君が夏を走らせる

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 268
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104686032

感想・レビュー・書評

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  • 最後の鈴香ちゃんとの別れのシーン、個人的には恋人との別れのシーンよりずっとずっと切なかった。小さな子どもとの別れには、自分は忘れられてしまうという哀しみが含まれている。でも一方で、子どもは一緒に過ごした日々をカタチあるものとしては記憶していなくても、子どもの中に輝く何かとして確実に染み込んで、その子どものこころを支えていくだろうと思う。

  • まだ子供は居ない私ですが、丁度2歳の姪っ子がいるので自然に照らし合わせて、読みながらニヤニヤしてしまいました笑
    あーそうだったなぁ、慣れるとおいで!の一言に周りに目もくれず一目散に来てくれるあの可愛さったらない!ただ今妊娠中です、早く赤ちゃんに会いたくなりました(^^)

  • 読みやすくて すいすい読んでしまった。
    読みながら甥っ子との夏休みを、思い出してしまった。

    あと少し、もう少しのヤンキー大田くんが今を精一杯生きている
    ぶきっちょで、言葉足らずで、優しい大田くんがどんどん鈴香ちゃんにはまっていくことが素直に感動した。

    子供って3歳までの記憶ってほとんど忘れてしまうって
    でも かわいくて、笑顔がたまらなくて、ぎゅっと握る小さな手とか 柔らかい温もりとか、こんなにも動かしてくれる子供ってすごいな
    自然と人を笑顔にさせて
    色んなこと吸収していく
    大人の一ヶ月と全く違うのかもしれないけども

    一瞬を忘れないために 今の毎日が幸せであるようにしたい
    大切な人を大切にしたい

  • 落ちこぼれが集まる最低ランクの高校の2年生の俺・大田。同じ高校を1年で中退した先輩から先輩の娘・鈴香(1歳十か月)の子守をのバイトを頼まれる。奥さんが切迫流産のために一か月入院することになったのだ。初めて触れる1歳児。はじめの3日間は、ズーっと泣かれていたが、徐々に慣れお互いのペースがつかめていく。金髪にピアの俺が、鈴香のために昼食を作り、絵本を読んでやり、おむつを替えてやり、公園ではママ友までできる(!)。日に日に成長していく鈴香を見ながら、自分の生活を顧みて、中学時代に唯一充実感のあった駅伝を思い出し、自分のこれからを考え始めていく。

    こんなにうまくいくのは小説の中だから…、なんて言ってしまっては元も子もない。でも、なかなかうまくできていた。もうすぐ2歳という子どもの姿もよく書かれている。それに、大田は基本的にいい子だ。自分のこともそこそこよくわかっているし、周囲の人たちへの思いやりもあり、やさしい。さわやかな読後感というのはこの本の感想としてピッタリだった。

  • 高校受験に失敗し、目標を見つけられないまま高校生活を送っていた大田。
    夏休みに先輩に頼まれやることになったアルバイトは、2歳前の女の子のお世話だった。

    続編と知らず手に取りました。
    折々に出てくる前作品のシーンに、その作品は絶対読まなければと思わされます。

    不良だけど、実は心の暖かな大田。
    中学時代に駅伝を走り、一旦は真っ当になったのに、受験の失敗でまた道を踏み外しかけていたなんて。
    この年頃の子には、環境はやっぱり大事ですね。

    でもこの夏の経験で、きっと彼はまた新たな目標を見つけていけるでしょう。
    私も鈴香と一緒に「ばんばってー」と大田を応援していきたいと思います。

  • 受験に失敗し、高校生活を楽しめずにいた『あと少し、もう少し』の大田が、夏休みに頼まれたバイトは、1歳児のお世話だった。
    幼児ならではの、感情のストレートさや、あいくるしさに満ちている。
    鈴香のかわいらしさが、ほほえましかった。
    大田がいろいろ感じ、成長していく姿はよかった。
    ただ、1歳児の育児は、予備知識も練習もなくできるほど、かんたんじゃない。
    水分を大量に摂取する真夏に、朝9時から夕方まで預かって、おむつをまったく変えないとか、非現実的。
    都合よすぎる感はあった。

  • やんちゃな16歳の男の子が、1歳10ヶ月の女の子の子守りをすることになったお話。
    平坦に物語は進むけれど、子育て中の私にはとっても読みやすかった。なにより2人の成長が眩しく、心温まるストーリーだった。
    大田くんが鈴香に作る離乳食?幼児食?レベルが高い(笑)私も食べてみたい。
    大田くんはヤンチャだが母から愛情を持って育てられているし、中学校の時の駅伝での経験から、これからの未来も明るく感じられて読後感が良かった。

  • 一見感動作のように思えるが、主人公補正で成り立っているように思えた。公園で他の母親たちとする育児の話や、鈴香とのやりとりも細部までこだわっているように思える。
    だが、主人公が鈴香可愛さのあまりに、鈴香母方の両親(祖父母)に勝手に手紙と写真送りつけるのには正直引いた。高校生ゆえの浅はかさだったかもしれないが、ただの自己満足の行動。
    不良とつるんでた設定も、別にいらなかったんじゃ?と思うほど、ヒヤヒヤさせられるシーンがなく、安心して読みたい人向け。

  • 読んですぐに、不良が幼児の世話を頼まれるストーリーだと分かるが、その不良の主人公が「あと少し、もう少し」に登場した金髪不良の大田だったのが驚いたし、すこし感慨深かった。

    子育てに不慣れな主人公と幼児との交流というモチーフは、マンガ「かくしごと」「うさぎドロップ」で感動できた自分には鉄板のモチーフである一方で、不良が内心では葛藤を抱えていて改心していく〜みたいな話は大嫌い、つまりアンガールズ田中と同じ考えを自分は持っているので、この本を読み進められるかだんだんと不安になっていった。

    案の定、大田の周囲には不良がたくさんおり、その描写を読んでいるとイライラしてくる。そんな中でも、大田や鈴香の父である中武先輩は、今ではカドが取れてまともな側に属している描かれ方をしているが、悪びれもせずにワルやってた人間は終生更生しないと私は考えているし、そういう人たちを敬遠してしまうので、この本が私が嫌いな「元やんちゃ少年がいろいろ悩みながら現実と折り合いをつけるハートウォーミングストーリー」なのだなと分かった50ページぐらいで嫌になって、飛ばし読みして一応結末を読んで読了。

    歳をとるにつれて心が広くなるどころか、無理なものとは即座に距離を置くタイプの大人になりました。

  • 1歳11ヶ月の子どもにとって1ヶ月というのはとても密で、十分成長できる期間というが、大田くんもこの先の人生観が変わるほど成長していた。本当に心の優しい少年だと思う。大田くんの想いに鈴香がうれしそうに応えて 、鈴香なりの表現が増えていくのも微笑ましかった。鈴香と過ごす最後の日の場面は読んでいる方が胸を締めつけられ涙したが、大田くんは自分と鈴香それぞれの未来を見据え、前を向いており、真の愛情と強さを感じた。優しさに満ち溢れた作品でとてもよかった。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

瀬尾まいこの作品

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