都会と犬ども

  • 新潮社
4.41
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本棚登録 : 255
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105145088

作品紹介・あらすじ

厳格な規律の裏では腕力と狡猾がものを言う、弱肉強食の寄宿生活。首都リマの士官学校を舞台に、ペルー各地から入学してきた白人、黒人、混血児、都会っ子、山育ち、人種も階層もさまざまな一群の少年たち=犬っころどもの抵抗と挫折を重層的に描き、残酷で偽善的な現代社会の堕落と腐敗を圧倒的な筆力で告発する。'63年発表。

感想・レビュー・書評

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  • 舞台は、ペルー各地からさまざまな人種や階層の少年たちが集まってくるレオンシオ・プラド士官学校。腕力や狡賢さがなければ生き残れない世界。

    士官学校の内部を描くことで、ペルー社会の腐敗や堕落が浮き彫りになる。(1963年発表。著者27歳)

    主な登場人物は、詩人(アルベルト)、ジャガー、奴隷(リカルド・アラナ)と、ガンボア中尉。

    はじめは暴力的な描写がつらかったが、過去の話や士官学校の外の世界にどんどん引き込まれていく。後半は一気に読んだ。
    語り手も時系列も入り乱れているが、読んでいくうちにわかっていくつくりなので意外に読みやすい。

    少年の純朴さ、愛されないかなしさ、裏切り、自責の念、屈伏、信念。
    父親が息子の根性を叩き直すために士官学校に入学させたり、少年が性的搾取されるのは読んでいて、かなりつらいものがある。
    最後は、救いがあり希望を感じさせられるものだったとおもう。

    • 淳水堂さん
      nanaoさんこちらにもこんにちは。
      『都会と犬ども』は良いですよねえ。
      これも、退学したり左遷されたりしますが、やることやった満足もあ...
      nanaoさんこちらにもこんにちは。
      『都会と犬ども』は良いですよねえ。
      これも、退学したり左遷されたりしますが、やることやった満足もあり、一種の青春小説のようで。
      私のバルガス=リョサのトップ3は『世界終末戦争』『緑の家』『都会と犬ども』です。
      2023/11/12
    • nanaoさん
      淳水堂さん、こちらにもコメントありがとうございます。
      こちらは、青春小説、ですね。ガンボア中尉は左遷させられますが、なんというか爽やかさを感...
      淳水堂さん、こちらにもコメントありがとうございます。
      こちらは、青春小説、ですね。ガンボア中尉は左遷させられますが、なんというか爽やかさを感じられるものでした。
      「世界終末戦争」おもしろそうですね。大作のようなので、余裕のある時に読みたいです。楽しみが増えました!
      2023/11/12
  • 独白と物語が交錯して、主観と客観が入り混じる構成。読みにくいといえば読みにくいが、慣れてくれば深く浸れる感じ。個人的には、こういう複雑な構成はあまり得意ではないので、読むのに結構難儀しましたが、多角的な視野や思考が得意な方なら向いているのかもしれません。
    また、ストーリーの冗長な感じが難しかったです。
    それらを勘案して、星3つ。

  • とても面白かったが、少し間延び感があったのと、道尾秀介みたいな叙述トリックが個人的には好きで無かった。面白いのに何故か、後何ページで終わるんだろうと思いながら読んでいる自分がいた。

  • レオンシオ・プラド士官学校の雑多な雰囲気と乱れた風紀が、独特の重さ・暗さを持って伝わってきた。娑婆の明るさとの対比がまた見事…
    いじめとその結末については、本当に痛々しい。一方で、当事者たちの精神的成熟の過程には、ある種の清々しさも感じる。
    複雑な構成を整理しながら読まないと混乱するため、パートごとに誰がどういう行動を取っているか書き出しながら読み進めました。

  • 2019/3/30購入

  • 一つ言えるのは、後書きが盛大なネタバレなので先に読んではいけない。最近はここまでやる(←ネタバレ)のは珍しいかもね。私はいつも後書きを途中で読んでしまうのだ。
    それはさておき、「ラテンアメリカ文学入門」の寺尾氏お墨付きだけあって?名作だ。軍の寄宿学校で繰り広げられるいじめや暴力の描写はえげつなく息苦しいほどだが、語り手が度々変わることで転換する視点が新鮮で巧みで読み進めた。上官→下士官→カースト上生徒→カースト下生徒→犬、と弱いものへと理不尽な暴力が連鎖し、最下位のものどもはあまりに酷く傷つけられる。また、学校の外には富が支配する社会があり、富めるもの>>>貧しきものの壁が立ちはだかる。社会は無慈悲なものだ。

