- Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104507177
作品紹介・あらすじ
版元の山青堂です。超超超目利きな、今で言う編集者です。旗本のお殿様・高屋彦四郎様(通称彦さん)を戯作者にスカウトしたのは、このあたし。最初は渋っていたけど、彦さん、どんどん戯作の虜になっていきました。けど、人の心を強く動かすものには、お上が目をつけるのが世のならい。命をおびやかされるかもしれぬ。しかし、戯作を止められないのだ。なんて、かっこいいこと言ってる場合じゃありませんから、彦さん。はて、この顛末や如何に!?-お江戸の大ベストセラー作家の正体は、イケメン旗本だった!?「しゃばけ」シリーズ著者によるニューヒーロー誕生。
感想・レビュー・書評
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実在した戯作者・柳亭種彦を探偵役にしたお江戸人情もの。
若き日の無名時代の話で、当時の出版のやり方などもよくわかります。
柳亭種彦、本名は高屋彦四郎知久という二百俵取りの旗本。
れっきとした武士のお殿様なのだが、実際には何の役もなく暇をもてあまして狂歌などの趣味に生きていました。
かわいい妻の勝子を大事にしている愛妻家。
他人事と構えていた問題も、妻に迷惑が及びそうになると、腹を決めてかかります。
版元の山青屋と知り合い、戯作を書くように勧められます。
この山青屋は調子がいい妙な人物で、おだてたりすかしたりの合間に、仮にもトノサマの彦さんにかなり失敬なことを言うため、蹴飛ばされたり大人気ない取っ組み合いにまでなる。
6話収録。
最初に面白おかしく、登場人物やその時代の説明が入ります。
連載中だとわかりやすいのかな。
問題が起きたとき、種彦がその場で戯作の筋を思いついて語ると、それが推理になっていて、事件の真相に近かったという展開がユニーク。
1話では、山青屋の手代・長助が町名主の屋敷の女中・お仙にほれて、二人で団子屋の店を出すための金を用意したが‥?
2話では、上役に当たる旗本からの依頼で、遺された歌の意味を解くことになる種彦。
3話では人気作「御江戸出世物語」の作者は覆面頭巾と名乗り、正体不明。
種彦の妻・勝子がその作者だという噂が流れ、大迷惑。
4話では、夏乃東雲の筆名で「恋不思議江戸紫」という本を出した種彦に、重版(当時は盗作のこと)の訴えがおきます。
しだいに広がる人間関係や、当時ならではの問題、種彦の屋敷に仕える腕が立つ中間の善太の正体なども面白く生かされています。
創作に取り付かれていく人間の気持ちは、現代に通じるというか、作者の心境に通じているような。
種彦は武士だけど腕っ節はからきし弱い、のはシーンによっては面白いけど、病弱とまでいくと若だんなとだぶっちゃって、それは要らない気分に。
たまにプライドも顔を出すあたり、さすが武士?
読者のこちらも畠中さんの新境地は読みたいし、いつもの良さもちょっと欲しいというのが難しいところかな。
面白く読めましたけど~若き日の話なので、シリーズには出来ないのかな‥?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お江戸版、出版ミステリーとでもいいますか。
けさくしゃとは漢字で書くと戯作者、つまりは作家さんのこと。
江戸時代の作家・出版社・本屋・読者が、かようであったのよ、ということが
ちょっとした事件とともに描かれていてなかなか興味深い。
謎そのものはいまひとつな印象だけど、身の回りで起こる騒動やら問題を、戯作を創作することで解決へ導いてゆくという趣向はおもしろかった。
畠中恵さんにしては、ちょっと物足りない感じがしたのだけど、最後まで読んで、それでも書くのを止められない戯作者に爽快な気持ちになりました。
身分ある人たちだけの娯楽や教養でなく、町人文化として本が読まれていた江戸時代。
出版業界の頑張りあってのことなんですね。
現代の戯作者さんたちも拍手。
新しいシリーズものになりそうだな、と思いながら読んでいたんですが、主人公の種彦さん実在するんだねぇ。 -
この時代の出版事情とか諸々を知っていれば、
楽しく読めるのではないかと思います。
知らないと、ちょっと設定を追うだけでつらいかも。
私はずいぶん楽しませていただきました。
戯作を語ることが現実の謎解きにつながるという破天荒な設定もおもしろい。
そして、なによりも戯作に憑りつかれている人々が魅力的。
書かずにはおられない人々がいるからこそ、
いつの時代でも我々読者は日々の生活に潤いを得られるのです。
ありがとうございます、物書きの皆々様。
シリーズ化しないのかなぁ。 -
