とてつもない日本 (新潮新書 217)

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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106102172

感想・レビュー・書評

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  • 麻生太郎と言えば、つい最近までは”吉田茂の孫の七光議員”というイメージしかありませんでしたが、国会議員で唯一と言ってよいほど、日本が世界をリードしている”漫画”について肯定的なイメージをもっている人だと思います。

    暗い日本悲観論が横行するなかで、元気付けられる本でした。また、靖国神社が他の神社とは異なるものであることを初めて知りました。

    以下は面白かったポイントです。

    ・日本は成功も失敗も進んでさらけ出すことが出す国である、日本の強みは以下の通り(p21)
    1)ソート・リーダー(先駆者)
    2)財政における自動安定化装置(累進課税制度)
    3)国対国の関係に、上下概念を持ち込まない

    ・日本には全世界で稼動している産業用ロボット(85万台)の42%がある(p54)

    ・3J:ジャパニメーション、Jポップ、Jファッションは日本の強み(p59)

    ・宗教は、天国へ行く「機会」は平等と言っているに過ぎない(p88)

    ・今の中国に活力のある理由は、市場経済を導入し、「結果の平等」の建前を崩して、「機会の平等」へシフトしたから(p92)

    ・7万以上もあった町村数が、1889(明治22)の大合併で1万1859市町村、2003年に3181市町村、現在は1804へ減少(p110)

    ・2007年4月、日本海側に初の政令指定都市が制定(p121)

    ・国連安全保障理事会に、北朝鮮の暴挙に対する決議案を提出したのは、国連加盟以来、初めて、米英仏、デンマーク、スロベキアが共同提案国となる(p137)

    ・靖国神社は、神々を祭る本来の神社でないので、神社本庁に属していない。全国に52ある護国神社も同様の性格(p149)

    ・日本の陸自衛隊員は、イラク人道復興支援のために来たことをイラク人に確信させることができたのが、イラク派遣成功の要因(p178)自衛隊の給水車には、日本の国旗以外にも、「キャプテン翼」のロゴマークも貼ってあった(p60)

    <<2009年5月記入>>
    2009年5月現在首相である麻生氏が外務大臣であったときに書かれた本です、彼の評判は通常の世論調査では把握できないかもしれません。完全な対米追随でアメリカの評判をとった小泉氏とは異なるとは思いますが、彼の考え方もなるほどと思える部分がありました。

    特に、靖国神社が他の神社と異なっていること(p148)は初めて知ったことでした。日本国の莫大な累積債務を取り上げて不安を煽るのは誰でもできることですが、日本の底力を政治家がこの本で述べてもらえると日本国民の元気付けられると思います。

    以下は気になったポイントです。

    ・昭和中期まで日本の高度成長の陰に、公害に代表される環境破壊があった、日本はその反省を活かしてエネルギー効率が世界で最も良い国となった(p25)

    ・日本とは何か、という問いへの最後の答えは、「国対国の関係に、上下概念を持ち込まない国」である(p32)

    ・一緒に働きたいのは、高学歴者ではなく、「気持ちの良いひと」「波長の合う人」である(p66)

    ・格差拡大の第一の理由は、高齢化、次にデフレである(p96)

    ・三位一体改革とは、1)政府から自治体への補助金削減、2)国税から地方税への税源移譲、3)地方交付税の変更、である(p113)

    ・国、地方の公務員の合計が342万人で、それらの経費が30兆円、税収82兆円と比較すると経費が大きいことがわかる(p115)

    ・日本は不況と言われるが、貿易収支・経常収支ともに黒字なのは先進国中で日本のみ(p122)

    ・2006年、日本は国連安全保障理事会に、北朝鮮の暴挙(弾道ミサイル7発の発射)に対する決議案を上程した、国連加盟後50年で初めて安全保障理事会をリードした(p137)

    ・靖国神社には、遺灰・遺骨といった物質的な何かはない、あるのは精神的は抽象的なもの、日本人の「集合的記憶」である(p141)

    ・戦争遺族に対する給付を受けている人は、1982年当時は154万人であったが、2005年には15万人、戦友の人たち(恩給受給者)は、1969年のピーク:283万人から、2005年には121万人となっている(p147)