  •  1963年発表、ペルーの作家バルガス=リョサ著。寄宿舎が設けられた士官学校では、生徒間で起こるいじめや暴力、酒や博奕、試験問題の盗難などがはびこっている。腐敗した環境は一定の秩序を保って安定していたが、生徒の一人が訓練中に銃で撃たれ負傷したことをきっかけに疑惑が飛び交い、破綻が訪れる。ストーリーは各断片ごとに、様々な登場人物、三者視点や自己視点、過去と未来が入り乱れる。
     リョサの代表作として「緑の家」がよく挙げられるようだが、個人的にはこちらの方が好みだった。
     とにかくまず少年達の生活の腐敗具合に驚く。これだけでもストーリーとしては十分面白いが、そこに時系列を崩すことで町にいた時の初々しい恋愛模様が入り込み、対比が生まれてハッとする。更に後半近くなって、それまでただの鬼教官のように見えていた中尉側の視点が入り込むと、事態の深刻さが露呈し、八方塞がりな雰囲気が満ちてくる。「緑の家」ではもう少し全体として平坦に感じられたのだが(あるいは小さい波がいくつかある感じか)、この小説は読めば読むほど興奮の水嵩が増していき、中盤以降はいつどこから崩れてもおかしくないような緊張状態が続く。スピード感で読者を引き込む小説とはまた違う、リョサらしい独特な手法だ。

  • いじめの場面はめちゃくちゃ腹立ったけど、やっぱりリョサはおもしろい。
    時系列がばらばらで、誰の話かわからなかったりもするので、ひとつひとつのエピソードを心に留めるように意識して読んだ。
    読み終わってすぐに再読したくなる小説。

  • レオンシオ・プラド士官学校は3年間の寄宿学校。厳しい訓練と指導が行われ、親の手に負えない悪たれやひ弱さが鍛えられることを期待される子供が集まってくる。新入生は人間以下の犬っころ。学年同士の闘争も激しい。生徒たちにとっては教官の目をかいくぐってのいじめや売買や盗みや飲酒喫煙が日常。ここで生き残るには知恵と力が必要だ。
    文才と機転の利く“詩人”アルベルトはイカれた振りをして攻撃を煙に巻き、エロ小説とラブレターを売って金を稼ぐ。“ジャガー”は力で生徒たちに君臨し、組織を作り他学年と対立し、試験問題の売買を取り仕切る。ジャガーに逆らわなかった気弱なリガルド・アラナは“奴隷”と呼ばれ、いじめや盗みの対象となる。教官のガンボア中尉は生徒には厳しいがあくまでも軍律を守り中立に物事を判断するとして生徒たちから一目置かれる。
    学校内で起きた試験問題盗難と密告事件、そして訓練の最中の生徒の死亡、それに対する殺人の告発。しかし学校関係の軍人は、殺人の告発を高圧な恐喝と左遷により握り潰す。
    大人の監視下に置かれながら、大人社会の縮図を描き出す少年たちの世界を描いた作品。
    ===

    バルガス=リョサ初期の頃の長編作品。
    物語は、三人称で語られる学校生活、一人称で荒々しく語られる生徒の内面から見た学校生活、そして三人の生徒たちの入学前のエピソードが入り混じりあう。現在と過去の会話を交錯させることにより状況を浮かび上がらせる手法、同一人物か別人かが最後にならないと分からない構成、多くの目線から語られる文体の違いによる作品の厚さなど、バルガス=リョサらしい手法が使わる。

    権力やワルが正義をねじ伏せる構造だけれど、終盤はねじ伏せられた側も自分を貫いたり、新たな価値観を見つけたり、収まるところに収まったりと、割りとすっきりと読み終えました。

  • 舞台は著者が在籍していた士官学校。件の学校で本作1500冊が燃やされたという凄まじい内容。マチスモという「男らしさ」賛美の美徳がある種の呪い・病理として学校や社会を貫く。主要登場人物の背景の描き方が斬新で思わず声を上げて驚いてしまった。

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