「週刊新潮」に連載したものの単行本化。
江戸の戯作者柳亭種彦の小説家デビューを題材にした物語。
二百俵取りの旗本ながら、小普請組でヒマをもてあまし、狂歌
の連に参加していたのが、身近に起きた事件をおもしろおかし
く話に仕立てた本が、出版された。
版元、挿絵を描く絵師、版木を彫る彫り師、印刷する刷り師、
それに、貸本を持って回る貸本屋、さらにそれを読む庶民が
いてこそ成り立つ、「戯作」の世界。
出版の仕組みだけでなく、行事による重版=パクリの審査、
禁書の取り締まり、さらには上方の先進出版界に追いつく時
の軋轢。
そういう社会背景もしっかり描かれる。
だが、いちばんの眼目は、小説家として「なぜ書くのか」だ。
書きたいことは何で、どういう構成の手法をとるのか。全く
最初から創作する場合。題材を拾って、枝を伸ばしてつなぎ
合わせ、欠けている部分を埋めていく場合。
種彦と、彼より先に売れた四千石取りの大身旗本の奥方が
仲間の集まる場で、二人で創作を交代で繋いでいく場面も
ある。
この、題材を拾って、枝を伸ばしてつなぎ合わせ、欠けている
部分を埋めていく作業は、殺人事件や未遂事件の解決をして
いく手法としても描かれる。
小説の中の小説、である。
江戸の文学が、一段と身近になる一冊。だが、少々読みづらい。 -
かなり期待して読み始めてしまったのであまり人物に思い入れできなくて期待外れと思ってしまったのですが、戯作で謎解きというちょっとしたミステリを読んでいると感じられるようになってからはお勝さんが格好よかったり謎の善太に惹かれたりと楽しめました。主人公にもっと惹かれるものがあれば更に楽しめたと思うのでそのあたりがちょっと残念。シリーズの最初の一冊かと思っていのでほっこりと綺麗にまとめて終わってしまいびっくりしました。主人公が実在だったというのにさらに驚き、読後経歴など調べてしまいました。
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面白かった。これは一冊まとめて一気に読むのが楽しいや(ノ´∀`*) 本読むのって楽しいね(≧∇≦)b
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実在の人物、柳亭種彦をモデルに、その始まりを笑いあり、謎解きあり、友情ありで読みやすく仕上げた作品。軽く読めるし、周囲はいい人ばかりなので和む。ほんのりミステリ仕立て。
自由な創作が禁止されていた時代でも、やはり娯楽を求める人々は沢山いて、手鎖になっても書くのをやめられない人もいて。文章や物語の重要性や素晴しさを描く作品は、本好きとしてはわかるわかる!とついついテンションが上がってしまう。 -
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「現代と全然変わらない・・・」
それはビックリ、、、(畠中恵は「しゃばけ」シリーズしか読んでません)
著作権に関しては、近代?の方が意識...「現代と全然変わらない・・・」
それはビックリ、、、(畠中恵は「しゃばけ」シリーズしか読んでません)
著作権に関しては、近代?の方が意識が低かったのかな。と思ってしまう。2014/03/27
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主人公は妻をこよなく愛する二百俵取りの旗本、高屋彦四郎知久、通称種彦である。
これは、江戸時代の大ヒット作『偐紫田舎源氏』(にせむらさきいなかげんじ)の作者、柳亭種彦をモデルとしているようだ。
と言っても、この作品では種彦はまだ戯作者ではなく、なんの役にもついていない貧しい旗本で、ただの趣味人として毎日だらだらと過ごしているという状態である。
この作品も、やはり畠中氏お得意の人間関係にまつわる謎を主人公が解き明かしていくという風に進んでいく。
だた、他作品と違うところは、主人公が推理というよりは、戯作によって明らかになっていない事象を創作することによって解決に導くという手法をとっているところだろう。
ストーリーとしては、江戸の風俗などがよくわかりおもしろいのだが、謎解きとしてやや回りくどいような印象を受けた。
もちろん主人公たちは、ある事が原因となって引き起こされた結果しか見ていないのだから、原因に辿り着くまで右往左往するのは当然である。
だが、当事者たちがなぜそこまでするのか、なぜそのような行動を取るに至ったのか釈然としない部分も散見した。
つまりは、犯人側(?)の切羽詰まった、追い詰められた心情があまり見えてこないからだろうか? -
畠中恵だから、期待しすぎたのか?
どうも今一つ話の展開にしっくりこない。