- Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104412051
感想・レビュー・書評
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ある商店街を舞台にいろんな登場人物が少しずつ重なり合う話。それぞれが魅力的な人達で、ちょっとした出来事での感情の動きに、はっとさせられる。
取り上げていない人物の物語も読んでみたい。
すっごく好きな作品でまた読み返すと思う。 -
予想以上によかった。短編集だが、次の物語に前の物語の人が一部かかわっている形式。どの人も、どの家も、幸せ不幸せというよりは、希望と不思議と悲しみとおかしさといろんなものがミックスジュースになっているようだ。自分ひとりの力ではいかんともしがたいもの、思いもしなかったことが起こる喜びや悲しみ、人間の力と弱さ、作者の観察眼と表現力に脱帽。平凡な日常を、深く切り込んで書いていくこの人の作品が好きだ。
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東京東部の下町〜商店街を舞台にした連作短編集。
語り手が老若男女と次々と変わり、それぞれにまったく違った、些細で個人的な物語を進める。その物語の語り手は、いつも自立していて優しいから、読んでいてほっとする。ひとつひとつがどれかの話に薄く薄く繋がっていて、「あ、あの人はあの後こうなったのか…」ということが微かにわかる小さな歓び。読んでいるうちに、読者の中に小さな街が生まれる。
どの話も面白くて選べないけど、おかみさんの央子さんと板前の廉ちゃんの15歳差の恋愛を描いた「四度目の浪花節」は、大人の恋愛だな〜という風情で素敵だった。
表題作の「どこから行っても遠い街」は、”生きてきたというそのことだけで、つねに事を決めていたのだ”ってことに、瞬間気づく不倫男性のお話。人生の核心めいたことをはっきりとわかりやすく記してあって、意外な感じがした。
最初の「小屋のある屋上」で、商店街の魚屋さん魚春の平蔵さんが、両親、義両親、実妹、奥さんと立て続けに亡くしているという事実がわかり、最後の「ゆるく巻くかたつむりの殻」は平蔵さんの亡くなった奥さんが語り手です。
奥さんは「好きな人が死ぬと、すこし、自分も死ぬのよ」といいます。平蔵さんは、死んだ人間もまだ死んでない、といいます。奥さんが自分の記憶を「はかない」と思い起こしていて寂しい気持ちになるけれど、最後は「捨てたものではなかった、わたしの人生」と終わるから、少し救われた気持ちになりました。
最初と最後の話のせいなのか、死に包まれたようなふわふわした気持ちが残って、「どこから行っても遠い街」は黄泉の国のような気がしてきます。ただの小さな商店街だけど、黄泉につながっているような。一生辿り着けないような。なにげない自分の生活だって死に向かっているということか。生きること自体が、すべて。 -
好き。良い。
「四度めの浪花節」がとくによかった。
わたしも、うんと年上の女の人に夢中になりたい。
と、なぜか、男の立場で思ってしまった。-
2012/11/08
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川上弘美さんは、趣味に合わないなんて、長らく思っていたけれど。
だれもが絶賛する「先生の鞄」もいまいち楽しめなかったし・・・。
でも、これはとてもよい。しっとりと川上ワールドにひたりました。読むのをやめたくないような楽しみ。終わりが近づくのが残念なほど。 -
こういう感じ好き。
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ゆるりと繋がる人と人の短編。
街は人でできている。
息づいている。 -
ここに出てくる人たちとも、わたしは違う感じだなあと思いながら読んでいたら、この"違う"感覚が出てくる1話があった。最終的には身近な人の死について考えることも同じで、共感で終わったので、可笑しな気持ちになった。手元に置いておきたい本です。