永井荷風 ひとり暮らしの贅沢 (とんぼの本)

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  • 新潮社 (2006年5月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106021428

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永井荷風 ひとり暮らしの贅沢 (とんぼの本)の感想・レビュー・書評

  • パラサイト、ニート、おひとりさま…昔の話とは思えないキーワードがいっぱい!

     初めはぴんと来なかった永井荷風を、「それでも読み続けたい」と思った理由がこの本にちょうど拾い出されていて、興味深くめくった。
     それは『断腸亭日乗』に詳しい……とされる(未読ながら)荷風の暮らしぶりにあった。生計を立てるために労働に身をやつす必要がなかった荷風は、好きなだけ読書や執筆に時間を割くことができた。実に優雅な日々を送った人物だったのだ。

     裕福な家に育った荷風は、父親の転勤について異国へ渡り、留学ではなく遊学を体験。あちらで職にもついたが、無理に働かなくても食うに困らぬ身分だった。時が経ち少々事情が変わってきても、荷風の筆にはなおパラサイトやニートの名残があり、そこに何か近さのような惹かれる匂いを感じてしまう。荷風の感覚には、現代の若者に通じるものがある。

    『あめりか物語』は初期作品なのだろうか、あれはどこかいらいらもさせられる。「働かなくてもいいんなら、そりゃ好きなものを読んで書いていたいに決まってる。けど、それができないから働いてるんだ!」という私は、近親憎悪的感覚をかきたてられてしまうようだ。

     しかし、さらなる歳月が流れて「そのまんまおじいちゃんになっちゃった」荷風の日常を覗き見ることの、意味深さ。
     あんまり好きな言葉ではないものの、近年「おひとりさま」という便利なフレーズができた。その「おひとりさま」になっても、荷風は全くスタンスを変えることなく、意図的に淡々と日乗を綴り続けた。誰かと妥協して落ち着くことなく、奇行と言われようが一向かまわず、好きなことを好きなままに貫いた。極端なところもあるけれど。
    、荷風は想像させてくれる。ひとりを愉しむ、ひとりを味わうってどんなことなのだろうと。わびしいと思う人もいるようだけど、それは本人の考え方次第。ひとりの時間を持てるということこそ、とてつもなく豊かな状態じゃないかな。
     そう思うと、荷風愛用の品々の一つ一つを写真で確かめながらひとりという贅沢を読むことは、とても豊かで面白い体験だった。

     ごく軽い作りの本なのだけれども、遺品の中にあった幻の春本『ぬれずろ草紙』の抜粋が唯一掲載をゆるされた点でも貴重。この作家に関心のある人なら、一度は手にとって損はない。

  • ある意味究極の生き方、そして死に方。

  • 〜元官僚の家に生まれた壮吉は明治12年に生まれ,第一高等学校不合格で落語家の弟子になるが,父に知られてアメリカはシアトル・ニューヨーク,フランスで気ままな留学生活を送る。帰国後,新聞雑誌に小説を発表する傍ら慶應義塾の教授の職を得る。父の薦めで結婚するが,芸者と交際し,妻と離婚し,二度目の結婚を果たすが長続きしない。兄弟とは疎遠となり,麻布の家が空襲で焼けた後,疎開生活を送り,市川に住まい,浅草・銀座に通う毎日を送る。38歳から書き始めた日記は断腸亭日記として昭和34年に79歳で死去するまで41年間続けられた。従弟の次男が永井家を相続し,金庫を建てて遺品を保管している。愛用品以外にも草稿や蔵書,清書された原稿もある。その中には春本『ぬれぞろ草子』もあり,最初で最後の抄が紹介されている。これは発禁を恐れて全集の中にも収録されていない。〜文学者は大学などに通わない方が良いという偏屈な人。墨東奇譚がよく知られているが,彼自身は断腸亭日乗で文化勲章を貰ったと云っている。文化勲章を受けてから劇場や女郎屋などへ出入りがしにくくなったと語っている。高校生の時だったか,面白半分という雑誌に発禁の四畳半襖の下張りが掲載され,買って読んで感動?したが直ぐに雑誌は廃刊に追い込まれた。原稿自体は麻布の偏奇楼消失の時に失われ,誰かが活字化して間違ったまま流布されたモノだそうだ。30年以上前の謎が解けた。養子の永光氏が『ぬれぞろ草子』の発表に踏み切ったが,確かに口語調で書かれ,『四畳半・・』に比べ出来が良いとは云えないが,流石に文豪ではある。ペン書きは上手でなかったようだが,手帳に書いた下書きを和紙に細筆で書いた毛筆の冴えは凄い。間借りしていたファンの家の中で七輪を焚いたら追い出されるわけだ。日記には感想を書かない方が良いと荷風は云っている。感想はやめるかなぁ・・・。

  • 永井荷風ってただのエロオヤジじゃないところがすごい。あんなじじいになりたいな。

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永井荷風 ひとり暮らしの贅沢 (とんぼの本)の作品紹介

誰にも気兼ねなく、ある日は終日読書三昧、またある日は浅草で過ごし夜半に帰宅。自宅の手軽な自炊には、七輪を部屋に持ち込んで…。そして孤独も老いも死も、さらりと語る独居の達人。吝嗇だ奇行だと陰口きかれても気侭に生きた後半生。

永井荷風 ひとり暮らしの贅沢 (とんぼの本)はこんな本です

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