東京湾景

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104628018

作品紹介・あらすじ

「…最初がメールだったから仕方ないのかもしれないけど、なんかずっと、お互い相手を探ってるっていうか…。信じようとは思うのに、それがなかなかできないっていうか…」亮介の声を聞きながら、美緒は窓辺に近寄った。「ほんと、なんでだろうね?」東京湾岸を舞台にきらめく、寄せては返す強く儚い想い。芥川賞、山本賞受賞作家が紡ぐ、胸に迫るラブストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • 昔、ドラマがあった。見てなかったけど。
    東京湾を挟んで、かたや品川の貨物倉庫で働き、彼女はお台場で働き。
    いつか終わるのであろう恋をお互い思いながらも、離れられずにいる。

    私も遠い昔、この舞台の近くに住んでたな~って思いながら読みました。

  • 本編より、引用

    あれは何の雑誌だったか、府中市にある禁酒サークルを取材した記事が載っていて、
    そこに「溺れる」というのは、自分がなくなり、魂を吸い取られることだ。
    「溺れる」のと「のめりこむ」のはまったく違う。
    「のめりこむ」というのは感覚の問題で、「溺れる」というのは魂の問題なのだ、と書かれてあった。


    「・・・人ってさ、そうそう誰かのこと、好きになれないだろ?
     俺、あの人と別れてからそう思った。誰かのことを好きになるって、
     俺に言わせりゃ、自分の思い通りに夢を見るくらい大変で、
     なんていうか、俺の気持ちのはずなのに、誰かがスイッチいれないとONにならないし、
     逆に誰かがスイッチ切らないとOFFになってくれない。
     好きになろうと思って、好きになれるもんじゃないし、嫌いになろうと思ったって、嫌いになれるもんじゃない・・・・」


    「・・・ほんとに愛してたんだよ。・・・なのに、あんなに愛してたのに・・・・、
     それでも終わったんだよ。人って何にでも飽きるんだよ。、
     自分じゃどうしようもないんだよ。好きでいたいって思ってるのに、
     心が勝手に、もう飽きたっていうんだよ。
     ・・・終わらないものってあるか?」


    「なぁ、もしさ、今、俺がここからそこまで泳いで、お前に会いに行ったら・・・、
    俺が、お前に飽きるまで、ずっと俺のそばにいてくれる?」

  • お互いのことを探り合っていたのは、2人でなく読んでる私もでした。

  • 会話よりも肌を重ねることで互いの存在を確かめ合う的な男女が長いこと探り合いながら、真の気持ちにたどり着いていく恋愛物語。
    「ちゃんとしたデート」のコース選びに関する場面や、”始まったものは必ず終わる。女が先に気持ちが薄れる場合もあれば、男が先の場合もある”的な教示にはぐっとくるものもあったが、全体的には二人の状況設定が下衆すぎてあまりにも現実感が湧かない物語だった。

  • 「いつもの場所で」と待ち合わせをしたふたりが、待ち合わせ場所には現れず、ただ「いつもの場所」が延々に映し出されて終わる日蝕という映画のエピソード。自分にとって待ち合わせ場所に行かなかっことが答えのように、その後、連絡をよこさなかった亮介にとっても、それが答えなのだろう。悲しい出来事の後の、ラストの展開が良かった。

  • わかりあえるから、じゃなくて、わかりあえないから。
    身体と名前の結び目が「出会い系サイト」で出会ったことからも曖昧で緩い紐と紐であることを匂わせる。
    わかろうとする、ということは簡単そうに見えて全然簡単じゃない。わかりあえないことを突きつけられるのも苦しい。
    アタマで考えるのが先か、カラダとキモチが先か、レンアイって難しい。

  • 短編連作集。 話が前後する、とでもいいましょうか。それが吉田さんの作風なんでしょうね。

  • 共感できたり、納得できなかったり、何だかわからない作品。相変わらず、吉田作品は、えっここで終わりが多い気がする。

  • 品川の船積倉庫で働く亮介。出会い系サイトで知り合った「涼子」と軽い気持ちで会いに行くが、モノレールに乗っただけで別れてしまう。

    メールであれば気軽に話せる「涼子」に亮介は惹かれていき、二人は深い関係に。でも涼子という名前は偽名だった。

    作中でも言われていますが、出会い系サイトで知り合った相手にまさか本名と本当の勤務先は言わないわなぁ。どんな始まり方であれ、その恋が本物であればなんだってかまわない気がした。

    最後、お互いにすべてを打ち明けた二人は東京湾を挟んだ別々の場所で、携帯の電波を使い愛を確かめ合う。

    亮介なら本当に海を渡ってきそうな気がする。

  • 出会い系サイトで知り合った二人。
    男には彼女がいて、女は名前も職場も嘘をついていた。
    そんな二人が恋に溺れ始めるが、どこかお互いを信じ切れない。


    いつだったかに月9でドラマ化された作品の原作。
    もうストーリーもキャストも覚えてなかったので読んでみましたが、読んでいるうちに少し思い出しました。

    恋にまっすぐに生きられない不器用な大人の恋愛。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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