アップルvs.グーグル: どちらが世界を支配するのか

  • 新潮社
3.67
  • (16)
  • (40)
  • (28)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 400
感想 : 34
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105065713

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • iPhoneとandroidの開発競争を描いた力作。ビジネス書として購入したが、想像よりもずっと読み応えのあるルポだった。最初からずっと面白いが、Apple製品の中でiPodやiPhoneよりもiPadが「コンバージェンス」(ITとマスメディアの融合)を実現したという点で最も大きなイノベーションだったと評価している点が面白かった。個人的にタブレット端末の面白さに気づいたのが最近だったのでなおさら説得力を感じた。

  • アップル vs グーグルという題名だが、内容はiOSとandroidのプラットフォーム戦争の話。ジョブス健在の頃、グーグルの会長はアップルの社外取締役だったわけですが、グーグルの社内には買収したandroid開発チームもあったので、なんとも言えない状況だったのだと理解できました。

    しかし、この本の原題はdogfightなので、二匹の犬の闘争のように二社が争っていくことで、結果的にテクノロジーが進んでいくのだろうと感じられた。

  • 見落とされがちだが、アップルが直接グーグルを訴えた例はない、という指摘に虚をつかれた。無料でプラットホームを提供しているだけで訴えにくかったのも要因なのだが、ジョブズがどうしてシュミットをアップル取締役に置き、直前まで騙されていることに気づかなかったのかの検証を読むと合点がいく。控えめで、もめ事を巧みに避け、顧客情報収集などの追及にも簡潔に釈明する「最高説明責任者」。この狸にはマイクロソフトも騙されている。彼がどうしてこんな争いになったのかわからないと嘯くと、アップルは「かさぶたをうがされる」思いらしい。

    アップルによるiTunesを軸にしたコンテンツ・プラットフォームの砦に戦いを挑んだマイクロソフトをはじめとする競争相手がことごとく失敗し、それまでとは次元の異なるゲームを挑んだグーグルが真のライバルとして残った要因もよくわかる。

    アップル対グーグルの闘いは、従来の「プラットフォーム戦争」とはならない可能性も指摘する。かつては、ひとつのプラットフォームでしか動かない高額なアプリが資産となって乗り換えを難しくしていたが、無料で複数のプラットフォームで使えるアプリが増え、クラウドにデータを置いておける昨今では、乗り換えのコストはかつてなく小さくなっている。

    結局、勝者はどちらなのか? 著者はグーグルが優勢とみる。携帯電話やタブレットのシェアで押され、株価もかつての勢いはアップルにない。しかし、だからこそ次の革新的な新製品を期待する。それはiPadの例があるからだ。単にiPhoneを大きくしただけと冷ややかな反応だった製品が、数千億ドルの新たな市場を創り出したのだから。グーグルはその土俵で戦っているだけなのかも。

    アップルを去ったスコット・フォーストールに対する評価は手厳しい。ファデルとの不毛な争いも、スコットの狭量で自己愛の強い性格に原因があるとする。ジョブズに愛されたのは単に、その才能ゆえではなく古参で同時期にそれぞれが体の不調に苦しんでいたためだと。現時点では彼を悪く言う証言しか集まらなかったのかもしれないが、著者があれほど絶賛するiPadの責任者は彼である。

  • のっけから何ですが、この本、無茶苦茶面白いです。

    アップルがiPhoneでつくりあげたスマフォ市場に、グーグルがアン
    ドロイドで参入。その結果、それまでシリコンバレーの中でも最も
    緊密な関係だった二社が、骨肉相争う戦いを開始。そして、アンド
    ロイド端末がiPhone以上のシェアをとるようになると、アップルは
    iPadを出して、タブレット市場を革新。しかし、これまたアンドロ
    イド端末が過半数のシェアをとるようになる。

    …とまあ、アップルが切り開いた市場をグーグル陣営が追って、結
    局、アップルが数の上では負けていく、という構図が繰り返されて
    いく過程を本書は描いていくのですが、それ自体はまあどうという
    ことはありません。

    面白いのは、iPhoneやアンドロイドのような、「世界を変える製品」
    がいかに生まれたのかという開発秘話を、スティーブ・ジョブズや
    エリック・シュミットなどの「英雄」達の視点ではなく、その他の
    幹部やエンジニア達=「シリコンバレーの『見えない』英雄」たち
    の視点で描いているところです。無名の人達の話から紡がれる舞台
    裏のドラマは、本当に興味深く、かつ、示唆に富みます。

