決壊 下巻

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 115
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  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104260089

作品紹介・あらすじ

"悪魔"とは誰か?"離脱者"とは?止まらない殺人の連鎖。ついに容疑者は逮捕されるが、取り調べの最中、事件は予想外の展開を迎える。明かされる真相。東京を襲ったテロの嵐!"決して赦されない罪"を通じて現代人の孤独な生を見つめる感動の大作。衝撃的結末は。

感想・レビュー・書評

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  • 読後の疲労感がすごい、虚しさしか残らない

  • 救いがない後味。筆者は遅くともこの著書のころからインターネットやメールで変わった社会に違和感を強く感じていたことがわかる。そのような要素含め息苦しい現代の日本で生きる不健全さはもう共通理解であるかのよう。読んでいるだけで精神が消耗する作品。
    なんでもよく出来る知性的な主人公、と、とても高い思考力の筆者が重なる。頭良すぎるのも苦しいよね。
    ごく最後の方で崇が届ける黒いバッグに、義父が見覚えがあるという記載、どういうことかとても気になるのだけど、再読する気力はなく、謎解きどこかでしているHP等ご存知の方いらしたら教えて下さい。

  • なかなか読み進められず、時間がかかりました。

    なんというか、難しすぎて読みずらかったです。

    幸福にならないと。という、幸福の宗教というか、義務感というか、そういうものに汚染されているから悪魔が生まれたらしいです。(よく分からないのですが……)

  • とても重いテーマだった。自分の愛する人や家族を他人の手によって奪われたとき、「赦す」ことができるだろうか…。「赦す」ことは、加害者のためではなく、被害者家族の永遠に続く地獄のような日々を終わらせるためにあるのだ、と。平野啓一郎さんのキリスト教的思考や死刑廃止を願うわけが少し分かった気がした。が、分かる ことと自分の中で腑に落ちて理解できることは違う。崇も最後はあんなことに…。報われない。
    「なぜ人を殺してはいけないのか」という質問に答えたコメンテーターのやり方は乱暴だが、質問した中学生も自分事として考えられたであろう。

  • 後半は怒涛の展開で時間も忘れて読んだ。
    自分の中の自分との対峙、罪への向き合い方、被害者と加害者の救済……など盛り沢山で疲れたけど面白い☺

  • あまり書評において著者の批判はしたくないが、私は彼を小説家として認めたくはない。
    芸術を気取っているだけ。本を読んでここまで不快になるのは初めてだ。(日蝕も読んだがこの本棚には絶対に入れたくはない)
    SNSや彼の政治的イデオロギーなど含めてすべてが鼻につく。

  • 久しぶりに大作読破できた達成感。

    読む人の倫理観を試されてる。
    駟不及舌。

    日本に住む上で日本人同士に生じる、人間の下衆い部分の描写が細かくて、引き込まれました。

  • 死んでしまうと自分自身の存在はなくなる。当たり前のことではあるが、読み進めていくほど、「死」と自身の「存在」の関係性について、今まで自分は美化しているだけではないかという気持ちに陥ってしまった。

    主人公である沢野崇の弟・良介のバラバラ遺体が京都の三条大橋で発見された。良介の妻・佳枝の思い込みから崇が容疑者として警察に拘留、逮捕される。崇を犯人と断定し躍起になって犯人に仕立てようとするその取り調べには警察の卑劣さを感じ、実際にもこんなものなのかもしれないと考えてしまう。

    鳥取の中学生・北崎友哉が、同級生を殺害し、自首してきたことから、崇の疑いは晴れるものの、崇の取調べ中に父親は自殺し、母親は良介の骨壷を腹に抱いたまま精神的に病んでしまう。
    良介殺害の主犯で悪魔と名乗ってい篠原は、クリスマスイブにお台場のフジテレビで自爆自殺をする。そして、最後には主人公・崇までも投身自殺をしてしまう。
    本作でいったい何人が亡くなり、その存在が消えてしまったのか。

    事件の発端となった日記の公開。ネット上この日記が、篠原の目に留まり、良介との対面を実現する。デジタル化の進歩による犯罪だ。本作の中でも篠崎が良介を殺害する際に「かつて、アメリカのとある犯罪者は言った。『私は、システムが作り出したものだ。が、システムが決して予期しなかったものだ。』この状況はまさに、システム・エラーだ。お前は今、稚拙なプログラムによって引き起こされた、この社会のバグに絡め取られている。システムの解決されるべき重大問題の発生、というわけだ。」と殺害DVDで叫んでいる。そして、篠崎は自らを「悪魔」、「離脱者」と呼び、社会のセキュリティ・システムエラーを演出する。この演出により、ネット上では容易に同調する共感者を集めることができるため、全国での類似する犯罪を増加させることになる。
    そんな彼らの犯罪への行動はある種、宗教的信仰のもとでの結束を感じる。

    また、崇と良介の不安が上、下巻通じて描写されており、兄弟の歪みが、自己の存在と現世の歪みを感じる。
    最後まで、冷静で現実的であると思われた崇も、その歪みに耐えることが出来なくなり、自らの命と存在を、終わらせてしまう。家族の残虐な死によりこの家族の幸福が完全に「決壊」してしまう。

    本作は、異常者の行動や心情を読み解いていくため、心が折れそうになるが、そうならないための心の持ち方も学ぶことができる。

    上巻で壬生がきっと良介殺害の犯人だと思っていたが、全く外れ、単に非常識極まりない画家というだけであった。

  • 凄惨な事件を描きながらもあくまで主題はそこじゃない。文学的な言い回しや感情表現の上手さもあるが上下巻で約800ページを一気に読めるのはストーリー展開のダイナミックさと面白さがあるからだと思う。ラストに向けては「空白を満たしなさい」の時と同様に、自身の中にいくつも自己が存在しているところから救いのない展開となっていくが今回の描き方は凄惨。ストーリー上、一家族だけではなく両親や親類も出てくるがこれもストーリーに厚みを増していた、というか必要不可避。結局沢野崇の存在とは何だったんだろうか。

    <内容紹介>
    地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。許されぬ罪を巡り息づまる物語が幕を開く。戦慄のバラバラ殺人──汚れた言葉とともに全国で発見される沢野良介の四肢に、生きる者たちはあらゆる感情を奪われ立ちすくむ。悲劇はネットとマスコミ経由で人々に拡散し、一転兄の崇を被疑者にする。追い詰められる崇。そして、同時多発テロの爆音が東京を覆うなか、「悪魔」がその姿を現した!芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。

  • 決壊。タイトルそのもの。救いようもなくどこまでも壊れて流れていく。猟奇的犯罪の根っこをリアルに描いた、ミステリー仕立ての美しい文芸書。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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