フランスの庭奇想のパラダイス (とんぼの本)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 34
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (127ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106021817

作品紹介・あらすじ

ミステリアスでストレンジ、そしてどこにも似ていない-フランス人ならではの"独創"が生み出した不思議な空間は、辛辣で容赦ない美意識が凝縮された世界。身分に関係なく素人や王様が追い求めたその世界は、時代をこえて残された夢の痕。60の"奇庭"の物語が、旅にいざなう。

感想・レビュー・書評

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  • fra フランス

  • この過剰さ、この情熱、名もない人たちが偏執狂的に作り上げた庭々に幻惑される。若い時分に欧州旅行をした際、どうしても見ておきたかった郵便配達夫シュヴァルの理想宮。実際かなり不便なところで日に数本しかないバスに乗り、目にした感動は忘れられない。ブルトンが絶賛したというシュルレアリスムを具現化したような構造物。懐かしい思いで手に取る。他に、大量のモザイクで埋め尽くされた墓守りピカシエットの庭、移動遊園地を再現した牛追いピエールの庭など…逸脱の小宇宙の数々。洞窟についての考察もおもしろい。

  • ロワール地方などを舞台とした作品です。

  • <愛のがらくた小宇宙>


     ずぶの素人から、いわゆる芸術家や本職の造園家まで、さまざまな立場の人がこしらえた庭園を結集させた一冊! 本の外見から想像するよりはるかに豊かな情報量に驚き、フランス各地にちらばる庭の小宇宙に、すっかり魅せられました★

     野心に近い意図をもって築き上げられ、盛大に装飾された庭・庭・庭……。建築物と絡み合ったり包みこまれたりしながら、庭園を歩く者の視界を一足ごとに変化させる庭。独自の世界観。
     お行儀よく均された「フランス式庭園」より、不思議な濃さのある「フランスの庭」、という独自の観点から集められたお庭データがユニークです。傲慢なまでの一個人の美意識によって研磨された庭は、どれもが斬新で面白かった!

     あえて最も印象に残った庭を挙げるとすれば、私はやはり<ピカシエットの家>。
     一人の貧しい男が、ガラスや割れた食器のかけらを「美しい……!」と感じ、本能のままに拾い集めたことに端を発しています。おびただしい数のかけらがあふれ出して、庭を奇想で彩ったのでした★

     その、一種異様でさえある庭世界の写真を見ながら思い出したのが、ヴァージニア・ウルフの短編小説『堅固な対象』でした。将来有望と目されていた男が、綺麗な破片を集めることに熱中するあまり、他のことに一切意識を向けなくなる、というストーリーです。
     主人公のなかで起きた輝きについては、あんまり表現されていなかったような記憶があるけれど、彼の心のなかには<ピカシエットの家>のような、真に独創的な世界が広がっていたのではないでしょうか?

     他人から見たら、ガラスやお皿のかけらなどは、ただのがらくたでしかないのです。だけど、愛されたがらくたは、小宇宙を形成する。膨張し爆発し、芸術にだってなっちゃうのです☆
     均されないもの、理解されないもの、一個人の強固な思い入れ、堅固な思いこみが築く結晶世界……★ 奇妙に胸を打たれました。

  • モザイクの緻密さに吐き気をもよおし、草木・花・水などの自然との絶妙な配分の庭に感激し、幾何学庭園と呼ばれる「不思議の国のアリス」的に植木が迷路のようになっている庭を見て色々とふしだらな夢想をする。
    そんな本でした。
    昨晩TVで大好きな日本画家・松井冬子が「計算されて出来たものが芸術」と、言っていたのだけれども、こういう奇想庭園も計算されて出来た芸術なんだ、と。

    個人的に好きか嫌いかは別として素晴らしいですね、お宅様のお庭。

  • グロテスクで美しいと言う感性。

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