    ・靖国神社は、神々を祀る本来の神社ではないので、伊勢神宮以下の8万の神社を束ねる神社本庁に属さない、戦前は陸海軍省が共同で管理していた(p148)

    ・設立経緯、施設の性格を考慮すると、全国に52社ある護国神社と同じ性格を持っている、靖国神社が変わろうとする場合、護国神社と一体で行う必要あり(p149)

    ・日本の自衛隊はイラクのサワマで信用を勝ち得た、現地の議会、部族長の全てのところに、士官・部隊長クラスが挨拶に出向く、いわゆる根回しを周到に行ったから(p178)

  • 悲観的になっている日本を元気にする、愛国心溢れる一冊。
    ただ励ますだけにとどまらず、国益を重視した麻生さんなりの政策案を除くことができ、説得力が増している。

  •  特定の人たちには閣下という相性で呼ばれている元総理大臣が書いた本。

     元総理大臣が書いた本と言えば、小泉さんや橋本総理の書いた本なども呼んだことがあるが、それらと比べて幾分さっぱりした感じで読みやすい。

     本の内容はタイトルの通りであり「日本がどれだけ凄い国か」ということ。
     最近は政治家も日本は凄い国だなどとあまり言わなくなった。口を開ければ悪い話しばかり。それが事実だったとしても、癌患者に毎日病状を伝えるだけの医師など不要なのだよ。と思ってしまう。そんな中でこの本を読んだからか、政治家が日本の自慢話をしているのは新鮮に感じた。

     日本が凄い国だという話し以外では靖国問題についても書いてある。
     靖国を国営にしてしまうと言うアイディアは総理経験者の話しとしては面白い。実現可能性はさておき、そういうアイディアは政治家が積極的に出して欲しい。


     繰り返すが、この本はとても読みやすい。


     軽く読める。1、2時間ほどでさっとよめるのではないだろうか?


     日本の元総理がどんなことを考えていたのか?そんなことをさらっと読んでみるのも良いのではないだろう。

     最後に一つ。

     今とは、過去から流れている時間の一点である。
     未来とは今から先に流れる流れではなく、過去から今を経由して流れる流れである。

     今だけを見て物事を考えるなかれ。

     格差問題の話しを読んだときの私の思いである。

  • 「私は口の曲がった人が苦手だ。一番苦手なのは筑紫哲也。
    そしてなぜか政治家には口の曲がった人が多い気がする。
    生まれつきそうだという方には申し訳ないが、
    どうしてもそういう人の発言には裏があるような気がしてならない。
    そんな中でも麻生太郎の口の曲がる方はたいしたもので、
    マンガ好き・オタク政治家という最近の評判を聞いても、
    皮肉屋の印象が前々から拭えないでいた。

    日本のとてつもないところは平穏な江戸時代に生まれた独自の文化にあると思う。
    マンガも小説もお笑いもその流れの中にあるといって過言ではないだろう。
    ここにきてやっとその文化を世界に発信できる環境が揃ってきた。
    ジャングル大帝をパクられても文句を言えなかった時代は終わったのかもしれない。

    近いうちに首相になる人だ。私は現首相よりは期待している。」

    と、読んだ当時は評価高かったのに今となっては笑い話。

  • 日本が好きすぎて危機意識なさすぎ

  • <b>【一口感想】</b>

     「「アジアン・イズ・ビューティフル」。日本は今も昔も輝いている」
     
    <b>【3行要約】</b>

     ・総理大臣も務めた麻生太郎さんが描く「戦前と戦後の日本」と「ソートリーダーとしての日本」
     ・戦後の日本が日本人の誇りを失わず走り続けてきたことがアジアの復興につながった
     ・国力の回復も、アジア圏のリードもすべては日本のおもてなしの心によってもたらされた

    <b>【所感】</b>

    秋葉原で演説にたったことと、自身がマンガ好きであることを公表したことから、いわゆるオタクの人たちに大人気となった麻生太郎元首相が、日本の強さについて書いた本。以前から保有していたまま積ん読になっていたが、トランプ氏が米国大統領になったことで日本の外交力が試される時代になったと感じたこともあり、留学経験や外務大臣としての暦も強い麻生さんが書かれたこの本を書庫から取り出して読んでみた。

