家守綺譚

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104299034

感想・レビュー・書評

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  • SL 2020.9.1-2020.9.3

    使われている言葉がとてもいい。

  • あまりにも近くに、そして自然に怪異…という名前が適当かは分からないが…が存在する。
    すると、いつのまにか怪異が日常となる。
    つまり怪異なのに普通になってしまう。
    怪異と暮らし、怪異に慣れ親しみ、怪異を傍に置いて生きていく。
    だけど、やっぱりそれは自分たちが住む世界とは境を異にするものだという意識も消えない。完全に同化することはできない。
    それが完全に日常となり、普通となってしまった時は、自らも怪異と呼ばれるものになっているのだろう。
    だけど、この境目をふわふわと揺蕩いながら生きていく独特の感覚は、完全に同化しないからこそ感じられるものなのだろう。
    つまり、彼は今、日常からも怪異からも離れ、どちらの立場からも「同質であり、異質でもあるもの」という位置を保っているのかもしれない。
    それは彼がもともと持っていた性質なのだろうか。
    友人とこの家が呼び起こしたものなのだろうか。
    彼自身にそういう要素があったからこそ、この家を任され、そしてその環境に馴染んでいるのかもしれない。
    では、お隣さんは…?
    あの方は、異なる世界のものを完全に受け入れて、普通のことにしながらも、自分自身のありようとは完全に線を引いている、また別の意味で稀有な存在に見えるが、どうもこの地域に住む人たちは、みんなそういう捉え方をしている気もする。
    この地域自体がそれをすべて受け入れてきたということなのかもしれない。

    かもしれない文になった。

  • 不思議な生き物、妖のようなものと共存している生活。憧れます。

  • 友人の家の管理を任された主人公が不思議な体験をする物語。科学的思考から解き放たれた感覚がこの世のすべてと混ぜ合わされたような豊かな世界。人とそれ以外のものの境界が曖昧な。
     こちらが不思議と思う出来事も物語の中では当たり前。この綺譚もかつては綺譚ではなかったのかもしれない。

  • 集中というより、没頭して読んだ。
    この頁数にしては時間がかかった。
    じっくりじっくり読めた。
    ずっととても良い気分だった。

  • まず、この本に出てくる言葉の豊かさに圧倒されっぱなしだった。

    全然読書をしていないわけではないので、それなりに読める本は多かったが、家守綺譚に出てくる言葉は初めて出会うものも多く、まさに無知を知ることとなった。

    作品全体の空気感が好きで、日常の中に紛れ込む非日常(化け物とか幽霊とか)が、あまりにもナチュラルに書かれているので、もしかしたら私の近くにもこういう存在がいるのでは?と思ってしまった。

    私は最後の葡萄のはなしが一番好きで、友人高堂の死の真相(…真相というかなんというか)もわかり、なぜこの本が生まれたのかの辻褄もあって、あぁなるほどと思った。

    よく考えたらそれもかなり綺譚な話なのだが、読み進めるうちに、少なからずこちらの感覚も染まっていってしまってる気がする 笑
    だから、最後の話を読んでも、すっと納得してしまう。

    梨木香歩さんの作品は、西の魔女が死んだの時から好き。
    家守綺譚はまた読み返して言葉を自分のものにしたいし、続編の冬虫夏草もぜひ読みたい。

    ちなみに単行本の表紙デザインがとても好きで、あえて文庫本ではなく単行本を選んだ笑

  • 日常と不思議なこととのあわいはとても身近だというお話。
    大それたことは起こらないけれど怪異はすぐとなりにある。
    そういう話が好きな人にはお勧め。

  • 湖に行ってから行方不明となった亡き友人高堂の家守をする売れない作家の綿貫。

    生活をする高堂の家で起こる植物や生き物たちのまか不思議な出来事。

    綿貫に想いを寄せるサルスベリ。
    突然住み着くようになった愛犬ゴローの賢さ。
    時々化かしてくる狸。
    鬼にカワウソに河童、掛け軸からボートを漕いで時々やってくる高堂。
    この世のものではないものの存在。

    偶然とは思えないタイミングで起こるそれぞれの物事。
    湖の底を知り、葡萄を食べることなく己のやるべきことを再確認した、なんだか少し抜けているけれど運の良い綿貫。

    こっちが最初の話だったのね。
    先に冬虫夏草を読んでしまった!
    そしてまた冬虫夏草を読み返したい!

  • ひょんなことから友人の家の留守を預かることになった主人公の身の回りに起きる不思議な出来事が、ゆったりとした筆致で描かれる。草木と意思疎通したり河童や化け狸が登場したり黄泉の国の入り口に行ったり。ファンタジー小説だがひょっとすると300年ぐらい前なら日常なのか、と思うような世界観。
    本書は、日向ぼっこしながら、ゆったり読むのに向いているかも。

  • 一つ一つの話が数ページの短編で書かれているので開いた時間に数話読めるのがちょうどいい。お寺の和尚、亡くなった友人の高堂、犬のゴロー、ゴローに会いにご飯を持ってきてくれる隣人、長虫屋…各話にちょい役で出てくる人物はいるが比較的に登場人物が少ないため整理しやすかった。

    なぜ掛軸から出てこられるのかなどと疑問を持って読んでしまうが考えない方が良さそう。河童や小鬼、幽霊も出てくるからいっそ掛軸を通り道にしててもと思えてくる。
    高堂と姫云々達の関係がよく分からなかった。。続きがあるとのことなので次に読むのはこちらにします。



    装丁もシンプルで素敵でした。
    立てておく時の背表紙も好きです。

    散歩するときなど、もう少し植物に目を向けて歩いてみようと思います。読んでいて花や緑の香りが感じられそうな一冊でした。綿貫とサルスベリのように話を聞かせて過ごしていると、いらぬモノまで寄ってきそう…

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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