    真っ先に思ったのは、ここまでやらないと世界を変える製品を生み
    出すことはできないんだな、ということでした。アップルもグーグ
    ルも、本当に凄い。ここまでやるか、と正直、思います。でも、凄
    く能力の高いエンジニア達が、ここまでこだわって、ここまでボロ
    ボロになるまで働かないと、不可能を可能にすることはできないん
    だな、とも教えられるのです。自分の甘さを痛感させられもします。

    そして、アップルが特に凄いのは、その凄い能力の持ち主達を平気
    で使い捨てにできてしまうことです。ジョブズの強烈なエゴで追い
    込んでいくので、皆、燃え尽きてしまう。アップルの製品の陰には、
    死屍累々の屍の山ができている、という感じです。それを非道とと
    るか、王道と讃えるか、評価は分かれるでしょう。

    だけど、やっぱりジョブズはチャーミングなんです。iPhoneの開発
    者に対して、「みんなが恋に落ちる電話をつくりたい」なんて言う
    のですが、こんなこと言える人、なかなかいないですよね。

    一方のグーグルは、アップルの独裁者的なスタイルは体質的に受け
    付けない。だから、ジョブズのことを尊敬してはいても、アップル
    が、ジョブズの世界観でこの世界を染め上げようとしていることが
    許せない。これは、アップル対グーグル、というより、クローズド
    対オープンの戦いであり、信じる世界観自体の戦いです。

    結果論から言えば、グーグルのオープンモデルが勝っているように
    見えますが、人の心に残るものを生み出せているのは、やはりクロ
    ーズドな独裁者モデルのアップルが生み出した製品達なんですよね。
    そこがまた興味深いところです。

    なお、本書は、アップルとグーグルの戦いを描きながらも、これか
    らIT業界が向かう先、情報化社会の行く末を教えることを怠りませ
    ん。「クラウド」「ビッグデータ」「プラットフォーム」など、流
    行の言葉の真の意味も、アップルとグーグルの戦いの中から理解で
    きることでしょう。それがわかれば、なぜグーグルが自動運転車の
    開発に注力しているか、なども見えてきます。

    新しいもの、世界を変えるものをつくりたいと思っている人は勿論、
    情報化社会の向かう先、メディアやコンテンツやデバイスの行く末
    を読み解きたい方という方にも必読の一冊だと思います。

    是非、読んでみてください。

    =====================================================

    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

    =====================================================

    アップルのiPhone、iPad、iPodタッチの合計売上は年間二億台を
    超えている。これは全メーカーのテレビの年間販売台数とほぼ同じ
    で、車の約4倍だ。

    いまやグーグルは、アンドロイド搭載の携帯電話だけでなく、家庭
    内外のあらゆるところで消費者とつながるようになった。

    技術とメディアとコミュニケーションの交わり方について、大規模
    な再検討が始まっている。世界最強の二社は、そうしてできる新し
    い社会を支配するために戦闘態勢に入った。

    彼らはたんに、どちらの陣営が最高にかっこいいデバイスを作るか
    を争っているのではない。そのデバイスがつながるオンラインスト
    アやコミュニティ-いわゆる「クラウド」-の支配権を握ろうとし
    ているのだ。

    これは「プラットフォーム戦争」だ。(…)歴史はこの種の闘いの
    勝者が七五パーセント以上の市場シェアを獲得することを物語って
    いる。

    私たちが「情報」と考えるもののほとんどが、アップルかグーグル
    のプラットフォームに乗ることになる。

    世界を変える製品を作るのはただの「仕事」ではない。「探求の旅」
    だ。あらゆる仕事と同じように従事者を疲れさせるだけでなく、し
    まいには精神的、肉体的に消耗させる。トラウマになることすらあ
    るかもしれない。リーダー、そして著名人としてのジョブズの魅力
    は、それらすべてを世間の目から隠し通したことにもある。

    アップルとグーグルには、世界を変えるというのが本当はどういう
    ことなのか、世界に知ってもらいたいエンジニアが大勢いる。いま
    やわれわれが当たりまえのように買って使っているスマートフォン
    とタブレットができるまでには、怒鳴り合いがあり、叫び声があり、
    中傷、落胆、パニック、恐怖があった。そうしてやっとプロジェク
    トが前身し、製品が消費者の手に届くのだ。

    「トイレでメールを読む端末が欲しいとスティーブが言ったんだ。
    製品の仕様はそれだけだった」

    グーグルの成功の原動力は、一流大学から雇い入れるエンジニアの
    質の高さである。ほかの企業でよくあるように、彼らに海兵隊に入
    ったと感じさせるより、まだ大学にいる気分で創造力を大いに発揮
    してもらいたいのだ。