    薄くて量もそれほど多くなく、平易でとても読みやすい文体で書かれているので、早い人なら正味1時間程度で読み切れてしまうだろう。

    個人の自叙伝的な部分もいくつかあるが、その多くは日本がここまで国力を回復してくるまでに至った経緯や、なぜそれが成就できたのか?という点について、彼なりの考察を加えて描かれている。

    最近、やたら「日本のここが凄い」とかいって持ち上げるTV番組が増えているが、ああいう下世話で思慮の浅い表面的なものではなく、日本人が魂のなかに刻まれている「おもてなし」や「気遣い」といったものが、アジア圏をはじめ諸外国に対して「日本が我々にしてくれたことは素晴らしい」と信頼を得て、アジアのソート・リーダー、失敗も成功もすべてさらけだす実践的先駆者として、アジア圏を引っ張ってきた。外交をベースに話をするあたりは、さすがに外交官としての経験が長いだけある。表側で報道されていた内容とはまったくことなる点も多く記されており、個人的にも発見が多かった。

    彼曰く、これまではソートリーダーとして自らが実験台となり、敗戦から現在までの復興ロードを突っ走ってきた。国の運営そのものであったり、外交であったりはまだまだ課題も多いが、国民の生活レベルという点においてはすでにほとんどが充足された状態にまで到達している。だからこれからは、自分たちがいかに素晴らしいかを自慢するのではなく、得てきた失敗や成功例などを自分たちが所属するアジア諸国に還元していくようにすればいいのではないか、というのが著者の主張だ。これには私も同意する。

    しかし、本書を読んでいて、私はなぜか不思議な共感を得ることが多かった。
    それがなんなのか、最後の章を読んで理解した。

    この本に記載されていることは、外交や国同士の関係を語った話ではない。

    これは、いわゆる「リーダーシップ」そのものだ。

    得てきた技術や経験を、自分たちをより高めることに使うのではなく、まだ足りていない周りの人たちが、自立、そして自律できるようになるために使う。そして次世代のリーダーとなる人間を育てる。本当に信頼されるリーダーというのは、自分が一番前を走るのではなく、他の若くて勢いのあるものたちを前に立たせ、後ろから全面的にサポートできる者だ。

    日本は、間違いなくもうそのステージに来ている。

    著者の言うように、経験を分かち合い、手を差し伸べ合うネットワークの構築こそが、次世代の日本に課せられた使命なのだと思う。


    <b>【引用と気づき】</b>
    [more]


    P.21 「ソート・リーダー」(Thought Leader) 「先駆者」という意味
        日本は成功のみならずむしろ失敗例を進んでさらけ出す実践的先駆者
    P.25 GDP1単位を生み出すのに、アジアを1原油とするなら北米は0.5、
        日本は何と0.2のみ。環境問題に必死に取り組んできた結果がこれ。

    P.48 日本ではポケモンやドラえもんがディズニーを押しのけて中心にいる。
       ポケモンは言葉を話さないが、会話なしでもコミュニケーションがとれる
       日本文化の象徴。

    P.72 すべての大人は子供を経験しているが、老人は経験していない。
       なのに全てを解り切ったような話をするのは僭越だ。

    P.91 「このままだと日本はアメリカのような不平等社会になる」などと
        言われるが、ではなぜそのアメリカに移民が殺到するのか。
        共産主義の元、はるかに平等に気をくばっていたはずの中国やソ連には
        移民がほぼなく、亡命や難民が多いのはなぜか。
        それは、今が貧乏でも努力次第で成功するチャンスがアメリカには存在するからだ

    P.178 海上自衛隊がサマワ駐留の際、信用を勝ち得た理由
        ・現地の議会や部族長などすべての場所に、リーダークラスが制服を着て
         挨拶に回った
        ・その地域で必要とされることを現場からすべて聞き出し、それを確実に
         実行した。しかもイラク人と一緒にやった。
        ・ブルドーザーの操作をしているところに居たイラク人にその操作方法を
         教え込み、その後イラク人は日当をもらいながら特殊車両の運転を習得する。
         陸上自衛隊が撤収しても手に職が付いているので就業にありつける
         他にも病院や学校で同じことをした。
        こういったことの積み重ねが、結果として日本のブランドイメージを作り
        力となり、国益につながる。
        自衛隊は最高の外交官だ。
        

