ピギー・スニードを救う話 (John Irving Collection1989-1998)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105191054

作品紹介・あらすじ

祖母は言った。「ほんとにまあ、どうして作家なんぞになったもんだか」それは、ピギー・スニードがいたからだ。豚を飼い、豚と暮らしたこの男が、豚ともども焼け死んだとき、少年アーヴィングの口をついて出た嘘話。作家の仕事は、ピギーに火をつけ、それから救おうとすることなのだ。何度も何度も。いつまでも。創作の秘密を明かす表題作とディケンズへのオマージュに傑作短篇をサンドウィッチ。ただ一冊の短篇&エッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 短編とエッセイ。まあ、長編のほうがこのひとはいいですわな。長編のあのうねるような迫力が、短編には綺麗さっぱり欠けている。

    表題作は、主人公に火をつけ、そこからを救うことが小説家の仕事だ、というアーヴィングの創作姿勢を明かすエッセイ。

    短編のなかでは、パーティででっち上げの議論をふっかけるへんなオヤジのはなしが、シュールなおかしみがあってよかった。
    ディケンズについてのエッセイは、ディケンズを熟読してからもう一度かかろう。

    ところで、アイオワ大学創作科で、アーヴィングとレイモンド・カーヴァーは席を並べて教えていたそうだ。
    80年代アメリカを代表する長編作家と短編作家の授業、面白かったでしょうね。

  • 僕が大好きな作家ジョン・アーヴィングの短編集。表題にあるエッセイが好きで、これまでも幾度か読んでいる。
    アーヴィングと出会ったのは、大学一年の秋で、原因不明の紫斑病で入院していたベッドの上だった。アーヴィングの処女作を村上春樹氏が翻訳して、それを読んだのだ。
    はっきり言って処女作の「熊を放つ」はアーヴィングの作品の中での完成度は高くなく、一般受けもしない内容だと思う。しかし、その後のベストセラー「ガープの世界」などに続く「物語」の力、ストーリーテラーとしてのアーヴィングの力は間違いなくその片鱗を感じさせるものがあって、その本から僕はアーヴィングの虜になった。
    この表題にある「ピギー・スニードを救う話」はアーヴィングの創作の原点を語るものであり、「物語」とはどういうものであるべきか、あって欲しいかという点について、僕自身も同様に考える。「ものすごくうるさくてありえないほど近い」を読んで、その物語の終わり方、行き着く先を思って、もう一度読み返したくなったのだった。

  • アーヴィング初読みがこれ。
    巻末の解説によると、この作家の短編&エッセイ集って、珍しいらしい。

    「ピギー・スニードを救う話」は、実はエッセイ。子供の頃、住んでいた田舎町に、豚のために生ゴミを集めるピギー・スニードという太っていて不潔でちょっとおかしな青年がいて、子供たちの格好のイジメの標的になっていた。でも、アーヴィングのおばあさんはピギー・スニードにも優しく接していた。ある日、消防団に入ったアーヴィングは――というお話。
    子供の頃の情景を描きつつ、なぜ自分が物書きになったのか、という動機というか心意気が書かれています。
    他に6つの短編と、1つの評論(書評?)が入っています。

    うん、結構面白かった。
    ちょっと病的な雰囲気の後味が気になるけど、視点が独特だし、文章も余計な美辞麗句がなくて、でも味があってパンチもあって。

    最後の一編、「小説の王様」でアーヴィングが絶賛しているディケンズの方が読みたくなってしまいました。

  • 日常にいそうなおかしな人間を描かせたら、この人の右に出る人はいないだろう。
    不思議な後味の小説。

  • 短編とエッセイからなる不思議な味わいの作品集。表題作がアーヴィングの原点。残酷な世の中から、世界を救うために物語る作家。個人的には表題作「ピギー・スニードを救う話」と、「インテリア空間」が好き。他の作品も、なんとはない日常の奇妙な一瞬一瞬を絶妙な塩梅で切り取っている。
    訳者による解説もすごく良い。
    以下引用→「「救う」は原語では"SAVE"である。現実には滅んでいったものを滅びなかったことにしてやりたい、せめてカッコよく滅んだことにしてやりたい、という気持ちがはたらいた。書くことで「保存」してやれるのだ。(中略)ストーリーにするということは、「名前をつけて保存」なのである。」
    なるほど。なんだかすごく腑に落ちる。(2009/Feb)

  • 翻訳されてもここまで魅力の滲み出る文章ってそうない。独特のリズムで、心情や情景を描き出す。ちょっとアイロニックで、シュール。人をよく見る人なのかな。どれがいいっ! ……というほどど真ん中ストライクではないけれど、この、現実を斜視しておもしろおかしく描くスタンスが快感。(071117)

  • 人が「物語」を必要とするのはどんな時か。それを語る表題作はいつ読んでも泣ける。短編ってすごい、こんなこともできるんだ。それにしてもアーヴィングの小説に出てくる老人っていつも愛らしい。

  • ジョン・アーヴィング ハジメテの短編&エッセイ集。
    創作の秘密を明かすエッセイと
    ディケンズへのオマージュに傑作短篇をサンドウィッチした
    アーヴィングならではのシニカルで皮肉タップリで、
    それでいてお洒落な一冊。


    チャールズ・ディケンズは『大いなる遺産』、
    『ディヴィット・コパフィールド』などで知られる
    19世紀を代表する大作家。
    アーヴィングは現代の小説作品より、
    むしろディケンズに代表される19世紀の長大な小説を好んでいるらしい。
    アーヴィングがディケンズが大好きっていうのは、
    『サイダーハウス・ルール』のセント・クラウズ孤児院で
    ラーチ医師が孤児達の就寝前に読んで聞かせていた作品が
    ディケンズの『ディヴィット・コパフィールド』であることや、
    インタビューなどで必ずと言っていいほどに、
    ディケンズの名を出しているコトなどで有名。
    ちなみに現在アーヴィング家で飼われているのは、
    ディケンズという名の黒い犬だそう。
    大好きなんですネ。リナもディケンズ好きデス。

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