- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784105900755
作品紹介・あらすじ
南米ウルグアイの人里離れた邸宅に暮らす、自殺した作家の妻、作家の愛人と小さな娘、作家の兄とその恋人である青年。ナチスの迫害を逃れてきた先代が、ドイツ風の屋敷をたてたこの場所で、人生を断念したかのように静かな暮らしが営まれていた。そこへ突然、作家の伝記を書こうというアメリカの大学院生がやってくる。思いがけない波紋がよびさます、封印した記憶、あきらめたはずの愛-。全篇にちりばめられたユーモアと陰翳に富む人物像、それぞれの人生を肯定する作者のまなざしが、深く暖かな読後感をもたらす。英国古典小説の味わいをもつ、アメリカの傑作小説。
感想・レビュー・書評
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新年1冊目に相応しく、美しく繊細な文章に魅了されました。昨年、本書原作の映画を観ていますが、原作の世界観を見事に映画化されていたと再認識しました。本では、登場人物たちの洗練された会話や背景をじっくり味わう事ができました。とりわけ映画では描かれなかった、キャロラインの過去を知ることによって、彼女の本当の苦悩の意味が理解出来ました。ただひとつ難を言えば、邦題が好くない。映画も同じタイトルですが、直訳すぎてエレガントじゃないと思います。「destine」には運命づけるという意味もあるし、もう少し他になかったのか。主人公オマーが伝記を書きたいというきっかけとなった「ゴンドラ」という小説(もちろん実在しないけど)読んでみたいなぁ。
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始まりには終わりがつきもの。
自殺したとある作家の妻、作家の愛人とその娘、作家の兄と恋人の青年。ひっそりと暮らす彼らの元に、作家の伝記を書きたいと主人公である大学院生が訪ねてくる、というのが物語の始まり。
噛み合わない会話とか、遠まわしな非難とか、時折こぼれおちる倦怠感とか。たぶん何かが終わって何かが始まる変化の瞬間、瞬間を見ていたんだと思う。といっても劇的なものではなくて、むしろ静かであっけなく訪れるから、それが不思議だった。 -
2023/11/23読了。ミステリーや歴史好きの私だが
最近はこう言った心に何か余韻が残る小説を読むとほっとする。作家はアメリカ生まれのピーター・キャメロン。『最終目的地』人生最後に辿り着く作品と思いきや…こが最終目的地だと思っていても、いつまた新しい旅が始まるかも知れない。
だれでも、いくつになっても、あらたな目的地が見つかる可能性はつねにある。かたくななこころを開いてその可能性に飛び込むことは、生きることを楽しむのと道義だ-そんな希望と祝福に満ちたメッセージが、この題名には隠されているように思います。訳者あとがき。それもある種の人生におけるミステリーなのかも。読後感は悪くはなかった。文体も繊細で読みやすかった。 -
ウルグアイの町から離れた自然な中で静かに暮らす作家の家族。そこへ伝記を書く許可を得るため、青年が現れる。そこで静かに恋が始まり、別れと旅立ちの種が播かれる。登場人物のそれぞれの関係が特殊で思いやりか意地悪かないまぜになった心情でがんじがらめになっているところが、ほどけていく。最終目的地に向かって。
久しぶりに物語世界に堪能しました。 -
とある作家の伝記を書くために、作家の遺族が暮らすウルグアイに向かう青年。遺族の「承認」をもらうために来た彼は、しかし、伝記を書くのをやめてアメリカに帰ることになる…
ウルグアイの人里離れた屋敷。
作家の兄とそのゲイの恋人、作家の妻と、作家の愛人とその娘。
ほとんど何も起こらず、とにかく会話ばかりがえんえんと続く。だけどその会話で少しずつ状況が変わっていく。まるで会話劇。
退屈なのに不思議と読みやめることなく最後まで読んだ。するする頭に入ってくるような、リズムの良い翻訳も良かったな。
作者のピーター・キャメロンは、そうか、ずうっと前に読んだ『ママがプールを洗う日』の作者なのか。 -
こういう話大好きです
ウルグアイの光景が目に浮かぶ
翻訳もすごくよいです -
文章が逸脱。
人物のキャラクター会話を通して
細かく設定されていて目の前にいるみたい。
ストーリーも日常的で、馴染みのないウルグアイが
とても居心地の良さそうな土地に感じた。 -
この美しい翻訳をなさった方がもうこの世にいないのが残念。ピート役が真田広之か。欧米人にはそんなに若く見えるのね。オマーの恋は安っぽく見えたが、長続きしているみたいね。
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【Entertainment】最終目的地 / ピータ・キャメロン /20170327/(31/627) <440/73802>
◆きっかけ
?
