帰れない山 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
4.20
  • (65)
  • (66)
  • (21)
  • (2)
  • (3)
本棚登録 : 860
感想 : 72
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105901530

作品紹介・あらすじ

街の少年と山の少年 二人の人生があの山で再び交錯する。山がすべてを教えてくれた。牛飼い少年との出会い、冒険、父の孤独と遺志、心地よい沈黙と信頼、友との別れ――。北イタリア、モンテ・ローザ山麓を舞台に、本当の居場所を求めて彷徨う二人の男の葛藤と友情を描く。イタリア文学の最高峰「ストレーガ賞」を受賞し、世界39言語に翻訳された国際的ベストセラー。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 同題名映画が映画サイトで話題になっていたので、何気に観たいリストに入れていたのだけれど、ふとした縁で原作を手に取る機会を得た。山を通じて知り合った二人の少年を、深く結びつけているのは、間違いなく孤独の魂なのだと思う。
    30年に渡って描かれる二人の男たちの、言葉を介さない心の共鳴が描かれていて、二人の友情を、羨ましくもあり、また何故か誇らしくもありといった、不思議な感情を抱かされた。
    題名の不穏さから、ある程度の結末の行方を想像しながら読んだけれど、もしこの作品が原題の「八つの山」であったなら、こうした読み方はしなかっただろう。この小説を見事に表した『帰れない山』は、いい題名だと思うけれども、この一点に関して言えば、少し残念な思いもある。
    もちろん、それを補って余りある日本語としての読みやすい文章に、端正な言葉選び等、素晴らしい訳であることは間違いない。
    山登りを趣味にしている者として、僕なりの山の景色を思い浮かべながら読み進めたが、描かれているモンテ•ローザなどの山のことを知っていたら、もっと深い味わいを残したことだろう。
    そういう意味で、映画で描かれているであろう山の景色の描写を観ることが、とても楽しみである。

    • ぱらりさん
      小皿さん、初めまして。
      いいねありがとうございます。
      映画はご覧になりましたか。
      私は、観ようと思いつつ先延ばしになってました。良い機会なの...
      小皿さん、初めまして。
      いいねありがとうございます。
      映画はご覧になりましたか。
      私は、観ようと思いつつ先延ばしになってました。良い機会なのでこれから観ます。
      2024/02/05
    • 小皿さん
      ぱらりさん、はじめまして。
      いいね、コメントありがとうございます。
      先ほど配信サービスを使って映画の方も鑑賞しました。
      総じて原作で描かれて...
      ぱらりさん、はじめまして。
      いいね、コメントありがとうございます。
      先ほど配信サービスを使って映画の方も鑑賞しました。
      総じて原作で描かれていた父と息子の葛藤や、ピエトロの孤独など描ききれず、原作を読んでいたから登場人物たちの機微を理解することもできたかなと思います。
      思い描いていた山や湖、山小屋のイメージとは違いましたが、これは許容範囲です。
      原作と脚本の問題で痛ましくも悲しい事件が世間を賑やかせていますが、まず、原作をリスペクトするのが僕の基本姿勢です。
      原作を超えられないもの、原作を凌駕するもの、いろいろありますが、どちらも別のものとしての僕の中に仕舞いどころがあるようで、影響を受け合っても侵食されることはないように感じています。
      甲乙など付ける必要もありませんが、今回は原作を先に読んでおいて良かったなぁと思いました。
      先に映画を観てしまっていたら、たぶん原作にてわのばしてなかったかもですもの。
      2024/02/06
  • これは書籍の姿をした、一座の山なのだ。
    最初はのんびりと景色をじっくり確かめながら登るけれど、段々退屈してきて、体が慣れてくると登る行為を面白がるようになる。
    読書であって、登山をしたような気持になる一冊だった。

    後半、唐突に山も時代も関係のない「大人」や「人間」としての話が出てきたときに驚いたがその通りだと思った内容がある。
    ひとつはブルーノとピエトロの会話内にあった「家庭を築くことが能力の過信なのだとしたら、子供を持つべきではない」というもの。
    もうひとつはラーラの台詞で紹介された「前進するためには、 時に一歩退かなくてはならないこともある。ただし、それを受け入れる謙虚な心が必要だ」というものだ。