    ジョブズは、製品をいつ発表するか、ハードウェアとソフトウェア
    をどうデザインするか、消費者の欲望にどうやって火をつけるかと
    いったことに比類ないセンスを持った、驚くべきイノベーターだっ
    た。それを何度もやるのだから、誰も敵わない。まさに天才だが、
    iPhoneで使われた技術のほとんどは彼が発明したものではなかった。
    ジョブズがあれほど成功したのは、何事においても最初にやろうと
    しなかったからだ。

    「スティーブに、iPhoneで何をしたいのかと尋ねたのを覚えてい
    るよ」とボーチャーズは言う。「答えは、“みんなが恋に落ちる電
    話を作りたい”だった。“何々に革命を起こそう”ではなく、“ク
    ールなものを作ることを考えよう。みんなが恋に落ちれば、それで
    何をしたいのかがわかる”だった」

    アップルは細部にこだわりながら、最高の機器-形状と機能の完璧
    な融合-を厳しく追求するジョブズの力で成功してきた。一方グー
    グルは、プリンとペイジの奇人ぶりとカオスを受け入れる懐の深さ
    で成功してきた。

    アップル内外の幹部が、ジョブズはアンドロイドに対してマイクロ
    ソフトのときと同じあやまち-プラットフォームを厳格に管理しす
    ぎる-を犯すのではないかと危惧すると、ジョブズはいっそう彼ら
    の危惧する方向に突き進んだ。

    iPadは、五つの産業をひっくり返したのである。本・新聞・雑誌の
    買い方や読み方を変え、映画やテレビを見る方法も変えた。それら
    のビジネスの総収入は2500億ドル、国内総生産(GDP)の約2パ
    ーセントにのぼる。

    携帯電話とタブレットの市場におけるアンドロイドのシェアは着実
    に伸び、スマートフォンでは75パーセント、タブレットでは50パー
    セントを超えた。

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ●[2]編集後記

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    大雪の影響で混乱が続いていますね。それぞれに大変な思いをされ
    たのではないでしょうか。

    北国の人には当たり前の雪も、首都圏の人には非日常。「ぜんぶ雪
    のせいだ」というJR東日本のCMが人気ですが、このCMが成立するの
    も、それだけ雪が首都圏の人には遠い存在だからでしょう。雪⇒非
    日常⇒恋愛、という連想は、とても「東京的」だと思います。

    雪で首都圏が混乱するたびに思うのは、「豪雪地帯ではこれが日常
    なんだよな」ということです。北国の歴史は、雪との戦いの歴史で
    もあったわけで、「ぜんぶ雪のせいだ」と言って諦めないとやって
    いけない部分と、そう言って諦めては許されない部分とが、複雑に
    絡み合った暮しをしてきたのでしょう。

    そもそも、「雪との戦い」という言葉自体が間違いかもしれないですね。雪は、
    人間ごときが戦えるような相手ではないですから。今回の大雪では、そのこと
    を思い知りました。なす術がない、戦えるような相手ではない自然の力を人間
    が何とかできると思うこと自体が、人工都市・東京に暮らす人の発想なのでし
    ょう。

    今回の大雪含め、最近の異常気象の頻発は、そういう「東京的」な
    発想なり生き方の脆弱さを露呈させます。ではどうすればいいのか。
    悩ましい問題ですね…。

  • スマートフォン戦争の裏事情がおもしろすぎて、分厚い本だったけど、一気読み!かなりおすすめ!

    今や当たり前となってしまったスマートフォン。
    ずっと前からあるような気がしてるけど、本格的に日本で普及したのは、ここ5年くらいでしかないんだな、と。
    そんな短期間の間に、濃密度な戦いがシリコンバレーで繰り広げられていたとは!

    以前から思っていたんだけど、非常に興味深いのは、ジョブズの発想と、GoogleもしくはMSもしくはオープンソースの発想。

    完全にコントロールされた環境で最高の体験を主張するジョブズ。
    世界は自由なんだ!自由な世界でいろんな体験してみようぜ!を主張するGoogleもしくはMSもしくはオープンソース。

    相反する思想ではあるけれど、どちらも共感できる部分はある。
    たぶん、どちらかが唯一の最適解なのではなく、この2極の間をふらふらとしながら、世界は進んでいくんだろうなと、そう、思う。

  • しっかり取材してていい感じ

フレッド・ボーゲルスタインの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×