- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106037443
作品紹介・あらすじ
同じ日本語なのに、江戸時代と現代では、なぜこんなにも違うのか? ――「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也」―例えば、この芭蕉の言葉も現在の日本語とはずいぶん違う。では、いつ、どのように変化を遂げたのか? 「中間の時代」である明治期に注目し、「漢字・漢語=漢文脈」をキー・ワードに、その“断層”を探る。言葉が変りゆく現場を実感する、国語学のユニークかつ精緻なる冒険!
感想・レビュー・書評
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江戸
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江戸時代の日本語が明治になって、どのように変化してきたかを克明に記した好著だ.文書の事例が多く掲載されており、楽しめた.英和辞典に見られる日本語の縦書や横書きは時代の流れを感じる.漢字の左側にその意味を書き、右側に読み方を記する方式は面白い様式だと感じた.漢語を使わなくなった若者用に採用してみたらどうだろうか.
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とても興味深い近代日本語の歴史。ネット上でもたくさん書評があげられている。個人的には、英和辞書の発展についての記述が収穫だった。
ただしこの内容で索引が欠けているのは弱点だと思う(一般向けに手加減された内容とはいえ、実際この本を検索したくなる回数が多かった)。学生時代に手作業で簡単な索引を作ったことは私自身の勉強にはなったが、ほとんどの人にそんな時間も根気もないはず。
【情報】
・著者プロフィール
今野真二(コンノ・シンジ)……1958年神奈川県生まれ。1986年早稲田大学大学院博士課程後期退学。高知大学助教授を経て、清泉女子大学教授。専攻は日本語学。主な著書に『仮名表記論攷』(清文堂出版、第30回金田一京助博士記念賞受賞)、『振仮名の歴史』(集英社新書)、『消された漱石――明治の日本語の探し方』『文献から読み解く日本語の歴史』(笠間書院)、『正書法のない日本語』(岩波書店)、『百年前の日本語―書きことばが揺れた時代―』(岩波新書)他、多数。
<http://www.shinchosha.co.jp/book/603744/>
【目次】
目次 [003-006]
はじめに 009
日本語のミッシング・リンクとはどういうことか/江戸時代の日本語と明治時代の日本語との連続・不連続/天保の老人/『日本外史』と『西国立志編』/『童子教』と『西国立志編』/『西洋事情』と『輿地誌略』/ミッシング・リンク探訪の旅
序 章 江戸の教育における漢語・漢字 025
藩校・私塾・寺子屋/藩校での教育/漢字平仮名交じり文という器/左右両振仮名/明治の中の江戸/字順が現代と異なる漢語/寺子屋の教育/商売往来/世話千字文/江戸期の日本語と教育
第一章 明治初期――漢洋兼才の人々 049
『[蟹字/混交]漢語詩入都々逸』/大槻文彦と英学/開成所のテキスト――渡部温の『地学初歩』/『康熙字典』の校訂をした渡部温/縦書きと横書きとの混在/福澤諭吉『増訂華英通語』/「ヴ・ワ゛」の使用/俗語ということ――『西洋事情』の序/『玉篇』『雑字類編』を使うべからず/漢字制限論・日本的漢字使用/中村正直『西国立志編』/『西国立志編』の左振仮名
第二章 通俗と訓蒙――漢文脈からの離脱 101
鴎外の日記/文字社会の拡大/振仮名付きの布達/漢字制限論/清水卯三郎の「平仮名ノ説」/矢野龍渓の『日本文体文字新論』/五つの文体/丹羽純一郎訳『[欧洲/奇事]花柳春話』/『通俗花柳春話』――通俗という形式/『訓蒙日本外史』/『[言文/一致]通俗古事記』
第三章 仮名専用論者がつくった近代国語辞書 151
かなのくわい/近藤真琴と『ことばのその』/二種類の辞書/平仮名と片仮名 物集高見と『ことばのはやし』/語によって語の説明をする辞書/近代的な国語辞書の誕生/『言海』の語釈/和語と漢語との結びつき/『言海』が見出し項目とした漢語、しなかった漢語/『俗語辞海』/「漢用字」/語釈中の漢語
第四章 洗練されていく英和辞書 193
『英和対訳袖珍辞書』が作られた頃/現存する『英和対訳袖珍辞書』十五本/『英和対訳袖珍辞書』の概観/草稿から印刷(初版)へ/『英和対訳袖珍辞書』のその後/横書きになった語釈/ロプシャイト『英華字典』の翻訳版/英華字典からの離脱/吉田賢輔編『英和字典』の訳語/『英華和訳字典』の和訳/『附音挿図英和字彙』初版の訳語――英華和訳字典の影響度/『附音挿図英和字彙』第二版の訳語/『附音挿図英和字彙』第二版再版の訳語
第五章 言文一致――今、ここのことば 239
物集高見『言文一致』/物集高見の言文一致/二葉亭四迷の言文一致/雅俗辞書 青山霞村の言文一致短歌/『俗語雅調』/山田美妙の言文一致/『嘲戒小説天狗』はどのように書かれているか/山田美妙の新体詩/巌谷小波『[三十年目/書き直し]こがね丸』
終章 森鴎外と夏目漱石 273
句読点・段落表示/鴎外の漢字使用/五歳の差/漱石の低徊趣味/夏目漱石の言文一致
おわりに [293-297]
あとがき [298-303] -
テーマは良いのに、学術すぎて内容がミッシング
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明治時代の表記の変遷を、辞書や文学作人などの文献資料からたどる。
明治と言えば、日本語のローマ字化が主張された時代。
揺れ動く社会や母国語観の中で、
現代語の表記に至るまでには、
さまざまな取り組みがされていたことが分かる一冊。