日本語教室 (新潮新書 410)

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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106104107

感想・レビュー・書評

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  • 最初の講義がなるほどと思わされる。母語は大切に!

  • 我が母校の大先輩である井上さんの本。日本語の起源、特徴、難しさ、いい加減さを、ユーモアを交えて論じている。大学での講義を収録したものらしいが、こんな授業だったら眠くならないかもと思う。

    初めの講義では、外来語なんてケシカラン!といった論調だったが、後半は、ピジン・イングリッシュの例などをあげて、積極的肯定こそしないものの、認める論調に変化している。その井上さんの柔軟性こそが、まさしく日本語の柔軟性をあらわしているのかなと感じた。

    東北弁が日本語の起源だ、という説は、 東北出身の著者 ならではの視点なのかなと思うが、それから派生する、美しい日本語など存在せず、あるのは個々人が持つ日本語だ、という説は非常におもしろい。結局、言語の本質は、伝える心にあるということ。英語学習にしてもそうだが、完璧を求めるあまり、その本質を見失うことが多い。

    また、日本語の音に注目した理論も興味深かった。今までにそういう感覚を持ったことがなかったので、今後気をつけてみたい。

  • 先人たちが生み出した日本語の素晴らしさ。
    そして、いい加減さ(笑)
    とても暖かいエピソードがたくさん詰まってます。

    http://www.tv-aichi.co.jp/bp/wadatti/?p=9176

  • おもしろかった。
    1日でさらっと読めた。講義をまとめたものらしく、確かに脱線するところもあったがそれ込みでおもしろかった。魅力的な講義らしく。

    井上さんのほかの著書を読もうと思う。

    メモせずに読んでしまった。怠慢。
    さっと読めるから再読しよ

  • 2012/11/24-15:54 洒落は身につけたいもの

  • 日本語の事を考え続けた著者が、母校、上智大学で行った「日本語教室」の講義を再現したもの。

    印象的なのは「母語」の話。

    「母国語」ではなく「母語」
    「母国語」は自分が生まれた国で使われている言葉だが、「母語」は母親や愛情をもって世話してくれる人々から聞いた言葉のこと。

    日本で生まれたとしても「母語」は日本語ではなく、関西弁、東北弁という事になる。

    そして、「母語」は「道具」ではなく「精神」そのもの。
    この「母語」をベースに第二言語、第三言語を習得していく事になる。そして、その「母語」以内でしか別の言語は覚えられない。
    つまり、外国語を覚えるためには「母語」がきっちり話せなくてはならない。

    このあたり、子供への英語の早期教育を主張している人達に聞かせてあげたい。

    ところで、本書のように「日本語」をテーマにした場合、「日本語の乱れがひどい」と嘆いたり、警鐘を鳴らす、という事になりがちだが、著者は「美しい日本語」などありえないとバッサリ。
    方言が入っていようがどうしようが、ものを正確に表現する、自分の気持ちを正確に相手に伝えられる、相手の言うことがちゃんと分かる、そういう言葉を使っていく事の方が大切だ、と著者は言う。

    読んだ本の感想を書くようになった理由が
    「仕事に関するメールの文章があまりにもわかりにくかったために、翻って、自分の書いている文章が分かりやすいか心配になり、普段から、ある程度まとまった文章を書く練習をしておこう」
    と考えたため。

    それだけに、こういう事を言われると、この文章自体が自分の考えを正確に、分かりやすく表現できているか心配になる。

    また「日本語礼賛」に陥っていない点もいい。
    それどころか、完璧な国などない。どこかで必ず間違いをやらかす。その間違いに自分で気付いて、自分の力で必死に苦しみながら乗り越えていく国民には未来があるが、過ちを隠し続ける国民には未来はない、と言っている。

    このように書くと、本書に対して、堅苦しい印象を受けるかもしれないが、講義の時の語りかける口調のままのため、読みやすい。
    むしろ、ところどころに著者のユーモアも顔を出す。

    著者の「座右の銘」は「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく」だったらしい。
    本書も正にこのことを実践しているかのような内容だった。

    ところで、先の「美しい日本語などありえない」という話も含めて、どこかの国の、選挙を経なければなれない職種の人々に聞かせてあげたい。
    ある面、作家以上に言葉を駆使しなければいけない人達の言語能力、大丈夫だろうか。

  • 上智での"日本語を取り上げた講演"を文章にしたもの。
    講演だから、ほどよく逸れつつ「日本語とは」を簡潔に。

    ただ、まとまっているとはいえこれだけで「日本語とは」は語れない。
    日本語研究・興味のきっかけになるといい、くらいか。

  • 僕らは、いつもいろんな言葉を紡ぎながら、どうにか考えること、思っていることをただ面と向かった相手に伝えようと試行錯誤する。
    しかし大抵の場合、「言葉はいつも心に足りない」
    ましてや使っている言葉がここまで曖昧さを許容して、間違って使っていてもその意で使う人がおおければそれすら許容してしまう大らかな言葉だったならなおさらだ。
    大切にすればするほど、言葉はすぐに先に行ってしまう。
    80歳のおじいちゃんの使う言葉と我々の使う言葉、10代の子たちが使う言葉で思いが伝わらなくなってしまうような世の中にはなってほしくないなと思い、意識しながらこれからも紡いでいこうと考えさせられた。

  • 『むずかしいことをやさしく、やさしいことふかく、ふかいことをゆかいに、ゆかいなことをまじめに書くこと』と言っていた井上ひさしさんの講演をまとめたもの。
    言葉のルーツから、言葉の在り方から、ユーモアたっぷりに語られ、ぐいぐい引き寄せられる。言葉の背景にある、世界情勢もしっかりと説明されたうえでの、言葉、そして、その言葉を使う心の在り方についても、ていねいにやさしく、ゆかいに、まじめに語られている。
    この人の話をもっともっと聴いてみたいと思わせられた。

  • この人の話はほんとに拡がるけど嫌味じゃない。

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著者プロフィール

(いのうえ・ひさし)
一九三四年山形県東置賜郡小松町(現・川西町)に生まれる。一九六四年、NHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』の台本を執筆(共作)。六九年、劇団テアトル・エコーに書き下ろした『日本人のへそ』で演劇界デビュー。翌七〇年、長編書き下ろし『ブンとフン』で小説家デビュー。以後、芝居と小説の両輪で数々の傑作を生み出した。小説に『手鎖心中』、『吉里吉里人』、主な戯曲に『藪原検校』、『化粧』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『父と暮せば』、『ムサシ』、〈東京裁判三部作〉(『夢の裂け目』、『夢の泪』、『夢の痴』)など。二〇一〇年四月九日、七五歳で死去。

「2023年 『芝居の面白さ、教えます 日本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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