両極端の人たちが「私たち」と呼べる範囲(社会?)を調和的に築いていくかであるが、これもよく考えられたテーマで、国家とは何か、あるいは市民とは、教育とは、近代とは、全体主義とは、個性とは何かについて、考えさせてくれる。敢えてわかりやすい例示をしないから「この人は一体何を言っているんだろう」と感じることも多いが、その分自分なりの思索が深まる仕掛けになっている。
僕は橋本氏と同じ「まず自分を考える人」で、そのせいでずいぶん生きにくい人生を送ってきた。周りが見えず、「変わり者」と言われ、自己主張が強すぎていつも失敗する。橋本氏はその明晰なる頭脳のおかげで、それを良い方向に転化しているが、そうではない凡人には日本は厳しい社会だ。 -
自分のことを考えるをもっぱらにしていると人間は孤独になる。
孤独だと自分のことを考えるをもっぱらにするようになる。
不幸というものは自覚されて明白かつ明確になるものである。それを不幸として自覚しない限り、人はその不幸になんとなく耐えてしまう。
自分がないということは孤独がないということ。
個性とはそもそも哀しいものである。ブスが個性か。個性を伸ばす教育なんて最悪。 -
ずいぶん前に買ってそのまま積んでた本。最初あたりはちょっと読みにくかったが、だんだん引き込まれて一気に読んだ。「私」と「私たち」=社会との関係についての独自の論考。「近代」と「前近代」についてのとらえ方もユニークで面白かった。「考える」本を読むと、うーんそうかあと思ったところをできるだけ抜粋しておくようにしている。情けないことにそうしないとすぐ全部忘れちゃうもんで。ところが今回はどうにもうまく抜き出せない。どうしてだろう。またそのうち読んでみよう。
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「「私はそう考える」―ただそう言うだけで、「あなたの考えること」は、私の管轄するところではない。終わりである。」
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この本も、橋本治節炸裂である。
"「ただややこしい」に終始して、「明快なる答え」を用意しないのである。"
この本は、
『「自分のことを考える」時に、「まず自分のことを考える人」と、「まず他人のことを考える人」と2種類がいる』という、命題からスタートする。この命題の立て方から、橋本治的である。
そしてそこから、橋本治的視点で、自我の問題、恋愛の問題、世間体の問題、国家の問題、教育の問題と次々と渡り歩いていく。
多少のまどろっこしさについていけて、知的好奇心のある人なら、橋本治ワールドは、十分読む価値のあるものだと思う。 -
ややこしいこの本はボリューム満点ながら結局は明快な答えをだしてはいないけど、日頃悩んでいた「自分の考え方」についてやっぱりねってことでスッキリした。ごちゃごちゃ考える事が好きな人向き。
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『考える人』に連載されていたものを単行本化。
「今の社会」、「私」や「私たち」、そして「他人」について、分からないことや漠然とした不安・・・。
そのようなものを抱えている人が、今の時代には少なくないようです。
そういえば、孤独が怖くて「みんな」の中にいるのに、それでも孤独だっていう人、
何だか多いような気がしますよね。
橋本治式「考えるレッスン」で、人生をちょっと本気で考えてみませんか?