    私はピエトロの両親、とくに父親については良い印象がまるで無いが、時代によって変化した“親”の質の変化との比較は非常に面白いと感じた。

  • どこかで好意的な評価を見つけ図書館で借りだした本です。
    主人公の少年・ピエトロは、登山を愛する父と同じく山好きな母と大都会・ミラノに暮らす三人家族。一家は夏休みに山の中のグラーナ村に滞在し、ピエトロは父と一緒に山歩きをしていた。ピエトロはそのグラーナ村で親から蔑ろにされている少年ブルーノと出会い、親友になります。彼らの30年にわたる交流を描いた作品です。
    特に何かの事件が起こるわけではありません。ごく普通に家庭内で起こる事、父に対する反抗、出会い、別れ、悩み、漂い続ける、そんな姿が端正に淡々とつづられて行きます
    そしてその背景には北イタリア、モンテ・ローザやヒマラヤの山麓の目に浮かぶような見事な描写です。
    何故か心にしみます。
    読了後、裏表紙に松家仁之さんの解説を見つけ「あ~~」と思いました。そうかこの本は松家さんが創刊した「新潮クレスト・ブックス」から出版されていて、松家仁之さんの作品に共通するものがあります。例えば私は松家さんの『火山のふもとで』の感想に
    「・・・丁寧に端正に語られる静かな物語です。
    ストーリーに大きな展開があるわけでは無いのですが、一言一言を選び抜いてじっくり書かれた様子がうかがえます。」
    と書いていました。
    2022年に映画化され第75回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。昨年5月には日本でも公開されているようです。「観たら読まない、読んだら観ない」が私の原則なのですが、山の映像が美しいであろうこの作品については観てみたい気がします。

  • ★3つと半分です。
     セリフの少ない描写叙述の多い文章です。生活上考え事が多くて、うわの空的な少し緩慢な読書になり、著者に申し訳ない思いです。
     書かれた情景が頭の中にうまく描けず、これまた残念な読書でもありました。

  • ドキュメンタリーやエッセイや伝記が読書の主体あったが久しぶりに本を読んで深く物語の世界に
    没頭出来ました。2人の友が織りなすアルプスを舞台にした数々の描写。なんでこんなに伝わってくるんだろうと思いました。
    関口英子さんの翻訳が自然すぎます。

  • このようにならないで欲しいと思っていたが、最後はブルーノとの永遠の別れを示唆されていて、ああ、やはりと 40そこそこであそこまで達観してしまったブルーノ 1番心が近いところにいて、でも救い出せなかったピエトロ ネパールの山でばったりと再会するだなんて願ってはいけないだろうか

    ドラマティックのは第二部の和解の家だろう いくつも胸を打たれるシーンがある 各山で父の足跡を見つけていくところ、家を作り上げていくところ、完成した家に母を呼ぶところ 

    こういう対比の場合、ピエトロは都会をもっと表す人物になると思いきや厭世感をまとう都会の男とは程遠い人物になっていくのも興味深い

    映画はまだ見ていないが、これから見てみたいと思う

  • 2023.09.06読了。
    今年10冊目。

  • 都会の少年と山の少年の出会いから、以来30年ほどの交流を描く。
    無口な登場人物が多いので、情景描写が多く、その描き方が美しくて想像しながらうっとりしました。
    物語の多くは山での暮らしの中で展開することもあり、自然を前にした人間の無力さに圧倒される場面が多いですが、そのときに投げやりになるのではなく、共存していく知恵を持つ登場人物たちの生き方が心地よいです。
    山登りが好きな人は特に惹き込まれる作品だと思います。

  • ブルーノとの友情。良い本に出会えた。

  • 北イタリアのモンテ・ローザ山麓を舞台に、街の少年と山の少年の交流を縦軸、父親との確執を横軸に、自然の美しさと厳しさを謳い上げた作品。

全72件中 1 - 10件を表示

パオロ・コニェッティの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×