  • なかなか痛快な一冊なんですが、んー、しかし、「偏屈おやじの面白放談」みたいになっちゃってるよなぁ。安倍さんの「美しい国へ」の方がずっと格調が高かった。

  • 現総理大臣の著書。報道では知りえない側面が見られた。

  • <目次>
    はじめに
    第一章 アジアの実践的先駆者
    日本は必ずよくなる
    成功も失敗も進んでさらけ出す国
    安定化装置としての役割
    アジアの幸福
    第二章 ニートも、捨てたもんじゃない
    若者のソフトパワー
    日本がロボット大国である理由
    私は劣等生だった
    第三章 高齢化を讃える
    若さは至上か
    還暦過ぎたジョン・レノン
    老人の労働力
    第四章 「格差感」に騙されてないか
    平等が生み出す不平等
    なんとなく気が晴れないだけ?
    教育は格差より悪平等の問題
    第五章 地方は生き返る
    炭鉱からベンチャーへ
    三位一体改革で親離れ
    役人の時代の終焉
    地方の底力の集合体が日本
    第六章 外交の見取り図
    外交は難しいか
    中国の台頭を喜ぶ
    北朝鮮が忘れてはならないこと
    靖国は、外交問題ではない
    第七章 新たなアジア主義―麻生ドクトリン
    SARSと人間の安全保障
    価値の外交
    民主主義は終わりのないマラソン
    自由と繁栄の弧を広げる
    国造りのお手伝いをする
    中央アジアの「グレート・ゲーム」
    自衛官という外交官
    アジアとのしなやかなネットワーク
    おわりに

    ****
    メイデン閣下が外務大臣だった頃の著。
    なかなか面白かったです。この人はやはり政治家である以前に一「経営者」なんだなぁ…とところどころで感じる内容でした。

    面白かったのは、外務大臣就任後、日本のODAで建設されたニューデリーの地下鉄を視察した際に現場担当者が言った話。

    ―――――――――――――――――
    最初の現場説明の際、集合時間の八時少し前に行ったところ、日本から派遣された技術者はすでに全員作業服を着て並んでいた。我々インドの技術者は、全員揃うのにそれから十分以上かかった。日本の技術者は誰一人文句も言わず、きちんと立っていた。自分が全員揃ったと報告すると、「八時集合ということは、八時から作業ができるようにするのが当たり前だ」といわれた。
    悔しいので翌日七時四十五分に行ったら、日本人はもう全員揃っていた。以後このプロジェクトが終わるまで、日本人が常に言っていたのが「納期」という言葉だった。決められた工程通り終えられるよう、一日も遅れてはならないと徹底的に説明された。
    (略)
    我々がこのプロジェクトを通じて日本から得たものは、資金援助や技術援助だけではない。むしろ最も影響を受けたのは、働くことについての価値観、労働の美徳だ。労働に関する自分たちの価値観が根底から覆された。日本の文化そのものが最大のプレゼントだった。(略)
    (P10~11)
    ―――――――――――――――――

    新人研修だな…と読んで最初に思いました(笑)私も研修時に「9時就業開始だとしたら、9時にかけ込んで席について「セーフ!」って状態はすでにアウト。PCを使う仕事なら、9時にはPCを起動し終えて、今からすぐに仕事に取りかかれる、って状態になっていないといけない」と言われ、基本的に30分前には準備完了になってないとダメ…と言われたものです。今は…インド状態です…。

  • 政界のサラブレッド、麻生太郎先生の著作。
    この人の祖父は、なんとアノ吉田茂。

    面構えやスタンスは嫌いじゃないし
    考え方にも共感を持てる部分が多いのだが、
    まあ頭はそんなに良くないね、この人。

    それを自覚している(?)かのような
    氏の経験に裏打ちされた考え方と理論は
    そこらの秀才の論文よりよっぽど共感が持てる。

    本としては平凡なので☆3つですが、
    選挙に行く前にはぜひ一読して欲しい本。

    まだまだ自民党は腐っちゃいないぜ。

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