◆感想
・南米ウルグアイの人里離れた邸宅に暮らす、自殺した作家の妻、作家の愛人と小さな娘、作家の兄とその恋人である青年。ナチスの迫害を逃れてきた先代が、ドイツ風の屋敷をたてたこの場所で、人生を断念したかのように静かな暮らしが営まれていた。そこへ突然、作家の伝記を書こうというアメリカの大学院生がやってくる。思いがけない波紋が生じていく。。。
・以前一度は図書館から借りた本だが、あまりの分厚さ(440p)に断念した経緯あり。今回、改めて借りたのは少しまとまった時間(連休)が確保でき、かつ他に借りている本等で急ぎ読了すべき本ががなかったからという、この種の分厚い本にはベストのタイミングだった。
・ボリュームの割にはあまり重量感がなかったような、スムーズに頭に入り込み、イメージが湧くことのできた訳のおかげか。過去、
「極北 / マーセル・セロー (村上春樹 翻訳) / 2012.7.17<R>」や、「【Entertainment】海を照らす光/MLステッドマン / 20150629(65/349)<462/14744><R>」に比べると、重くはない。
・6人それぞれの心の機微というか、細かな気持ちが、最初はわずかながら、やがて大きく変化していく様はスリリングですらあり、知らず知らずのうちに引き込まれていった。
・この本ではおそらく最終目的地はウルグアイのオチョス・リオスを暗に示しているのだろう。また、この人里離れた邸宅に暮らす彼らにとって、精神的なもの、人生そのものも含めて最終目的地なのだろう。しかし、冒頭にあった言葉通り、不幸は長く続かない、これは不幸に限らず、幸せも含めて今の状態が、ということなのだろうと思う。そして実際、各々は自らの人生に決断を下していく。キャロラインはNYへ、オマーもカンザスからウルグアイの邸宅にやってくるし、何よりディアドラを捨てて、アーデンと結婚すること自体が、この話を物語っているだろう。その意味でとても考えさせられる話だった。
・読後、ウルグアイの綺麗な風景見たさに、映画化を期待していたところ、実際に映画化されており、しかも2012年にロードショーされていたとは知らなかった。アダムはアンソニー・ホプキンスが適役かなと勝手に想像していたら、まさにその配役だったのには驚いた。いずれ映画も見たい。
◆引用
・われわが不幸なのは、不幸がどのような終わり方をするか知らないからだ。だが、じつは、われわれが真にわかってないのは、不幸はいつまでも続きはしないということだ。なぜなら、同じ状況が続くことさえ、いずれは気分の変化をもたらすからだ。同じ理由から、幸福もいつまでも続きはしない。ウィリアム・ジャーハーディ(必滅の愛について)
・ここが最終目的地だと思っていても、いつまだ新しい旅がはじまるかもしれない。だれでも、いくつになっても、新たな目的地が見つかる可能性は常にある。かたくなな心を開いてその可能性に飛び込むのは、生きることを楽しむのと同義だーそんな希望と祝福に満ちたメッセージがこの題名には隠されているように思えます。
・どんな時だって、シャンパンが失敗なんてことは無いのよ