共犯者 (新潮クライムファイル)

著者 :
  • 新潮社
3.87
  • (19)
  • (14)
  • (19)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 173
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106028311

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1993年、ペットショップ「アフリカ・ケンネル」を経営する元夫婦、関根元と風間博子(共に確定死刑囚)が金銭トラブルなどにより4人を殺害した、いわゆる「埼玉愛犬家殺人事件」。
    遺体の肉や臓器は細かく切って川に棄て、骨は灰になるまで焼いて山に撒いたため、「遺体なき殺人」と言われた。
    本書は、その惨たらしい事件で死体損壊・死体遺棄の罪に問われ、懲役3年の実刑判決を受けた共犯者・島永幸が、満期出所後に"山崎永幸"という筆名で事件を記したものである。

    当事者が書いた事件の深層は概ね歪んでいて、真実が描かれていないことが多い。
    本書も例外ではなく、著者が事件に巻き込まれ「共犯者」になる以前、たとえば、主犯・関根の病的な嘘つきぶりを嘲笑しているにも関わらず共同経営者として手を組んだくだりなど、理解しがたい箇所も多い。

    ただ。
    「共犯者」となってからのリアリティは他に類をみない。
    事実は、想像を遥かに超えて残虐で、「ここで警察に駆け込んでいれば罪を重ねることはなかったのに」という正論は通じない。
    本性を目の当たりにしてからというもの、貶すことを忘れ、関根の一言一句に怯えるが故、次々と犯罪に手を染めてしまう著者の様は、ただただ惨めだ。

  •  「埼玉愛犬家連続殺人事件」の犯人・関根元について、共犯者として逮捕され服役した著者が書いた衝撃の手記である(といっても、当然ライターが話を聞いてまとめたもの)。

     読み始めたらやめられなくて一気に読んでしまったが、そのあとで気分が悪くなり、読んだことを後悔した。
     とにかく、関根元の殺人鬼ぶりがすさまじいのである。なりふり構わぬ金儲けのためなら、平気で人を殺す。相手がヤクザでも、自らが経営する店で働く店員の母親でも……。そして、殺したあとの死体を妻(共犯で逮捕)と一緒に「解体」して処理する。解体した「肉」を「鹿の肉」と偽って知人に食べさせて悦に入り、女性を殺したときには死姦までする。

     貴志祐介の『黒い家』に出てくるようなサイコパス系シリアル・キラーが、実在したとは……。
     死体解体の場面は桐野夏生の『OUT』を思わせるが、なにしろあっちはフィクション、こっちはまぎれもない現実だ。ヘタなホラー小説が裸足で逃げ出す内容である。 

     関根は著者に、「これまでに35人殺した」と言ったという。著者が裁判でそのことを証言すると、法廷には失笑が漏れた(殺人事件として立件されたのは4件)。しかし、取調べの際に同じことを言っても、刑事は笑わなかったという。「関根の周辺に少なくとも11人の行方不明者がいた」からだ。

     ヒッチコックの『サイコ』のモデルになったエド・ゲインやヘンリー・ルーカス(コイツも『ヘンリー』という映画になった)並みの、犯罪史上に残る殺人鬼である。それにしてはマスコミの騒ぎ方が比較的おとなしかったのは、逮捕直後、阪神大震災と地下鉄サリン事件が相次いで起こったためだ。

     ライターがヘタな小説みたいなタッチでまとめていて、通俗事件読み物の域を出ない本なのだが、究極の悪を垣間見るために一読の価値はある本(ただし、読んで気分が悪くなること請け合い)。

     なお、本書をまとめたライターは現・作家の蓮見圭一。蓮見が『週刊新潮』の記者から作家に転身したあと、幻冬舎は本書を蓮見の著作として売り直した。『悪魔を憐れむ歌』と改題し、まったく別の本であるかのように再刊したのだ。えげつない商売するなあ、幻冬舎。

  • 映画「冷たい熱帯魚」のモデルになった事件の、脅されながら共犯者となった人物の述懐書。実録であり、その目で死体を嬉々として解体する関根夫婦を記録した描写は鬼畜としか思えない。おそらく日本の犯罪史上、立件されてない事案を含めてもっとも殺人を犯した人物だろう。背筋がここまで寒くなった犯罪本はない。

  • 「津山三十人殺し」の次に怖かったです。
    「冷たい熱帯魚」も借りて見よう。

  • あまりにも面白くて一晩で一気読み。文章の上手さに舌を巻いたが、調べると蓮見圭一氏によるものだとか。だとしても関根の前では大人しい子羊のような山崎氏が検事の前ではあそこまで大胆になれるのがどうしても繋がらない。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×