- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105217129
作品紹介・あらすじ
絶望の危機から救ってくれた、ある映画の一場面、主人公はその監督の消息を追う旅に出る-大胆で意表を突くストーリー、壮絶で感動的。アメリカでもオースターの最高傑作と絶賛された長編。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
存在の不確かなモノを追う物語
オースターの小説には,このパターンが多いと思うが,その中では,現実味のある読み応えのある内容だった。
主人公が追っていくうちに,存在の不確かなモノの存在がだんだん現実味を帯びてくる。
ふわふわ漂っていた物語が,最後はしっかり着地したような感じで,とても面白く読めた。 -
はじめてのポール・オースター。
オースターの名は洋書の棚で以前からよく目にしていた。パラパラとめくったこともある。ぱきぱきと乾いた文体が心地よかったのを覚えている。それ以来、いつか英語で読みたいと思っていた。何といっても、現役作家である。新刊の発売と同時に洋書フロアに駆けつけてお買い上げ、一度はやってみたいじゃないか。
で、ある日のこと。
図書館で翻訳文学の棚にオースターの作品を見つけ、その帯に『オースターの最高傑作』の文字を見つけ・・・・・・ふらっと手にとってしまった。ああ、訳書は読まないでおこうと思っていたのに。
読み始めてすぐ、これは訳がいいのだな、と思った。原文の独特な雰囲気を損なわずにここまで読ませるのは翻訳者の技量だろう。日本語訳で読んで作風のイメージが崩れるのを恐れていたのだが、この点に関しては杞憂だったかもしれない。柴田元幸訳ははじめてだったのだが、気に入った。なかでも映像描写の巧みさには感心した。チャップリン、キートン、ロイドなど、無声の喜劇映画は大好き。その味わいが文章でここまで表現できるとは、恐れいった。著者、訳者双方の確かな実力のなせる業だ。
これは是非とも原文で読まなくてはいけないな、そう思った。
また楽しみが増えたなぁ。 -
ポールオースターのなかでは苦手な部類だった
-
ポール・オースターという作家は本当に不思議だ。理知的な書き手であることは疑いえないのだが、計算ずくで書いているとは思えない「天然」のストーリーテラーとしての才をも同時に感じさせる。この長編でもオースターは、右へ左へと自由自在に転がして私たちを誘導していく(ツッコミどころが多いと言えば多いのだが、それを言い出せばこの物語そのものが語り手の妄想だったという可能性すら考慮しなくてはならなくなる)。誰にも見せないためにわざわざ作られる映画、というカフカばりの喜劇的なモチーフ。オースターのコミカルな側面が一皮剥けた
-
『無声映画役者に振り回された人たちの物語の物語』
実在するかのような映画の描写、実際に目の前で起きているかのような回顧録、これらが、入れ子になって重なりあい、ますます物語に引き込まれていく。複雑だけど自然な繋がりを持つ構成と目に浮かぶような細やかな描写は、さすが、オースター! -
「世にごく稀にいる、精神が最終的に肉体に勝利を遂げる人物」「年齢はこうした人々を貧しくしない。老いさせはしても、彼らという人間を変えはしない。長生きすればするほど、彼らは自分の本質をますます豊かに、消しがたく体現していく。」
-
翻訳小説には、ありがちな拒否反応が私にはあります。幼稚ですが登場人物が、分からなくなってしまう。そんな私が何故が読みました。分かりやすかったです。何層にも重なるストーリーに魅力があります。