- Amazon.co.jp ・本 (143ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106021923
作品紹介・あらすじ
名作『津軽』のテキストを道標に、津軽半島に遺された太宰の望郷の旅の足跡を辿る。さらに、五度に及んだ自殺・心中の現場を訪ね、その日その時、作家の目に映った心象風景を追う。
感想・レビュー・書評
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当時「津軽」ではなく何故かこちらから手にした私。買ったその足でカフェに入店して読み始めたが、数ページ読んだところで激しく「津軽」を読みたい衝動に駆られ、再度本屋に走り「津軽」を購入してカフェに戻った思い出が。この本は美しい風景などの写真も多いですし、併せて読むことで「津軽」の魅力を存分に味わえます。
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小説『津軽』と合わせて読んだ本。
訪れた場所がカラー写真と共に紹介されているため、理解が深まります。
小説の中では語られませんでしたが、太宰は生涯に五度も、自殺や心中を試みたんですね。
三度目は大学卒業のめどが立たず、就職にも失敗したことがその動機だそう。
非常に繊細だったのでしょう。それが四度目からは心中に変わっていきますが。
『津軽』は旅エッセイのように感じながら読みましたが、実際と小説は異なる箇所もあり、フィクションも織り込まれていると知りました。
ざっくばらんにまとめられた話のようですが、実際の話に架空のストーリーを加えていたという緻密さ。
「ね、なぜ旅にでるの?」
「苦しいからさ」
太宰治にとって、出身の津軽は家柄に縛られた重い地だと思っていましたが、実際にはそうではなく、懐かしい思い出の詰まった場所だったとわかりました。 -
この夏の青森の旅が楽しみ
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タイトルが「斎藤工と行くハワイ」みたいでちょっと笑えた。ファンクラブのツアーみたいだ。本書は太宰の名著「津軽」をテキストに津軽の風景を追ったロードムービーのようなムック。写真も美しく、太宰の原風景を垣間見れた気がした。白眉は太宰の晩年の写真を数多く撮っている田村茂氏によるボツ写真である。見たことのない太宰さんがたくさん!これだけでも見る価値あり。
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行きたくなった。
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彼が生きた津軽を、旅したい。
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「津軽」が書かれた時代と数十年前と現在との対比によって、津軽地方における時間の経過というものを感じさせられる作りになっている。これが、カメラマンならではの手法というものだろか。
都会人からみたら、地方の風景には変化がないように錯覚してしまうが、そこに人々が暮らしている限り、古き良き物がそのまま温存される事は稀であり、良くも悪くも都市化なり発展はしているという事であろう。残念な事ではあるが、昔の面影と引き換えに観光地化されていくことはやむを得ないのかもしれないと感じた。 -
津軽に行ってきた.ずっと昔から行きたかった金木町も訪ねることができた.というわけで,津軽,青森に関する本を少し読もうと思う.
本来は太宰治の「津軽」を読むのがいいのだろうが,数年前,再読したばかりなので,太宰治の津軽旅行の足跡を写真でたどるこの本を読んでみた.なかなか観光客が行きにくい場所や,いろいろな季節(特に冬)の写真があって,自分の実際見た景色に奥行きが加わる感じ.
「津軽」は作者が実際に体験して非常にいきいきとした記述と,別の本から写してきたような地誌や歴史の退屈な記述が入り交じっているので,読通すのは思ったほど楽ではない.この本の最初にある『「津軽」名場面十選』はいい場面だけが選ばれていて効率よく再読したような気にさせてくれる.まあ邪道ではあるんだろうが.
途中に何度か「滅びの風景」として太宰治が心中を企てた場所についてのコラムが挿入されている.これ「津軽」の根底にある故郷に帰った安心感のようなもの(それが時によって屈折した形で表現されているが)ととても違和感がある. -
写真家の小松健一氏による写真・文と共に、太宰治の小説「津軽」の風景を辿る。小松氏は1980年早春に放浪するように津軽を回っており、この本を出版するに当たり30年ぶりに再び津軽を訪れている。美しい津軽の写真は、津軽人にとってノスタルジックな感情が蘇る。
芦野公園駅での風景、育ての親タケとの再会、長谷部日出雄氏が「風景のほうが文章のまねをしているようにおもえて来る」と評した十三湖の描写など、故郷の神髄に触れるために、もう一度小説「津軽」を読んでみたくなった。