わが教え子、金正日に告ぐ: 脱北エリート教授が暴く北朝鮮

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105090319

作品紹介・あらすじ

激しい権力争いに勝利した金正日が絶対君主となり、北朝鮮は生き地獄と化した-。相互批判が強要され疑心暗鬼が渦巻く職場、密告や検閲に怯える家庭生活、常に死と隣り合わせの日々…。低い出身階級から異例の出世を遂げ、首領一族の家庭教師も務めた著者が、間近で見た権力者の姿と支配される人民の苦悩を語った。

感想・レビュー・書評

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  • 1992年に亡命した北朝鮮のロシア語教授による手記。

    脱北者の本をそれなりに多く読んできた。そうして思うのは、北朝鮮のように住んでいる地方や出身成分、年代が違えば、生活そのものが大きく違うといった国では、幾人かの体験を聞くだけでは不十分なのだ。そういう意味では、同書はすでにかなり古い本であり、著者の体験した北朝鮮は現在の北朝鮮とは大きく違うものかもしれないが、一人の北朝鮮人の体験として価値があるものだと考える。

    ただし、一つ気になったのは、著者が北朝鮮にいたときに知り得た情報と、国外に出たあとに知った情報が混ざっているように感じる点だ。金正恩の母親・高ヨンヒに関する情報は長い間西側で信じられていた「誤報」を元に書かれている。著者は金正日の異母兄弟(ギョッカジ=脇の枝という意味で「粛清対象」)の家庭教師をしていたのであり、金正日のプライベートについて多くを知る立場ではなかったようだ。その点は注意が必要だ。

    内容について多くは書かないが、とても印象的なエピソードがあった。北朝鮮による大韓航空爆破事件のあと、北朝鮮はそれが韓国の自作自演だと反発し、国内では韓国を糾弾する集会が連日開かれたという。もちろん、著者を含めた大学教授らもそれに参加して韓国を非難し、集会途中の休憩時間にほかの大学の教授と会話を交わす。
    「自殺しようとして生き残ったあの女性工作員、あなたのところの日本語学科の学生でしょう」
    そうだ。その女性工作員・金賢姫は北朝鮮で生まれ育ち、学校にも通っている。彼女を知っている人たちは当然、複数いる。しかし、北朝鮮では皆それを口にすることなく「韓国の自作自演だ」とする集会に参加し、当たり前のように韓国を非難する。これはまさに「1984年」の「二重思考」ではないか。

    著者が亡命したあと、北朝鮮の状況はいい意味でも悪い意味でも大きく変わっているだろう。しかしこうした「二重思考」的な、知っていることも知らないと「信じ」なければならないような部分はきっと今も変わっていないのだろう、という気分の悪い確信がある。

  • 北朝鮮でロシア語の教授だった筆者が韓国、アメリカに来てからの驚愕は多々あったことだろう。
    それでも大学指導法、教授については北朝鮮の方が良いところもあるようだが、それでも北朝鮮はどうしようもない国だということが生々しく伝わってくる。

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